不法原因給付 不法な原因が受益者のみにあるとき

事例1
AはBに事業資金を融資した。しかし実は、Bはこの資金を麻薬購入資金に充てるつもりでいた。Aはそんなこともつゆ知らず事業資金としてBに融資したのだった。


 さて、この事例1で、AのBへの融資資金の返還請求は認められるでしょうか?麻薬購入資金の融資は、当然に公序良俗違反であり不法原因給付です。そして、不法な原因で給付した者の返還請求は認められません。しかし!事例1の場合、Aは単に事業資金として融資しています。AはいわばBに利用され、勝手に犯罪の片棒を担がされたに過ぎない被害者とも言えます。つまり、Aに不法はないのです。本質的な公序良俗違反Bだけにあるのです。となると、結論はどうなるのでしょうか?

(不法原因給付)
民法708条
不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。

 条文を見ると「不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない」とあります。これはまさに、事例1のケースが当てはまります。先程ご説明申し上げたとおり、事例1において、不法な原因は受益者であるBのみにあります。従いまして、事例1の場合、AのBへの融資資金の返還請求は認められます。

事例2
大学受験を控える息子を持つAは、予備校教師のBから裏口入学の話を持ちかけられた。Aは息子を思うあまりその話に乗ってしまい、Bに500万円を給付した。


 これは、言ってみれば裏口入学契約ですよね。当然、こんなものは公序良俗違反で無効です。すると、この事例2のAは、不法原因給付の規定により、Bに給付した500万円の返還請求はできないということになります。ただし、事例1のときのように、「不法な原因が受益者についてのみ存したときは」返還請求が可能になります。
 では、事例2の場合どうでしょう?裏口入学の話を持ちかけたのは予備校教師Bですよね?しかし、息子を思うあまりとはいえ、その話に乗ったのはA自身です。つまり、不法のきっかけは予備校教師Bにありますが、その不法の原因の一部に、Aは自らの意思で加担したことになります。よって事例2は、不法な原因が受益者(予備校教師B)のみにある訳ではありません。となると、Aの500万円の返還請求は認められないことになりますが....しかし!判例では、両者に不法な原因がある場合でも、受益者側の不法原因の方が著しく大きいと考えられる場合は、民法708条の「不法な原因が受益者についてのみ存したとき」の規定を適用するとしています。つまり、事例2のAは、予備校教師Bに対して給付した500万円の返還請求が認められる可能性があるということです。ただ、あくまで受益者側の不法原因の方が著しく大きい場合ですので、例えば、Aの方から「裏口入学できますか?」と話を持ちかけていたりしたら、その場合は、給付したお金の返還請求は認められない可能性が高いでしょう。
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根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
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