使用者責任は重い 事業の執行の範囲・使用者の主張(立証責任)

事例10
AはBの過失により起こった交通事故で大怪我を負った。Bは甲タクシー会社の運転手で、Bが運転するタクシーがBの過失が原因で起こした交通事故によりAが被害を被ったのだった。


 この事例10において被害者のAは、Bに対してだけではなくBの使用者たる甲タクシー会社に対しても、使用者責任に基づいて損害賠償の請求ができます。ただし!それには加害者のBの起こした交通事故、つまりBの不法行為が甲タクシー会社の事業の執行として行われたと認められなければなりません。

行為の外形

 判例では、事業の執行にあたるかどうかは行為の外形から判断するとしています。では行為の外形で判断するとはどういうことでしょうか?
 例えば事例10でBが業務中に起こした事故であればそれは当然事業の執行にあたるでしょう。そしてBが休日中にドライブしていて起こした事故であればそれは事業の執行としては認められないでしょう。ではBが休日中にタクシーを運転して起こした事故はどうでしょう?この場合は事業の執行として認められてしまい甲タクシー会社に使用者責任が生じる可能性があります。なぜなら行為の外形で判断されるからです。甲タクシー会社としては「Bが休日中に勝手にタクシーを運転してやらかしたことだ!弊社の業務とは関係ない!」と言いたいところでしょう。しかし客観的に見たらどうでしょうか。たとえ加害者のBが休日中に甲タクシー会社の業務とは何ら関係なくやらかしたことだとしても、甲タクシー会社に勤めるBがタクシーを運転している時点で、はたから見れば甲タクシー会社の業務に見えてしまいますよね。これが行為の外形で判断するということです。
 このように使用者責任においては被害者側の損害賠償が認められやすくなっています。同時に使用者責任の重さも分かりますね。ちなみに、ヤ〇ザの暴力事件につき組長の使用者責任を認めた、なんて判例もあります。これもある意味使用者責任の重大さを物語っていますよね(笑)。

使用者が主張できること

 加害者の使用者は使用者責任を負い、被害者は加害者の使用者に損害賠償の請求ができます。では使用者は何かしらの主張をして責任を免れることはできないのでしょうか?ここで今一度、民法の使用者責任に関する条文を確認してみましょう。

(使用者等の責任)
民法715条
ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2項 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3項 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。

 実は使用者は、上記の太字の部分の「使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったとき」を主張立証すれば責任を免れることができます。つまり事例10で、甲タクシー会社がBの選任及びその事業の監督について相当の注意をしたこと、又は相当の注意をしてもBの交通事故による損害が生ずべきであったことを主張立証できれば責任を免れることも可能だということです。使用者責任は無過失責任ではありませんので、使用者に免責される可能性が残されているのです。しかし!使用者責任は通常の不法行為責任よりも被害者側に有利になっています。

立証責任の転換

 通常の不法行為責任であれば、被害者側が加害者の過失を立証して損害賠償の請求ができるのに対し、使用者責任では、加害者側(使用者側)が自らの過失がなかったことを立証しなければ責任を免れることができません。つまり通常の不法行為責任と使用者責任では立証責任の転換が図られているのです。簡単に言えば通常の不法行為責任よりも使用者責任では被害者が救済されやすくなっているということです。このことからも使用者責任の重さが理解できますよね。

 という訳で今回は以上になります。次回も使用者責任についてもう少し掘り下げて参ります。
 最後までお読み頂き有難うございます。
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根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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