無権代理 表見代理の成立要件

事例2
Bは代理権がないのにもかかわらず、お金持ちのAの代理人と称して、軽井沢にあるC所有の別荘の売買契約を締結した。


 この事例2で、Bは代理権もないのに代理行為をしています。これを無権代理といい、Bのような者を無権代理人といいます。
 さて、ではお金持ちのAさんは、無権代理人Bの勝手な行動によってC所有の別荘を買わなければならないのでしょうか?
 結論。AはC所有の別荘を買わなければならなくなる訳ではありません。なぜならBには代理権がないからです。当たり前の話ですよね。
 え?じゃあ誰が別荘を買うの?B?
 Bが買うことにもなりません。なぜならBは顕名をしているからです。顕名をしていなければ民法100条のただし書きの規定によりB自身が買わなければなりませんが、Bはたとえ偽りであれ「Aの代理人B」ということは示しています。ですのでB自身が買主にはならないのです。
 ん?じゃあどうなるん?
 このままだと一番困ってしまうのは代理行為の相手方のCですよね。Bの勝手な行動による被害者とも言えます。そこで!民法ではこのような無権代理人の相手方を救う制度を設けています。それが表見代理です。

表見代理とは

 表見代理とは、ある一定の要件を満たしたときに無権代理行為が通常の代理行為のように成立する制度です。つまり事例2で、ある一定の要件を満たしていると、Cが本人Aに対して別荘の売買代金を請求できるのです。
 ではその、ある一定の要件とは何でしょうか。表見代理が成立する要件は二つあります。
・相手方の善意無過失
・本人の帰責事由
 それではひとつひとつ見ていきましょう。

・相手方の善意無過失
これは事例2にあてはめますと、Cの善意無過失です。どういうことかといいますと、BがAの代理人だとCが信じたことに過失がないということです。例えばBがAの印鑑証明書まで持ち出して見せていたら、何も事情を知らないCは普通にBがAの代理人だと信じてしまっても仕方がないでしょう。しかし、実はBがAの代理人ではないことをCが知っていたり、ちょっと考えれば誰でも分かるようなレベルのことをCの注意不足が原因で、Aの代理人BということをCが信じてしまっていたとしたらそれは善意無過失にはならず、表見代理成立のための要件を満たせません。

・本人の帰責事由
 これも事例1にあてはめてご説明します。本人とはAのことですよね。つまりAの帰責事由です。例えばBがAの印鑑証明書まで持ち出していて、しかもそれが、AがBを信頼して渡していたものだったとしたらどうでしょう。そのような場合、Cにはこんな言い分が成り立ちます。「一番悪いのは無権代理行為をしたBだ。しかし、そもそもAがBなんかを信頼して印鑑証明書を渡してしまっていなかったら、こんな事も起こらなかったんじゃないか!?」これは法律的に正当な主張になります。つまり「Bに印鑑証明書を渡してしまったAも悪かった」ということです。すなわちAに帰責事由アリということです。これが表見代理を成立させる要件のふたつめ、本人の帰責事由です。

 以上二つの要件「相手方の善意無過失」「本人の帰責事由」を満たすと表見代理が成立します。つまり事例2のCは、BがAの代理人であるということについて善意無過失で、かつ本人Aに何らかの帰責事由があった場合は表見代理が成立し、本人Aに対して別荘の売買代金の請求ができるということです。同時に本人Aには別荘の売買代金の支払い債務が生じ、無権代理人Bの責任を本人Aが取らなければならなくなります。

 という訳で今回は以上になります。今回ご説明した内容が、ややこしくなりがちな表見代理の基本になります。是非頭に入れておいて下さい。
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Author:根本総合行政書士
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