使用者責任 社長個人は責任を負うのか

事例10
AはBの過失により起こった交通事故で大怪我を負った。Bは甲タクシー会社の運転手で、Bが運転するタクシーがBの過失が原因で起こした交通事故によりAが被害を被ったのだった。


 この事例10において、被害者のAは使用者責任に基づいて加害者のBの使用者である甲タクシー会社に損害賠償の請求ができることは前回までにご説明して参りましたとおりですが、ここでもう一度使用者責任に関する条文をご覧下さい。

(使用者等の責任)
民法715条
ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2項 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3項 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。

 今回注目して頂きたい箇所は2項です。その2項に規定されていることこそ今回のテーマである、使用者責任における「社長個人は責任を負うのか」に繋がります。

甲タクシー会社の代表取締役の社長は社長個人として使用者責任を負うのか

 民法715条2項には「使用者に代わって事業を監督する者」も使用者責任を負うと記されています。ではその「使用者に代わって事業を監督する者」とは具体的にどのような者を指すのでしょうか。それは「加害者である被用者(従業員)に直接の指示を出す立場にある人」を指します。つまり加害者の直属の上司と考えるのが妥当です。すると事例10の場合、甲タクシー会社だけでなくBの直属の上司も使用者責任を負う可能性があるのです。
 以上のことを踏まえて、今回のテーマである「社長個人は責任を負うのか」について考えますとこうなります。

社長が加害者に直接業務の指示を出しているような場合は社長個人も使用者責任を負う可能性があり
社長が加害者に直接業務の指示を下すことがないような場合は社長個人が使用者責任を負う可能性はまずない


となります。事例10に当てはめると
甲タクシー会社の社長がBに直接指示を出しているような場合は甲タクシー会社の社長個人も使用者責任を負う可能性があり、そうでない場合は社長個人は使用者責任を負わない
となります。
 小さい会社では、社長が現場の従業員に直接指示を出すことはよくあることだと思います。反対に大会社では、社長が現場の従業員に直接指示を出すことは中々ないと思います。ですので小さい会社等で社長自身が現場の従業員に直接指示を出しているような場合は、現場の従業員の不法行為の責任を社長個人が使用者責任として負い、被害者の損害賠償の請求に応じなければならない事態もありうるのです。人間は立場に比例して責任も重くなるということです。肝に銘じておかなければなりませんね。

 という訳で今回は以上になります。次回も使用者責任について解説して参りますが、ここまでで十分に、使用者責任の重さは理解できたのではないかと存じます。そして使用者責任は被害者の保護に厚いこともお分かりになったかと思います。いやはやしかし、人を雇って事業を経営をするということは大変なんですね。それをこの使用者責任の問題からも垣間見ることができます。
 今回も最後までお読み頂き有難うございます。
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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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