賃貸不動産の損傷・滅失 同居人、不可抗力による場合の責任は?

事例
BはA所有の甲建物を賃借して、妻Cと共に暮らしている。ある日、Cの不注意により甲建物が損傷した。


 この事例で、甲建物の賃貸借契約を結んでいるのはAとBです。つまり、契約関係にあるのはAとBになります。AとCは契約関係にはありません
 さて、それではこの事例で、Aと契約関係にないCの不注意による損傷について、無過失(ミス・落ち度のない)のBは賃貸借契約上の損害賠償責任を負うことになるのでしょうか?
 結論。Cの不注意による損傷について、Bは損傷賠償責任を負います。
 これは、一般論として当たり前に納得できる結論だと思います。ただ、よくよく考えてみると、Aと契約関係にないCの過失(ミス)について、過失のないBが責任を負うというのは、ちょっとオカシイような気もします。

賃借人の同居人は履行補助者

 賃貸人は賃借人に対して「目的物を使用収益させる義務」を負います。一方、賃借人は賃貸人に対して、賃料債務を負うとともに「目的物について善良な管理者としての注意義務(善管注意義務)」を負います。善管注意義務とは「一般的に常識的に求められる注意を持って管理する義務」ということです。つまり、甲建物の賃借人Bは、甲建物を一般的に常識的に求められる注意を持って管理しなければなりません。イライラして壁にパンチして建物を損傷させた、なんてもってのほかです。
 さて、賃借人Bが善管注意義務を負うことはわかりました。では、同居人のCの過失について、Bが責任を負うというのは、一体どういう理屈なのでしょうか?これについて判例では、同居人のCを、Bの負う「善管注意義務についての履行補助者」と考えます。そして信義則上「Bの善管注意義務についての履行補助者」であるCの過失は、Bの過失と同視され(Bの過失と同じだと扱われる)、Bはその賠償責任を負うとしています。つまりBは、Cの過失について「嫁がやったことだし。オレじゃねーし」と主張することは許されない、ということです。

誰の過失もなく建物が損傷・滅失した場合

 賃借人または同居人の過失は、賃借人が責任を負います。反対に、賃貸人(オーナー)に過失がある場合は、賃貸人が責任を負います。では、誰の過失もなく、つまり不可抗力で建物が損傷・滅失した場合は、一体どうなるのでしょうか?

(賃借物の一部滅失による賃料の減額請求等)
民法611条
1項 賃借物の一部が賃借人の過失によらないで滅失したときは、賃借人は、その滅失した部分の割合に応じて、賃料の減額を請求することができる。
2項 前項の場合において、残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。

 結論。賃借人は、その賃借物の滅失割合に応じて、借賃の減額請求ができます。つまり、不動産賃貸借の場合、その不動産が不可抗力で一部損傷・滅失したときは、その不動産のダメージの割合に応じて、賃借人はオーナーに対して家賃の減額請求ができます。ただ、これはあくまで賃借人の権利を定めたもので、賃貸人の義務を定めている訳ではありません。従いまして、賃借人が実際に減額請求をしなければ、賃料は減額されません。
 また、損傷・滅失した賃借物が、残存部分だけでは賃借の目的を達することができなければ、契約の解除をすることができます。つまり、居住用の不動産賃貸借の場合、その居住用不動産が不可抗力で損傷・滅失したとき、残存部分だけでは住むことができないのあれば、賃借人は、賃貸借契約を解除できるということです。
 尚、民法611条の条文には「賃借人の過失によらないで」とありますが、これは、誰の過失でもない場合、つまり不可抗力の場合にも適用されます。
(スマホでご覧の場合、次の記事へ進むには画面下左の前の記事をタップして下さい)

コメント

非公開コメント

サイト運営者

根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
根本総合行政書士です。
宜しくお願いします。

保有資格:
行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

スポンサーリンク

QRコード

QR

お問い合わせ

名前:
メール:
件名:
本文:

スポンサーリンク