原状回復義務 経年劣化と通常損耗と特約

 敷金とは、賃貸物件を借りるとき、借主が貸主に対し、担保として一旦預ける金銭です。そして退去・明渡しの際に、滞納家賃や原状回復費用など、差し引く分があれば差し引いた上で、借主に返還されます(敷金について詳しくは前回の記事をご参照下さい)。つまり、わかりやすく住宅用の賃貸物件で噛み砕いて申しますと「この家を借りる担保(保証)として、このお金を一旦、家主に預けます」というものです(現実においては、敷金という担保だけでは足らず、連帯保証人家賃保証会社も必要になったりします)。
 さて、それではここから、本題の不動産賃貸借における原状回復義務についてご説明して参りますが、わかりやすく「住宅用の不動産賃貸借」という前提でご説明をして参りますので、その点あらかじめご了承下さい。

不動産賃貸借における原状回復義務とは

 不動産賃貸借における原状回復義務とは、借りた家を返す時(退去時)、つまり、引越し等で賃貸借契約を終わらせてその家を出る際に、その家を元の状態(原状)に戻す義務のことです。ちなみに「現状」ではなく「原状」です。現状とは、現在の状態のことです。原状とは、元の状態のことです。したがって、元の状態に戻す義務「原状回復義務」なのです。

原状回復義務といっても何もかも元に戻さなければならない訳ではない

 借主は、原状回復義務を負います。しかし!原状回復といっても、何もかも元の状態に戻さなければならない訳ではありません。というのも、経年劣化通常損耗については、原状回復義務には含まれないからです。

経年劣化
 物には経年劣化というものがあります。経年劣化とは、時間の経過による自然な劣化です。つまり、人が時とともに年老いていくのと同じように、物も時とともに年老いていきます。無論、家も一緒です。この経年劣化については、借主は修繕義務を負いません。つまり、経年劣化については原状回復義務には含まれないのです。

通常損耗
 通常の使用の仕方による損耗を通常損耗といいます。要するに、通常損耗とは、常識的な普通の使い方で不可抗力的にできる傷や汚れのことです。この通常損耗による負担は「家賃に含まれている」と考え、通常損耗については、借主の原状回復義務には含まれません。つまり、常識的な普通の使い方で不可抗力的にできる傷や汚れは、毎月払っている家賃ですでにカバーしているので、退去・明渡しの際の原状回復義務には含まないということです。

 以上のように、原状回復義務といっても、経年劣化と通常損耗を除いた上での原状回復になります。原則として、原状回復費用には、経年劣化と通常損耗による修繕費用は含まれませんので、ご注意頂きたいと存じます。

補足・特約の存在
 ただ、ここでひとつ、やっかいな問題がございます。それは特約の存在です。どういうことかと申しますと、賃貸借契約書を交わす際に、契約書に特約事項という形で、本来なら経年劣化や通常損耗として原状回復義務には含まれないものも、退去時の借主負担として定めてしまっていることがあるのです。そしてその特約事項の定めが、特段不当なものでなく、賃貸借契約を結ぶ際に、借主も理解し納得した上で定められていたのならば、その特約事項は借主の負担義務として有効なものとなります。これは退去時に非常にトラブルになりやすい原因のひとつです。そして、このようなトラブルに関しましては、様々なケースがあり、ケースごとに考えなければなりません。したがって、ここではこの問題に関しまして、これ以上の深入りはいたしません。詳しいことは「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」などをご覧になって頂ければと存じます。
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根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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