賃貸人の解除権 家賃滞納と信頼関係破壊の法理(理論)

事例
AはB所有の甲建物を賃借している。AはBに無断で、Cと甲建物の転貸借契約を結んだ。尚、Aはまだ甲建物をCに引き渡していない。


 これは、賃借人Aが賃貸人Bの承諾なしに甲建物をまた貸しする契約をCと結んだ、という無断転貸のケースです。そして、この事例のポイントは「まだ甲建物をCに引き渡していない」ところです。
 さて、この事例で、賃貸人Bは、無断転貸をしたがまだその引渡しはしていない賃借人Aとの、甲建物の賃貸借契約を解除できるでしょうか?
 結論。賃貸人Bは、賃借人Aとの甲建物の賃貸借契約を解除することはできません。
 これはちょっと意外な結果ではないでしょうか?本来であれば、賃借人の無断転貸に対して、賃貸人は原則その賃貸借契約を解除できます(無断転貸について詳しくはこちらの記事をご参照下さい)。しかし、今回の事例の場合、賃借人Bは、無断転貸をしたとはいえ、まだ甲建物をCへ引き渡していません。そこで判例では、このような場合、無断で賃借人が転貸借契約をしたとはいえ、まだその引渡しを行なっていない以上、賃貸人と賃借人の「信頼関係は破壊されていない」ので解除できない、としています。

信頼関係破壊の法理

 先ほど「信頼関係は破壊されていない」ので、その賃貸借契約は解除はできない、という旨のお話をいたしましたが、これを信頼関係破壊の法理(理論)といいます。
 ところで、不動産賃貸借契約は、実はそう簡単に解除することはできません。よく不動産の「立ち退き問題」という言葉を耳にすることがあると思いますが、この「不動産の立ち退き問題」を難しくしている原因に、実は「信頼関係破壊の法理」が影響しています。どういうことかといいますと、例えば、AがB所有の甲アパートに住んでいるとします。そしてAが1ヶ月分の家賃を滞納します。すると、賃借人Aは債務不履行に陥りますよね。債務不履行は契約の解除の原因になります。債権者は債務不履行に陥った債務者に、相当の期間を定めて催告した上で、その契約を解除することができます。しかし!不動産賃貸借の場合は、そう簡単にはいきません。賃貸人B(大家・オーナー)は、賃借人A(借主)が1ヶ月分の家賃を滞納した、というだけでは、甲アパートの賃貸借契約を解除することはできません。なぜなら、それだけでは「信頼関係が破壊されていない」と判断されるからです。このように、信頼関係破壊の法理が働くのです。

じゃあ賃借人Aはいつまでも家賃を滞納できちゃうの?

 そういう訳ではありません。通常は、賃借人の家賃滞納については、3ヶ月分は滞納しないと賃貸人は賃貸借契約の解除はできないとされています。つまり、賃借人Aの家賃滞納が3ヶ月分までいけば、そこで「信頼関係が破壊された」と判断され、賃貸人Bは、賃借人Aとの甲アパートの賃貸借契約を解除できます。もちろん、家賃滞納以外に信頼関係を破壊するような事由があれば、家賃滞納があろうがなかろうが、賃貸借契約を解除できます。
 ざっくりと噛み砕いて簡単にまとめますと、信頼関係破壊の法理が働くことにより、賃貸人は、家賃滞納のみでは、少なくとも3ヶ月分の家賃滞納がなければ、その賃貸借契約を解除できない。つまり、賃借人の滞納家賃が3ヶ月分までいって初めて、賃貸人は賃借人に対し「出てけ!」と言える、ということです。

補足
 前回前々回の記事で記しました「背信的行為と認めるに足りない特段の事情があるとき」とは、言葉を変えれば「信頼関係が破壊されたとは認められないとき」ということです。このように、不動産賃貸借について考えるとき、「信頼関係破壊の法理」は非常に重要になりますので、是非頭に入れておいて頂ければと存じます。
 尚、不動産の家賃滞納、立ち退きの問題は、まだまだ深い問題がございます。ですので、その問題につきましては、また別途改めて取り上げたいと思います。
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根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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