表見代理の転得者 相手方の正当事由

事例
Bは代理権がないのにもかかわらず、Aの代理人と称して、A所有の甲物件を悪意のCに売却した。そしてCは善意のDに甲物件を転売した。


 さて、この事例ではまず表見代理は成立しません。なぜなら代理行為の相手方のCが悪意だからです。表見代理が成立するための二つの要件、相手方の善意無過失と本人の帰責事由、その内のひとつが欠けてしまっています。ここまでは表見代理の基本ですが、問題はここからです。事例で表見代理が成立しないのは分かりましたが、となると善意のDはどうなるのでしょうか?
 結論。Dのために表見代理が成立することはありません。
 表見代理の制度は、代理人に代理権があるという外観を過失なく信じた代理行為の相手方を保護するためのものです。あくまで代理行為の直接の相手方を保護する制度です。しかし事例のDは代理行為の直接の相手方ではありません。Dはあくまで転得者です。これは普通に考えても分かるかと思いますが、転得者のDが「BにはAの代理権が確かにある!」と思って甲物件の取引に入ってくることはまずないですよね?DがAともBとも知り合いだとか過去に取引したことがあるとかなら別ですが、それもかなり希でしょう。従いまして、表見代理は転得者のためには成立しません。ここはご注意下さい。

民法110条の正当な理由とは?

(権限外の行為の表見代理)
民法110条
前条本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。

 上記が前回も扱った民法110条の条文ですが、条文中の「正当な理由」とは一体どんなものを言うのでしょうか。
 判例では、無権代理人が本人の実印を持っている場合「特段の事情がない限り正当な理由」としています。特段の事情という言葉は判例ではよく出てくるのですが、簡単に言うと「よっぽどのこと」です。つまり「無権代理人が本人の実印を持っていたら、それはよっぽどのことがない限り代理権があると信じちゃうのは仕方ないよね」ということです。代理行為の相手方は「よっぽどのことがない限り」過失はないとされ、表見代理が成立するということになります。

 ただ一方で、判例で「正当な理由」が認められづらいケースも存在します。それは本人と無権代理人が同居しているケースです。例えば本人Aと無権代理人Bが旦那と嫁の関係で同居していたとすると、嫁のBが旦那のAの実印を持ち出すことは難しくないでしょう?そのようなケースでは、相手方は本人の実印を持っている無権代理人に対してより慎重に対応しなければなりません。例えば旦那のAに直接確認の電話をするとか。そのような慎重な対応をしていないと「正当な理由」が認められず、表見代理が成立しなくなってしまう可能性が高いです。つまり、本人と無権代理人が同居していると、無権代理人が本人の実印を持っているからといっても、それだけでは表見代理の成立が難しくなっています。

 このように現実においては、表見代理の成立はケースバイケースで変わってきます。ただ、基本は今までご説明してきた内容になりますので、そこを押さえておいて頂ければと存じます。
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