制限行為能力者自身が追認できるか

 追認とは、後から追って認める、ということです。例えば、制限行為能力者が単独では有効にならない法律行為をした後、法律で規定された者が、その法律行為を追認することによって、制限行為能力者が単独で行ったその法律行為は有効になります。
 では、追認権を行使できるのは一体誰なのでしょうか?
 民法122条によると「取り消すことができる者」が追認できる者、となっていますが、ここでひとつ問題があります。というのは、もし取消権者=追認権者となると、例えば、子供が単独でした行為を、子供自身で追認することも可能になってしまいます。あるいは、痴呆になって成年被後見人となった老人が単独でした行為を、老人自身で追認することもできてしまいます。それってマズイですよね。

事例
お金持ちのお坊っちゃんの未成年者Aは、自己所有の高級ジュエリーをBに売り渡した。その後、Aはその行為(高級ジュエリーの売渡し)を追認した。


 この事例のようなケースで、仮に次のような文言が入った売買契約書をAB間で交わしていたらどうなるでしょう?

売主Aはこの売買契約を追認する

 もし取消権者=追認権者だから、未成年者自身も追認できるとなると、上記のような契約も可能になってしまいます。となると、法律による制限行為能力者の保護の意味がなくなってしまいますよね。この問題を民法はどう解決するのか?民法では以下の条文で規定しています。

(追認の要件)
民法124条1項
追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅した後にしなければ、その効力を生じない。

 これは何を言っているのかといいますと「制限行為能力者が自分自身で追認するには制限行為能力者じゃなくなってからじゃないとダメ!」ということです。条文の「取消しの原因」というのが「制限行為能力者であること」にあたりますので、それが滅した後というのは「制限行為能力者でなくなった後」ということになります。
 従いまして、制限行為能力者が単独した行為を、制限行為能力者自身で追認することはできません。ですので、事例の未成年者Bが、高級ジュエリーの売渡し行為を自ら追認することはできません。もし、Aが自分自身で追認するには、A自身が成年になってからでないとできません。
 尚、未成年者Aの法定代理人が追認することは当然できます。多くの場合、未成年者の法定代理人は親権者(通常は親)なので、Aの親が、AからBへの高級ジュエリーの売渡し行為を追認すれば、それは当然に有効になります。念のため申し上げておきます。

成年被後見人の追認の場合
 成年被後見人の追認の場合は下記の条文に定めがあります。

民法124条2項
成年被後見人は、行為能力者となった後にその行為を了知したときは、その了知をした後でなければ、追認をすることができない。

 未成年者の場合は、自らが成年になってからでないと自分自身で追認できないように、成年被後見人は行為能力者となってから、つまり、自らが成年被後見人でなくなって自らの行為を認識してからでないと自分自身で追認できない、ということが上記の条文で規定されています。「行為を了知したとき」というのは「成年被後見人が行為能力者となった後、成年被後見人の時に単独でした自らの行為を認識したとき」ということです。
 尚、民法124条2項は、直接には成年被後見人についての規定ですが、実際には制限行為能力者全般、すなわち未成年者・被保佐人・被補助人にも適用されます。この点も、念のためご注意下さい。

補足
 民法124条1項の規定は「詐欺・強迫」についても適用があります。つまり、騙されたり脅されたりした被害者が、騙されたことに気づいたり脅された状態から脱した後であれば、被害者自身で、詐欺・強迫によってした法律行為を追認できるということです。ちょっと細かい話ですが、一応、頭の片隅に入れておいて頂ければと存じます。
 尚、これは誰がする場合に限らずですが、一度追認した行為は、もはや取り消すことはできません。追認取消しも、できるのは一度までです。そうでないと、法的安定性が損なわれてしまうからです。この点もご注意下さい。
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Author:根本総合行政書士
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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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