他の連帯債務者の相殺を援用?

 連帯債務において、連帯債務者が債権者に対して反対債権を持っている場合、その反対債権で相殺できます(相殺・反対債権についての基本はこちらの記事へ)。
 では、連帯債務者のひとりが債権者から支払い請求を受けた場合、その連帯債務者が他の連帯債務者の反対債権を使って相殺することはできるのでしょうか?

事例
BCDは連帯してAから150万円を借り受けた。BCD各自の負担部分は均一である。尚、BはAに対して150万円の反対債権を持っている。


 この事例で、Aに対して反対債権を持っているBは、当然に相殺ができます。Bがその150万円の反対債権で相殺をすれば、Bがひとりで連帯債務150万円全額を弁済したことになり、その後は、BがC・Dに対して各自の負担分50万円ずつを求償するという流れになります。
 さて、それではここで、先ほどの問いかけを事例に当てはめて申します。
 CがAから支払い請求を受けた場合、CがBの反対債権を使って相殺することができるのでしょうか?
 結論。なんとCは、Bの反対債権を使って相殺できます。わかりやすく言うと、Aから支払い請求されたCは「BがAに対して持つ支払い請求権」を使って相殺できるということです。このように、他の連帯債務者の反対債権を使って相殺することを、相殺の援用といいます。すなわち、CはBの相殺を援用することができるのです。

相殺の原則と例外

 通常、債権者から請求を受けた債務者が、他人の反対債権を使って相殺することなどはできません。山田さんが鈴木さんから支払い請求をされて「佐藤さんの反対債権で相殺しといて!」なんてできるわけないでしょう(笑)。相殺は、あくまで同一当事者間で行うものです。つまり、Aから支払い請求されたBが、B自身が持つAに対する反対債権で相殺するのが本来の姿、大原則です。しかし、実は民法は、この原則にいくつかの例外を設けています。そのひとつが、他の連帯債務者の相殺の援用、すなわち、Aから支払い請求をされたCがBの反対債権を使う相殺です(民法436条2項)。この例外規定により、Aから支払い請求を受けたいCは「Bの反対債権で相殺しといて!」とできるのです。
 ただし、相殺できる範囲には限度があります。その限度は、Aの負担部分の範囲内です。つまり、Cは「Aの負担部分についてのみ」相殺を援用することができます。そして事例1では、連帯債務者の各自の負担部分は均一となっています。従いまして、Bの負担部分は50万円なので、CはBの負担部分50万円の限度で、Bの相殺を援用することができます。

(C相殺援用前)
          B
         ↗︎
A「150万円払え」→C
         ↘︎
          D

(C相殺援用後)
          B
         ↗︎
A「100万円払え※」→C
         ↘︎
          D

※CがBの相殺を援用したことにより、Bの負担部分の50万円分が弁済されたことになる。それによって連帯債務の額が150万ー50万=100万円となる。

ここで注意点
 連帯債務者の各自の負担割合は、連帯債務者内部での決めごとに過ぎません。したがって、Bの負担部分が弁済されたことになっても、Bは相変わらず連帯債務者の1人のままで、Aは相変わらずB・C・Dに対してそれぞれ全額の支払い請求ができます。ただその金額が50万円減って、100万円になっただけです。したがって、債権者Aと連帯債務者B・C・Dの関係性は何も変わりません。そしてもし、その後、CがAの求めに応じて残りの100万円を弁済すると、連帯債務は全額弁済されて消滅します。すると、CはDに対して求償権を持ちます。
 Bに対しては?
 Bは、CがBの相殺を援用したことにより、負担部分50万円をすでに弁済しています。したがって、Cが残りの連帯債務100万円を弁済すると、Dだけが1円も弁済していないことになります。そしてDの負担分も弁済したCは、Dに対して求償権を取得するのです。
  尚、BのAに対する(Cに相殺を援用されて150万ー50万=100万円となった)反対債権残ったままです。この反対債権の存在は、連帯債務の消滅とは関係ありません。
 以下、まとめるとこのようになります。

Cが残り100万円を弁済すると

(BはCに相殺を援用されて負担分50万円弁済ずみなので)
C求償権50万円→D

(連帯債務の消滅とは関係ないので)
B反対債権100万円→C

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根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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