占有の二面性 時効取得は原始取得

事例3
Aは善意・無過失に甲土地を9年間占有した。その後、Aは甲土地を悪意のBに引き渡し、Bはそれから1年間甲土地を占有した。


 さて、この事例3で、Bは甲土地を時効取得できるでしょうか?
 結論。なんと、Bは甲土地を時効取得できます。
 え?なんで?Bは悪意じゃね?
 Bは悪意です。しかし民法187条に基づき「前の占有者の占有を併せて主張」すれば、Bは前の占有者であるAの善意・無過失を引き継ぐことにより、短期取得時効の対象となり、Aの占有9年+Bの占有1年=10年間の占有でBは甲土地を時効取得できるのです。

引き継ぐのは瑕疵だけではない

(占有の承継)
民法187条2項
前の占有者の占有を併せて主張する場合には、その瑕疵をも承継する。

 条文には「その瑕疵をも承継する」とあります。瑕疵というのは欠陥のことで、欠陥には悪意・有過失も含まれるので、「前の占有者の占有を併せて主張」すると前の占有者の悪意・有過失も引き継いでしまう、ということは前回の記事で記したとおりですが、条文の「その瑕疵をも承継する」というのは「瑕疵がないことをも承継する」と理解することもできますよね?従いまして、事例3のBは「前の占有者の占有を併せて主張」することにより、前の占有者Aの瑕疵のないこと(善意・無過失)をも承継することになるのです。

瑕疵の有無の判定は占有開始の時

 例えば、Aが甲土地の占有を善意・無過失に開始して、のちにA自身が悪意になったとしたらどうなるでしょう?この場合も短期取得時効の対象から外れることはありません。つまり、Aは10年間の占有により甲土地を時効取得します。なぜなら瑕疵の有無の判断は占有開始の時だからです。従いまして、事例3の悪意のBが「前の占有者の占有を併せて主張」することにより、前の占有者Aの善意・無過失をも引き継いで、短期取得時効により9年+1年=10年間の占有で甲土地を時効取得できることも問題ないのです。なぜなら「前の占有者の占有を併せて主張」することにより「甲土地の占有開始の時」は前の占有者Aの善意・無過失から始まっていることになるからです。

補足・時効による所有権取得は原始取得

 所有権の取得原因には原始取得承継取得があります。
 時効による所有権取得は原始取得になります。原始取得とは「元からその人のモノになる」ことです。つまり、事例3のBが甲土地を時効取得すると、甲土地は元からBのモノだったことになります。
 それになんの意味があるの?
 これには大きな意味があります。例えば、もし甲土地に抵当権がついていた場合は、Bが甲土地を時効取得すると、時効取得は原始取得なのでBが始めっから甲土地の所有者だったことになり、Bが時効取得する前についていた抵当権は消えて無くなります。噛み砕きまくって荒唐無稽なご説明をしますと、B男くんがA子ちゃんを原始取得すると、B男くんはA子ちゃんにとっての最初のオトコになります。本当は5人目のカレシだったとしても。これが原始取得です。
 一方、売買相続による取得は承継取得になります。承継取得は前主の権利を承継します。つまり、B男くんがA子ちゃんを承継取得すると、B男くんはA子ちゃんにとっての5人目のカレシになるだけです。
 ムチャクチャな例えですが、原始取得と承継取得、お分かりになって頂けたのではないでしょうか(笑)。
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根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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