代理人が顕名しなかったとき

 代理を構成する要素は次の三つです。
・顕名
・代理権
・代理人と相手方の法律行為
 これを分かりやすく事例で見てみましょう。

事例1
お金持ちのAは、軽井沢に別荘を買いたいと考えていたが、多忙のため手がつかないので別荘の購入をBに依頼した。そしてBはAの代理人としてC所有の甲建物を購入した。


 この事例1で代理を構成している三要素は、「私はAの代理人Bです」という顕名(通常は委任状を見せる)、代理人Bの本人Aを代理して権利を行使する代理権、BC間の売買契約、ということになります。
 では、これら代理を構成する三要素のどれかが欠けてしまったときはどうなるのでしょうか?

顕名がない代理行為

 例えば、事例1で代理人BがCに対し「私はAの代理人Bです」という顕名をしなかったらどうなるでしょう?普通に考えて代理人が顕名をしないとなると、相手方は単純に代理人自身を法律行為の相手方だと思いますよね。そこで民法では、そのような場合は次のように規定しています。

(本人のためにすることを示さない意思表示)
民法100条
代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみなす。

 これは条文を読めばすぐ分かりますよね。つまり顕名をしなかった代理人の法律行為は、代理人が自分自身のためにしたものになってしまうということです。従いまして事例1で、代理人Bが顕名をしなかった場合、Bは自分自身のために甲建物を購入したとしてBC間の売買契約が成立します。ですのでB自身に代金支払い債務が生じ、Cが甲建物の売買代金を請求する相手はBになります。Bが「そんなつもりはなかった」と言って支払いを拒むと債務不履行による損害賠償の請求の対象になります。代理人が顕名をしないと大変なことになってしまうということです。
 では、顕名を忘れた代理人Bには救いの道はないのでしょうか?実は民法100条には続きがあります。

民法100条続き
ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、前条第一項の規定を準用する。

 これはどういうことかといいますと、たとえ代理人Bが顕名をしたかったとしても、相手方のCが「BがAの代理人であることを知っていた」または「BがAの代理人であることを知ることができた」ようなときは、顕名があった場合と同じように扱う、つまり通常の代理行為として扱うということです。ですのでそのようなケースでは、甲土地の売買代金の請求先はAになります。

 さて、顕名がなかったときにどうなるのかは分かりました。それでは代理人に代理権がなかった場合はどうなるのでしょう。実はここからが代理についての本格的な学習になります。今回はまだ代理制度のイントロに過ぎません。次回からいよいよ、代理制度のサビ、代理権がなかった場合についての解説に入って参ります。
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根本総合行政書士

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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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