不法行為責任と債務不履行責任の違い

 以前の記事でも多少触れましたが、今回は不法行為責任と債務不履行責任の違いについてご説明して参りたいと思います。

 不法行為にせよ債務不履行にせよ損害を受けた者は損害を与えた者に対し損害賠償の請求ができますが、不法行為による損害と債務不履行による損害が競合する場合があります。

事例
Aは開業医のBによる手術を受けたが、Bの過失により障害を負ってしまった。


 この事例でAはBに対し不法行為責任を追及して損害賠償の請求ができます。しかしこうも考えられます。AとBは「手術をする⇄対価を支払う」という契約関係にあり、BはAに対し過失なく安全に手術をする契約義務(債務)があります。つまりBは過失なく安全に手術をするという債務を履行できなかった、すなわち債務不履行に陥ったと考えられ、AはBの債務不履行による損害賠償の請求もできるということになります。

AはBに対し不法行為と債務不履行、どちらで損害賠償の請求した方がいいのか

 これは状況次第で変わってきます。まず不法行為と債務不履行の大きな違いのひとつに「加害者と被害者、どちらに立証責任があるか」があります。
 不法行為の場合は、被害者側が加害者の過失を立証して初めて損害賠償が認められます。一方、債務不履行の場合は、加害者が自らに過失がないことを立証できなければ責任を免れることができません。つまり債務不履行の場合は、加害者(債務者)が債務不履行に陥った時点で、加害者側の過失が推定されてしまうのです。従いまして、不法行為責任を追及するよりも債務不履行責任を追及した方が必然的に被害者の損害賠償の請求は認められやすくなっています。
 だったら不法行為と債務不履行が競合したときは債務不履行による損害賠償請求一択でいいんじゃね?
 確かに立証責任の側面から見れば債務不履行による損害賠償請求の方が被害者にとっては有利だと思います。しかし、時と場合によっては不法行為責任を追及した方が被害者が救われやすくなることもあります。それは以下の点等においてです。

・消滅時効期間
・加害者が履行遅滞になる時期
・加害者からの相殺
・過失相殺
・過失相殺によら加害者の責任免除

 それではひとつひとつ見ていきましょう。

・消滅時効期間
(不法行為責任)
損害および加害者を知ってから3年または行為時から20年
(債務不履行責任)
10年
 例えば債務不履行による損害賠償の請求権が11年経っていて時効消滅していたとしても、不法行為による損害賠償の請求なら可能、という状況もあるのです。

・加害者が履行遅滞になる時期
(不法行為責任)
不法行為時
(債務不履行責任)
請求時
 例えば「いつまで」という期限の定めがない債務不履行の場合は請求して初めて相手が履行遅滞に陥るのに対し、不法行為の場合は不法行為があった瞬間から加害者は履行遅滞に陥ります。(履行遅滞に陥ると遅延損害金が発生する可能性など)履行遅滞に陥るのが早ければ早いほど加害者側が不利になります。

・加害者からの相殺
(不法行為責任)
できない
(債務不履行責任)
できる
・過失相殺
(不法行為責任)
任意的
(債務不履行責任)
必要的
・過失相殺による加害者の責任免除
(不法行為責任)
不可
(債務不履行責任)

 上記三つは (過失)相殺に関してになりますが、これらに関しては状況によらず完全に不法行為責任の方が方が重くなっています。よっぽど被害者側にも過失がないかぎり加害者側の主張はほぼ通らないと言ってもいいかもしれません。裁判所が加害者の主張を聞いて事案を検証し任意で過失相殺をする可能性はありますが、あくまで裁判所の任意です(つまり裁判所次第ということ)。

 という訳で、不法行為責任と債務不履行責任の違いについてまとめました。イメージとしては、被害者側からすると立証責任においては債務不履行が被害者有利、立証さえできれば不法行為が被害者有利、といった感じでしょうか。
 今回も最後までお読み頂き有難うございます。
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根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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