賃貸借契約が終了~支出した費用は?必要費と有益費

 賃貸借契約が期間満了になると、賃借人は、その契約を更新するか終了するかを選ぶことになります(賃貸人から更新拒絶する場合は正当事由が必要になります)。
 さて、それでは、賃貸借契約が終了すると、賃借人が賃借物について支出した費用があった場合、それはどうなるのでしょうか?

 賃借人が賃借物を賃借中に支出した費用があった場合、その費用は、賃貸人(オーナー)に対して償還請求することができます。償還請求というのは「支出した費用を払え」ということです。例えば、建物の賃借人が、賃借中の建物について支出した費用があれば、賃借人は賃貸人(オーナー)に対して、支出した分の費用を請求できます。
そして、その費用は、以下の2種類に分けることができます。

・必要費
・有益費


 必要費とは、物を保存・管理するための費用、つまり、現状の価値を維持するための費用で、いわゆる修繕費のことです。例えば、雨漏りの修繕、水まわりの修繕、エアコンの修繕などです。
 有益費とは、物の価値を増加させる費用、つまり、物をグレードアップさせる費用です。例えば、外壁工事の美化、トイレのウォシュレットへの交換などです。
 以上の費用を、賃借人は賃貸人(オーナー)に対して償還請求することができるのです。尚、必要費については、費用発生次第、賃借人は賃貸人に対し、直ちに償還請求できます。一方、有益費については、賃貸借契約の終了のときになって初めて、民法196条の規定に従って償還請求できます。

有益費についての注意点

 賃借人は賃貸借契約の終了のとき、賃貸人に対して有益費の償還請求ができるわけですが、その際(賃借人に償還請求されたとき)賃貸人は、償還する費用を「支出額」「価値増加の現存分」の、どちらかを選択することができます。価値増加の現存分とは、例えば、賃貸中に賃借人が建物の価値を増加させる増強をしていても、賃貸借契約の終了のときには、増強部分が滅失してしまっていたような場合は「価値増加の現存分はなし」と判断されます。つまり、そのような場合は、賃貸人(オーナー)は、賃借人から有益費の償還請求をされても「価値増加の現存分」を選択すれば、結果として何も支払わずに済ませることができます。
 また、賃借人が賃貸人に有益費の償還請求をした際、裁判所は、賃貸人の請求により「相当の期限の許与」をすることができます。この場合、賃貸人は「相当の期限」償還請求された支払いを待ってもらうことができます。尚、裁判所により「相当の期限の許与」がされると、明渡しが先履行となるので、賃借人は、賃貸借契約終了時に、有益費の支払い請求を根拠とする留置権※の主張ができなくなります。要するに、本来、賃借人は、有益費の償還請求をした場合、賃貸人がその有益費の支払いをするまでは、明渡しを拒むことができます。「有益費を支払うまで明け渡さん!」と主張できるのです。しかし、裁判所による「相当の期限の付与」があった場合は、賃借人は、その主張ができないということです。

※留置権については別途改めてご説明いたします。

有益費の補足
 現実には、賃貸借契約の際、契約条項に、有益費の償還請求権を排除する特約を置いていることがほとんどだと思います。なぜなら、有益費の償還請求権は任意規定※なので、特約で問題なく排除することが可能なのです。賃貸人(オーナー)が、自分に不利になるような規程を排除せず、わざわざ置いたままにしておく方が、むしろ考えにくいということです。
※任意規定(任意法規)についてはこちらの記事をご参照下さい。
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根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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