【地役権の時効取得と時効更新】取得時効の場合と消滅時効の場合/地役権の不可分性とは?わかりやすく解説!

【地役権の時効取得と時効更新】取得時効の場合と消滅時効の場合/地役権の不可分性とは?わかりやすく解説!

▼この記事でわかること
地役権の時効取得
地役権の不可分性とは
地役権の時効更新~取得時効
消滅時効の場合
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
01冒頭画像

地役権の時効取得


 地役権は、自分の土地(要役地)の便益のために他人の土地(承役地)を利用する権利です。
 このときの自分が地役権者、他人が地役権設定者となります。
(地役権についての詳しい解説は「【地役権】その性質とは/地役権の登記と放棄/未登記でも対抗できる場合/永小作権をわかりやすく解説!」をご覧ください)

 そして、地役権は時効取得をすることができます。
(時効制度についての詳しい解説は「【取得時効】5つの成立要件/短期取得時効とは/様々な事例/賃借権が時効取得できる可能性?わかりやすく解説!」をご覧ください)。

 民法の条文はこちらです。

(地役権の時効取得)
民法283条
地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。

 上記、民法283条にあるように、地役権は「継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り」時効取得することができます。


「継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り」とは


 わかりやすく通行地役権で解説します。
 まず言葉のとおり解釈すると「地役権が継続的に行使され」とは「時効取得する者が継続的にその土地を通行のために利用している」ということです。
 ただ判例では、それに加えて「時効取得する者自ら通路を開設したこと」が必要だとしています。
 つまり、(通行)地役権を時効取得するためには、自分でその通路を作っていないといけないのです。

 ということは、隣地の所有者のご好意で通行を認めてもらっていたような場合は、時効取得できないのです。
 そのような場合まで、法律的にがっちり「地役権の時効取得!」と認めるのはあんまり良くないんじゃね?というのが裁判所の判断です。

 確かにそうですよね。
 そのような場合にまで地役権の時効取得ができてしまったら、それによってお隣さんとの関係にひびが入りかねませんから。

 さて、ここからは事例とともに、地役権の時効取得について、詳しく解説してきます。

事例1
AとBは甲土地を共有している。Aは隣地の乙土地に通路を開設し、通行地役権を時効取得した。なお、Aは甲土地上の自宅に住んでいるが、Bは甲土地には居住していない。


   AB共有      隣地
  [甲土地]     [乙土地]
Aのみ居住  通行地役権
B居住せず      ↑
        時効取得

 さて、この事例1で、甲土地の共有者のBも、通行地役権を時効取得できるでしょうか?

 結論。
 Bも通行地役権を時効取得できます。

 Bは甲土地に居住していないのに?

 地役権は、人ではなく、土地に付着します。
 ですので、Aが時効取得した通行地役権は、Aではなく甲土地に付着します。

 言い方を変えると、Aが時効取得した通行地役権は、甲土地に発生します。
 甲土地自体に権利が発生したのだから、甲土地の共有者の1人であるBにもその効果は当然に及びます。
 つまり、Bが甲土地に居住しているかしていないか関係ありません。
 したがって、Aが時効取得した通行地役権を、Bも当然に時効取得するということです。


地役権の不可分性


 地役権は土地自体に発生するものであり、他の共有者が時効取得した地役権は、他の共有者も当然に時効取得します。
 これを、地役権の不可分性といいます。
 不可分とは、分割することができないという意味です。

 また、地役権の不可分性は、共有者の時効取得以外のケースにも表れます。
 それは共有者の1人がその持分を放棄するケースです。
 どういうことかといいますと、AとBが甲土地を共有していて、甲土地が地役権の要役地だった場合に、Bがその持分を放棄しても、甲土地全体の地役権には何の影響もありません。
 なぜなら、地役権には不可分性があるからです。

 つまり、地役権は持分ごとに分割できないので、共有者の1人がその持分を放棄しても、放棄された持分の分だけ地役権が消滅することはないのです。
 共有者が1人でも持分を持ち続けている限り、土地全体の地役権は生き残ります。
 したがって、Bがその持分を放棄しても、Aが甲土地の持分を持っていれば、甲土地全体の地役権は残存するのです。


地役権の時効更新

48時計と小槌
 地役権を時効取得できるということは、当然「地役権の時効の更新」もあります。

事例2
AとBは甲土地を共有している。隣地に住むCは、AとBに地役権を時効取得されそうになったので、Bに対して時効更新の手続きをとった。

   
 これが、地役権の時効更新のケースです。
 さて、この事例2で、CはBに対して地役権の時効更新の手続きをとりましたが、このとき、Aの地役権の取得時効は更新するのでしょうか?

甲土地   隣地
 A     C
 B    
  時効更新手続
Aの取得時効も更新する?

 まずは、民法の条文を見てみましょう。

民法284条2項
共有者に対する時効の更新は、地役権を行使する各共有者に対してしなければ、その効力を生じない。

 民法では上記のように規定しています。
 この条文で言っていることは「共有者に対する地役権の時効の更新は、各共有者、つまり共有者全員に対してしなければ効力を生じない」ということです。

 したがいまして、事例2のCは、時効更新の手続きをBに対してしかしていないので、その効力は生じません。
 すなわち、Aどころか、Bの地役権の取得時効すら更新しません。
 Bの地役権の取得時効を更新させたいのであれば、Cは、AB両者に対して時効更新の手続きをとらなければならないのです。

 このような結論は「地役権の不可分性」そして「地役権が人ではなく土地に付着する性質」から来るものです。
 その理屈はこうです。

「地役権は不可分な(分割できない)ものなので、各共有者の持分ごとに時効が更新したりしなかったりすることはない。そして地役権は土地に付着する土地自体に発生する権利なので、仮に持分ごとに時効が更新したとして、共有者の1人の持分だけ時効更新しても、他の共有者の持分の時効が進行すれば、その効力が土地全体に及ぶので、共有者の1人でも地役権を時効取得してしまえば、結局は土地全体の地役権を時効取得することになる。したがって、共有者の1人に対してだけ時効更新の手続きをしても意味がないのである」

 このようになります。


消滅時効の場合


 続いて、消滅時効のケースではどうなるのかも見てみましょう。

事例3
AとBは甲土地を共有し、隣地に通行地役権を設定している。しかし、その通行地役権が消滅時効にかかりそうになっているので、Bはその消滅時効を更新させた。


 さて、この事例3で、甲土地の共有者の1人であるBは、隣地の通行地役権の消滅時効を更新させましたが、その効果はAにも及ぶでしょうか?

 結論。
 その消滅時効の効果はAにも及びます。
 これも理屈は事例2のケースと一緒で「地役権は持分ごとに分割できない」という、地役権の不可分性から来るものです。
 したがって、共有者の1人が地役権の消滅時効を更新させれば、その効果は当然に他の共有者にも及びます。


補足:地役権の消滅時効の起算点


 民法では、地役権の消滅時効の起算点(数え始め)について、以下のように定めています。

・継続的でなく行使される地役権の場合
 (地役権の)最後の行使の時
→通行地役権であれば(継続的に通行していたわけではない承役地を)最後に通行した時、ということ。

・継続的に行使される地役権
 その行使を妨げる事実が生じた時から
→これはどういうことかといいますと、継続的に隣地を通行のために利用していたが(通行地役権)、災害などで、その通路の幅4メートルのうち、1メートルが閉塞してしまったような場合、その閉塞した部分だけ時効により地役権が消滅した、というようなケースで(こういうケースもありうるのだ!)、その部分が「閉塞した時」が消滅時効の起算点、ということです。


 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。
⇒⇒LECで宅建試験・行政書士試験・公務員試験の合格講座&テキストを探す!
関連記事