共同相続と登記 共同相続人が勝手に不動産譲渡したら?

事例
Aが死亡し、A所有の甲土地をBとCが共同相続した。相続分は同一(半々)である。その後、BC間で、甲土地はBが単独で所有するという遺産分割協議が成立した。ところが、Cは甲土地の全部につき自己名義の登記をした上、Dに甲土地を譲渡し、その移転登記をした。


 この事例の流れと状況はこうです。

A死亡

甲土地
BC共同相続(持ち分半分ずつ)

BC間の遺産分割協議により

甲土地の所有権全部
B単独所有

ところが

甲土地の所有権全部
C単独で自己名義登記

Dに譲渡

甲土地
Dが登記

 さて、この事例で、無権利者のように思われるCから甲土地を譲渡されたDに対し、Aは「遺産分割により甲土地の所有権全部が私のものだ!返せ!」と、甲土地の所有権を主張できるでしょうか?

Dの救いの道

 本来、遺産分割されると、その効力は相続開始の時まで遡ります。つまり、BC間の遺産分割協議により遺産分割されると、Aが死亡して相続が開始した時から甲土地の全部はBのものだったことになります。しかし、判例はこの原則を曲げて、遺産分割の遡及効(遡って生じる効力)を制限します。そして、遺産分割の遡及効を制限することにより、Dには救いの道が開かれます。Dの救いの道が開かれるということは、Aが泣くことになる場合があるのです。

甲土地をBの持ち分とCの持ち分に分けて考える

 まず、Aが死亡すると、甲土地はBとCへ相続されます。その際、甲土地の持ち分は半々となっています。ここで、Bの持ち分をb土地、Cの持ち分をc土地とします。そして、Cは甲土地の所有権全部について自己名義の登記をしてDに譲渡します。つまりここでCは、b土地とc土地の両方合わせて自己名義の登記をしてDに譲渡したということになります。
 さて、ここからは甲土地を、b土地とc土地に分けて考えていきます。

Bの持ち分:b土地
 こちらは、相続により直接Bに帰属します。つまり、b土地の所有権相続によりダイレクトにBのものになります。ですので、b土地については、Cは一回もその権利を取得したことはなく、全くの無権利者です。従いまして、b土地について全くの無権利者のCから譲渡されたDがb土地を取得することはあり得ません。

[B持ち分:b土地]

↓直接

(Cの入る余地なし)

 なので、CD間のB持分:b土地の譲渡は無効であり、Dの登記も無効です。よってBは、b土地については登記がなくともDに対抗できます。したがって、Bはb土地については登記をしていなくとも、(無効な)登記をしているDに対して「b土地を返せ!」と主張することができます。

Cの持ち分:c土地
 こちらは、相続によりいったんCに帰属します(判例により遺産分割の遡及効が制限されるので)。つまり、c土地の所有権は相続によりいったんCのものとなり、その後、遺産分割により、Bのものとなります。そして、ここからがポイントです。c土地は相続によりいったんCのものとなり、その後、遺産分割によりBのものとなる訳ですが、Cがc土地をDに譲渡したことにより、c土地がBとDに二重譲渡されたと考えます。

[C持ち分:c土地]


C→D
↓(二重譲渡)


 不動産の二重譲渡は、民法177条の規定により、第三者(事例だとD)の善意・悪意も関係なく、単純に早く登記をした方が勝ちます。従いまして、事例のDは登記をしていますので、c土地については、その所有権はDが取得します。

 以上のように、判例では、C持ち分:c土地に関しましては、Dに救いの道を示したということです。逆にBは、B持ち分:b土地については登記がなくともDに対抗できますが、C持ち分:c土地に関しましては、先に登記をされてしまったDに対しては、もはや泣くしかありません。ということですので、BはDに対して「甲土地の所有権の全部を私に返せ!」と主張しても、c土地に関しましては「私が登記したから私のモノだ!」というDに対抗することができず、取り戻せるのはB持ち分:b土地のみとなります。
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根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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