代理行為の瑕疵 本人が悪意のとき

事例2
Bはお金持ちのAの代理人として、軽井沢にあるC所有の甲別荘の売買契約を締結した。ところが、なんと甲別荘の真の所有者はDだった。どうやらDの資産隠しのためにCが協力して甲別荘の名義をCに移したとのことだった。当然、Bはそんな事実は全く知らなかったが、実はその事実をAは知っていた。


 この事例2で、CとDは通謀虚偽表示を行なっています。民法101条によれば、このようなケースで善意・悪意を問われるのは、代理人となっています。となると、この事例2では、代理人Bが善意なので、本人Aは悪意でも甲別荘を取得できることになります。でもこれ、どう思います?なんか微妙だと思いません?確かに通謀虚偽表示をやらかしたCとDが一番悪いです。それは間違いないです。ただ、通謀虚偽表示についての民法94条2項の規定は、善意の第三者を保護するためのものです。ということは、善意の代理人Bをかましただけでいとも簡単に悪意の本人Aが甲別荘を取得できるとなると、民法94条2項の規定と整合性がとれなくなってしまいますよね。このままだと悪意の第三者は、代理人という裏技を使えば、民法94条2項の規定を事実上無力化できてしまうことになります。そこで民法は「代理行為の瑕疵」について、こんな規定も置いています。

(代理行為の瑕疵)
民法101条2項
特定の法律行為をすることを委託された場合において、代理人が本人の指図に従ってその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。本人が過失によって知らなかった事情についても、同様とする。

 この条文で重要なポイントは「本人の指図」と「特定の法律行為の委託」です。

民法101条2項の「本人の指図・特定の法律行為の委託」とは
 これは、本人が代理人に対して、具体的に指定するような指示を出すことです。例えば、事例2で、本人Aが代理人Bに対し「軽井沢にあるC所有のあの別荘を買ってきて」というような依頼の仕方をしていたら、それは「本人の指図」による「特定の法律行為の委託」となります。逆にそういった具体的に指定する依頼はなく、C所有の甲別荘を代理人B自身で見つけたような場合は「本人の指図・特定の法律行為の委託」にあたりません。
 結論。事例2において、Bの代理行為が「本人の指図・特定の法律行為の委託」 にあたれば、たとえ代理人Bが善意でも、悪意の本人Aは甲別荘を取得することはできません。逆に、Bの代理行為が「本人の指図・特定の法律行為の委託」 にあたらなければ、代理人が善意であれば、本人Aは悪意でも甲別荘を取得することができます。

なんで「本人の指図・特定の法律行為の委託」にあたるかあたらないかで結論が変わるの?その違いってそんなに重要なの?

 非常に重要です。こう考えてみて下さい。悪意の本人Aの「本人の指図」による「特定の法律行為の委託」によって、代理人Bが甲別荘の売買契約を締結したとなると、本人Aは、わかっていながら通謀虚偽表示の物件をわざわざ指定して代理人Bにやらせていることになります。そんなヤツ、保護する必要あります?一方、本人Aは代理人Bに「軽井沢辺りに別荘買ってきて」ぐらいの依頼の仕方で、C所有の甲別荘を代理人B自身で見つけた場合に、本人AがたまたまCとDの通謀虚偽表示を知っていて...というようなケースだと全然ニュアンスが違いますよね?このケースだと「本人の指図・特定の法律行為の委託」にはあたらないと判断される可能性が格段に上昇します。このように「本人の指図・特定の法律行為の委託」にあたるかあたならないかは非常に重要なのです。

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