賃借権の相続 内縁の妻vs相続人?権利の濫用?

事例
BはA所有の甲建物を賃借して、内縁の妻Cと共に住んでいる。その後、Bは死亡した。尚、Bには別れた先妻との間の子供Dがおり、DはAの唯一の相続人である。


(噛み砕いたバージョン)
将来の結婚を考えているB男とC子というカップルが、A所有の建物で同棲していたが、ある日、B男が死亡した。そして、死亡したB男には、以前に離婚した奥さんとの間の子供Dがいて、なんと、そのDが、B男の唯一の相続人だった。


 さて、この事例で、Bの持っていた甲建物の賃借権は、Dが相続します。しかし、内縁の妻Cは、甲建物に居続けることができます。なぜなら、BからDへと相続されたその賃借権を、Cが援用できるからです(これについて詳しくはこちらの記事をご参照下さい)。ですので、甲建物のオーナーAは、内縁の妻Cに対して、立退き請求はできません。内縁の妻Cは「わたしは甲建物に居続けます」と、正当に主張することができます。

相続人Dの立退き請求

 さて、オーナーAが、内縁の妻Cに対して立退き請求ができないのは分かりました。では、甲建物の賃借権を相続したDが、内縁の妻Cに対して、立退き請求をすることはできるのでしようか?
 そもそも、甲建物の賃借権を相続したのはDです。ましてや甲建物の家賃支払い義務を負っているのもDです(これについて詳しくはこちらの記事へ)。そして、事例の状況を現実的な視点で考えると、Bの内縁の妻Cと、Bの前の奥さんとの子供D仲が悪いことの方が多いのではないでしょうか?そもそも、CがBと婚姻せず、内縁の妻のままでいたのには、前の奥さんとの子供Dが、BとCの再婚について反対していた可能性もあります。
 このように考えていくと、たとえ内縁の妻Cが、相続人Dの賃借権を援用して、甲建物に居続けることができるにしても、それをDが指をくわえて黙って見ているとも思えないですよね?むしろ、相続人Dから内縁の妻Cに対し「甲建物から出てけ!」と言ってくる可能性の方が高いのではないでしょうか?

 結論。相続人Dは、内縁の妻Cに対して、甲建物の立退き請求をすることはできません。これは、判例でこのような結論になっています。つまり!相続人Dから内縁の妻Cへの立退き請求を、裁判所が許さなかったのです。しかも、裁判所はその理由について「信義則」に並ぶ、民法の奥義を繰り出しました。裁判所が、相続人Dから内縁の妻Cへの立退き請求を認めさせないために持ち出した民法の規定はこちらです。

(基本原則)
民法3条
権利の濫用は、これを許さない。

 実にざっくりした規定ですよね(笑)。要するに、裁判所は「相続人Dから内縁の妻Cに対する立退き請求権利の濫用だ」と言っているのです。権利の濫用とは、簡単に言うと「やり過ぎ」ということです。つまり、相続人Dから内縁の妻Cに対する立退き請求は、甲建物の賃借権を相続しているDの正当な権利だが、でもそれはちょっとやり過ぎじゃね?ということです。従いまして、相続人Dは、内縁の妻Cに対し、甲建物の立退き請求ができないのです。
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