表現代理 無権代理人が配偶者の場合

事例
A男とB子は夫婦である。B子はA男に無断で、Aの代理人と称してA所有の甲不動産をCに売却した。

 さて、この事例のポイントは、無権代理人Bと本人Aが夫婦だという点です。まずはそこを押さえておいて頂きたいのですが、これがAとBが夫婦ではなかった場合、表見代理の成立はありません。それは完全に無権代理の問題です。なぜなら、無権代理人Bは本人Aに「無断で」無権代理行為を行っているからです。表見代理の可能性があるケースは、以下の3類系※にあてはまる場合です。
・代理権授与の表示による表見代理
・権限外の行為の表見代理
・代理権の消滅事由
※詳しくはこちらの記事をご参照下さい。
 事例では「無断で」とあるので、上記の3類系にあてはまらず、表見代理の問題にはならないのです。つまり、本人Aに責任が及ぶことはなく、責任が及ぶのは無権代理人B自身です。

夫婦の場合には別の条文がある

 最初に事例のポイントと申し上げましたが、今回の事例のAとBは夫婦です。実はこれが少々やっかいなんです。先ほど述べたとおり、AとBが夫婦でなければ「無断で」とある限り表見代理の問題にならず、単純に「Bの無権代理の問題ですね!チャンチャン♪」と終われるところなのですが、夫婦の場合には、以下のような条文が存在します。

(日常の家事に関する債務の連帯責任)
民法761条
夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。

 つまり、夫婦の一方が行った法律行為は、夫婦として連帯責任を持つということです。ただ、条文にあるとおり、その対象となる法律行為とは「日常の家事に関して」です。果たして事例のような不動産の売却行為が日常の家事に関する法律行為にあたるでしょうか?あたるか!セレブか!と思わずツッコミたくなるところですが(笑)、ツッコむまでもなく、普通に考えて、不動産の売却が日常の家事に関する法律行為にあたるわけないですよね。
 従いまして、今回の事例では表見代理の成立はなく、民法761条(日常の家事に関する債務の連帯責任)の適用もありませんので、相手方Cは甲不動産を取得することはできません。

補足
 実は判例では、今回の事例のようなケースにおいて、表見代理が成立され得る可能性を開いています。
 え?なんで?
 判例の理屈としてはざっくりこうです。
「先述の民法761条は「夫婦間の相互の代理権」を規定していて、それは法定代理権の一種である。法定代理権を基本代理権とした「権限外の行為の表見代理」は成立し得る。そして民法761条の「夫婦間の相互の代理権」を基本代理権として民法110条(権限外の行為の表見代理)の規定を類推適用し、相手方が無権代理人に代理権ありと信じるにつき正当な理由があれば表見代理は成立し得る」
 自分で書いておいてなんですが、おそらくこれを読んでもよくわからないですよね(笑)。そしてさらに身もふたもない事を申しますと、この理屈を理解する必要もないと思います。大事なのは、今回の事例のようなケースでも「表見代理が成立し得る可能性はある」ということです。ですので、ここで覚えておいて頂いたいのは、今回のような事例でも、取引の内容やその他の具体的な事情によっては表見代理の成立もあり得ると判例は言っていることです。理屈の理解は置いてといて、この結論の部分だけ頭に入れておいて下さい。
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Author:根本総合行政書士
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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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