制限行為能力者の詐術

 制限行為能力の制度に定められた制限行為能力者の単独でした法律行為は、取り消せます。しかし!制限行為能力者がした法律行為でも、取り消せないものがあります。それは制限行為能力者の詐術です。

事例
19歳の未成年者Aは免許証を偽造し、Bと甲不動産の売買契約を締結した。


 さて、この事例で、Aは未成年者(制限行為能力者)ということを理由に、Bと結んだ甲不動産の売買契約を取り消すことができるでしょうか?
 結論。Aは未成年者を理由に甲不動産の売買契約を取り消すことができません。なぜなら、Aは詐術を用いているからです。詐術というのはウソをつくことです。

(制限行為能力者の詐術)
民法21条
制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。

 いくら制限行為能力者だからといって、自分は行為能力者であると自ら相手を騙しておいて、後からやっぱり制限行為能力者なので取り消します、なんてことを許してしまうのは信義に反します。よって、自ら詐術を用いた制限行為能力者の行為は、取り消すことができません。
 また、こう考えることもできます。制限行為能力者の保護は、制限行為能力者の判断能力(意思能力)には問題があると考えられるからですが、判断能力(意思能力)に問題がある人間が、自ら考えて詐術を用いることができますかね?むしろ、そこまで考えて実行している時点で、そこまで頭が回っているってことですよね?ということから、制限行為能力者が詐術を使って制限行為能力者ではないと相手を誤信させて行った行為は取り消すことはできない、と考えることもできるのです。

第三者が詐術を用いた場合

 例えば、未成年者自らでなく、第三者が「あいつは成人だから大丈夫だよ」といって相手方が誤信してしまった場合は、どうなるでしょうか?この場合、未成年者自身は何も悪くありません。むしろ、大人っぽい見た目が災いしただけの被害者とも言えるかもしれません。従いまして、このようなケースでは取消権の行使は可能です。民法21条の規定は、あくまで自ら詐術を用いた制限行為能力者に対するペナルティなのです。

補足
 一口に詐術といっても、一体どこまでが詐術となるのでしょうか?判例では以下のように示しています。
「民法21の詐術とは、積極的術策を用いた場合だけでなく、制限行為能力者がその旨を黙秘していた場合でも、他の言動と相まって相手方を誤信させ、または誤信を強めた場合には、なお詐術にあたる。しかし、単に制限行為能力者であることを黙認したのみでは、詐術にはあたらない」
 判例で何を言っているかといいますと、要するに、制限行為能力者が自分から積極的に詐術を用いていなくとも詐術にあたる場合がある、ということです。例えば、未成年者が「私は成年です」という旨を言わなくても、会話の中で「この前飲みに行った時さ~」みたい事を言っていた場合に、契約の相手方がそれを聞いて「あ、この人は成年なのか」と誤信してしまうこともありますよね。そのようなケースも詐術にあたる可能性があるということです。ただ、単に制限行為能力者であることを黙っていただけでは詐術にはあたらない、ということも「しかし~」の部分で述べられています。例えば、未成年者が未成年年者であることをただ黙っていただけでは、それは詐術にはあたらないということです。この点はご注意下さい。

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根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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