制限行為能力者 取消権者と取消しの効果

 未成年者や成年被後見人などの制限行為能力者の法律行為には、法律による制限や保護があります。そのひとつに、制限行為能力者が単独で有効にできる法律行為を限定し、もし単独で行ってしまったとしても後から取り消すことができる、という制度があります。
 ところで、制限行為能力者が単独でした法律行為を取り消すことができるのは、一体誰なのでしょうか?それは民法120条により、次のように規定されています。

(取消権者)
民法120条
行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者又はその代理人承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。

 上記の条文から、制限行為能力者の法律行為を取り消せるのは「本人・代理人・承継人・同意ができる者」となります。
 本人というのは、制限行為能力者本人です。
 代理人というのは、未成年者であれば法定代理人(子供の親など)、成年被後見人であれば成年後見人になります。
 承継人というのは、もっともわかりやすいところだと、相続人がそうです。つまり、承継人が取り消す場合というのは、成年被後見人が法律行為を取り消す前に死亡し、相続人となった息子がその法律行為を取り消す、というようなことです。
 同意ができる者というのは、保佐人・補助人を指すと思って頂いて良いでしょう。つまり、被保佐人が単独でした法律行為を後に保佐人が取り消す、といったことです。

 さて、制限行為能力者が単独でした法律行為を取り消せるのは誰なのかはわかりました。では、実際に取り消した後は一体どうなるのでしょうか?

(取消しの効果)
民法121条
取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。ただし、制限行為能力者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。

 取消しの効果は遡及します。遡及というのは「さかのぼって及ぶ」ということです。つまり、取消しの効果は遡って無かったことになるということです。そして、遡って無かったことになると、後は不当利得の問題になります。
 また、上記の条文の「ただし」の後を読むと、制限行為能力者については、少し異なる規定が置かれています。それは「現に利益を受けている限度」という部分です。これは現存利益のことですが、要するに、民法121条がこのただし書き以降で言おうとしていることは
制限行為能力者の場合、たとえ悪意の受益者であっても、受けた利益を全部返還した上に利息損害金も付ける、という民法704条の適用はない」
ということです。この点においても、制限行為能力者の保護は通常よりも厚くなっているのがわかります(こちらをご覧になって頂いてからだとその意味がよくわかります)。

制限行為能力者は取り消した事を取り消せるか

 なんだかややこしいですが、要するに、制限行為能力者が「この前の取消し、やっぱナシで!」と言えるか、ということです。
 結論は、取消しを取り消すことはできません。そもそも、取消しの取消しなんてことがまかり通ってしまったら、法的安定性が保たれず、世の中が混乱してしまいかねません。それに、取消しが取り消せなくても、おそらく損害が生じることはないでしょう。なぜなら、取り消すと初めから無かったことになり元に戻るだけなので、もし取り消さなければ何らかのプラスがあったとしても、取消しを取り消せなかったところで、ゼロに戻るだけでマイナスはないでしょう。したがって、取消しを取り消すことはできません。
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Author:根本総合行政書士
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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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