無権代理と相続 相続人が複数の場合の相手方

事例1
Bは代理権がないにもかかわらず、Aの代理人と称してA所有の甲土地の売買契約をDと締結した。その後、Aは死亡し、Aの相続人であるBとCは甲土地を相続した。


 この事例1のようなケースでは、判例は資格併存説を取ります(前回の記事もご参照下さい)。よって本人Aの相続が開始しても甲土地の売買契約は不確定無効のままです。そしてCが甲土地の売買契約を追認拒絶すると、相手方Dは甲土地を取得することはできません。ではこのときに、相手方Dは一体何ができるのでしょうか?

(無権代理人の責任)
民法117条
他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明することができず、かつ、本人の追認を得ることができなかったときは、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。

 相手方Dは無権代理人Bに対し、上記の民法117条(無権代理人の責任)の規定により「契約の履行の請求」か「損害賠償の請求」ができます。しかし!判例は「損害賠償の請求」のみ認めました。

なぜ判例が「契約の履行の請求」を認めないか

 もし相手方Dの「契約の履行の請求」を認め、その請求どおりに甲土地の売買契約が履行してしまうと、甲土地の所有権赤の他人同士のCとD共有になってしまうからです。それでは判例がそもそも資格併存説を取った意味がなくなってしまいます(前回の記事もご参照下さい)。従いまして、事例1において、相手方Dができることは、無権代理人Bに対し「金よこせコラ」という損害賠償請求のみになります。

補足
 事例1のように相続人が複数いる場合、無権代理行為を追認する権利は、相続人全員不可分に帰属します。追認権が不可分に帰属するとは、追認権は分けられないということです。追認権が分けられないということは、追認する場合は相続人全員がそろって追認しなければ意味がないということです。全員揃って追認しなければ意味がないということは、1人でも追認しない者(追認拒絶する者)がいる限り追認の効果は発生しないということです。つまり、もし甲土地の売買契約の追認をするのなら、BとCの2人が揃って追認しなければなりません。ですので、Cが1人で追認拒絶するだけでは、相手方Dは甲土地を取得できません。ただ、ここで一点だけ気をつけて頂きたいのが、Cが1人で追認するケースです。このケースでは、それだけで甲土地の売買契約は有効になり、相手方Dは甲土地を取得できます。なぜなら、無権代理人Bの追認拒絶は信義則上許されないからです。ですので、Cが追認すると、自動的に無権代理人Bも「信義則上追認したとみなされる」ので、甲土地の売買契約は有効になり、相手方Dは甲土地を取得できます。この点はご注意下さい。
(スマホでご覧の場合、次の記事へ進むには画面下左の前の記事をタップして下さい)

コメント

非公開コメント

サイト運営者

根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
根本総合行政書士です。
宜しくお願いします。

保有資格:
行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

スポンサーリンク

QRコード

QR

お問い合わせ

名前:
メール:
件名:
本文:

スポンサーリンク