金の貸し借りで考える債権の世界

 債務を履行するとは、約束を守ることです。
 債務を履行しないとは、約束を破ることです。
(債権債務の超基本はこちらの記事へ。債務の履行・債務不履行について詳しくはこちらの記事へ)。
 さて、では債務を履行しない=約束を破った先には、一体どんな債権の世界が待ち受けているのでしょうか?今回はその問題について、わかりやすく、現実にもよくあるお金の貸し借り(金銭消費貸借契約)を例に、ご説明して参りたいと思います。

事例
AはBに300万円を貸し付けた。その後、返済期限が過ぎても、Bは一向にその借金を返済しない。


 まず、各当事者の立場と関係性を確認します。
 Bに300万円を貸したAは、Bに対して「300万円返せ」という債権を持ちます。つまりAは債権者です。
 そして、Bは「返済期限までに300万円を返さなければならない」という債務を負います。つまりBは債務者です。

債権者 債務者
 A → B
   ↑
   債権
 (300万返せ)

 このようになります(Aを貸金業者と考えるとよりイメージしやすいでしょう)。
 さて、事例の債務者Bは、返済期限を過ぎても300万円を返しません。つまり、Bは債務を履行しないまま期限を過ぎた=約束を破っています。では債権者Aは、Bに対して、これから一体どのような行為・手続きを行っていくことになるのでしょうか?
 民法には次のような規定があります。

(履行の強制)
民法414条
債務者が任意に債務の履行をしないときは、債権者は、その強制履行を裁判所に請求することができる。

 債権者Aは、債務不履行に陥った債務者Bに対して、裁判所を使って強制的にその債務を履行させることができます。裁判所を使うとは、訴訟を起こすということです。
 ここでひとつポイントです。債権者は、裁判所を使って強制的にその債務を履行させることができる、つまり、債権者Aは、訴訟を起こすことができるのであって、実際に訴訟を起こすかどうかは、債権者Aの自由なのです。
 このように、民事訴訟の世界では、実際に訴訟を提起するかどうかは、訴える者の自由なのです(これを処分権主義という)。
 また、債権者と債務者の間で「不起訴の合意」を交わすこともできます。不起訴の合意とは「訴えません」という約束をすることです。そして、この「訴えません」という約束、不起訴の合意は、拘束力を持ちます。拘束力を持つということは、一度、不起訴の合意をしてしまうと、その後、いくら債務者がその債務を履行しなかったとしても、債権者は訴訟を提起することができなくなります。ですので、もし友人間のお金の貸し借りでモメていて、借りた側から不起訴の合意を持ちかけてきた場合は、貸した側の人は、十分お気をつけ下さい。
 尚、不起訴の合意がなされると、その債務は自然債務になります。自然債務とは、債務者がその債務を履行すれば有効な弁済※になるが、債権者がそれを強制することができないという、債務者にとっては実に都合の良い債務です。
弁済とは、債務を履行して、その債権を消滅させること。わかりやすく言えば、約束を果たして、その義務がなくなること。
 つまり、自然債務は「いくら金借りても絶対に文句を言わない都合のいい友人」から借金した債務みたいなものです(笑)。ですので繰り返しますが、友人間などのお金の貸し借りで、不起訴の合意を求められたら、くれぐれも!お気をつけ下さい。もし不起訴の合意をしてしまえば「いくら金借りても絶対に文句を言わない都合のいい友人」に、拘束力を持った形で成り下がってしまいますから。

 というわけで、今回は、民法からは、少し外れた内容になってしまったかもしれません。しかし、今回のご説明で、ややこしい債権分野がよりイメージしやすいものになれば、と思います。
(尚、訴訟などで実際に履行を強制させるための手続きを規定したものが、民事訴訟法です。また、このような法律は、手続法と呼ばれます。一方、民法414のような規定・法律は、実体法と呼ばれます。ご参考までに)
 次回は、債権者が訴訟を起こして、それから一体どのように「債務者にその債務を強制的に履行」させるのか、ということについて、ご説明して参ります。

コメント

非公開コメント

サイト運営者

根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
根本総合行政書士です。
宜しくお願いします。

保有資格:
行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

スポンサーリンク

QRコード

QR

お問い合わせ

名前:
メール:
件名:
本文:

スポンサーリンク