不法行為 責任能力

 今回は、不法行為における加害者(債務者)の責任能力の問題についてご説明して参ります。

事例3
Aは小学三年生のBの過失により大怪我を負った。


 さて、この事例3で、AはBの不法行為責任を追及して損害賠償の請求ができるでしょうか?
 結論。AはBに損害賠償の請求はできません。なぜなら、Bが小学三年生だからです。
 
責任能力無き者、不法行為成立せず

 民法における責任能力とは、自分がやった事が法律上の責任を生ずるということを自分でわかっている能力です。法律上イケないことをしたら、それが法律上イケないことだと自分でわかっている能力です。
 学説上では、満12歳程度をもって責任能力ありとされています。大体、小学生と中学生の間ぐらいで線引きされるイメージですね。また、心神喪失者なども責任能力なしと考えられ、不法行為が成立しません。例えば、通り魔事件があって犯人が心神喪失者と判断されれば、犯人の不法行為は成立せず免責となります。それは台風や地震に損害賠償請求できなければ野犬やヘビに損害賠償請求できないのと理屈は一緒で、これが近代法の責任主義の原理なのです。よく、通り魔みたいな事件が起こったときに、犯人の責任能力の有無みたいな話が出てくるのは、現在の法律が、この近代法の責任主義の原理に立脚しているからです。

 さて、そうなると、事例3において被害者であるAは、泣き寝入りということになってしまうのでしょうか?
 実は、Aにはまだ2つ、損害賠償の請求手段が残されています。

1 小学三年生のBの親権者に、監督義務違反による損害賠償を請求する
2 1の監督義務者に代わってBを監督する者(例えば学校や教師)に、監督義務違反による損害賠償を請求する

 上記2つの手段が、被害者のAにできることです。念のためご説明いたしますが、親権者(通常は親)には自分の子供の監督義務があります。監督義務とは、簡単に言うと「ちゃんと面倒みなさいよ」ということです。つまり、事例のAが、小学三年生のBの親に監督義務違反を追及するというのは、「あなたは親なのにちゃんとBの面倒みてませんよね!それによって私は損害を被った。だからBの監督義務者である親のあなたに賠償請求します!」ということです。これが上記1の手段になります。
 ここまでで、親権者の監督義務についてと、その責任追及によりAは小学三年生のBの親権者に損害賠償の請求ができる、ということがわかりました。では、上記2の手段「監督義務者に代わって監督する者に損害賠償請求する」とは、どういうことなのでしょうか?もうおわかりですよね。Bの通う学校やその学校の教師に対して、Aは損害賠償の請求ができるということです。学校や教師の責任も、親同様重大なのです。
 尚、現実には、事案ごとに状況を見て検証し、その者に監督義務違反があったかどうかが判断され、実際に損害賠償の請求ができるかどうかの結論は、個別具体的に出されます(結果はケースバイケースということ)。
 という訳で、事例3でAができることをまとめるとこうなります。

AはBに対し直接、損害賠償の請求はできない。それはBがまだ小学三年生で責任能力がないから。そのかわりBの親権者(通常は親)か、場合によっては学校または教師に、監督義務違反による損害賠償の請求ができる

 念のため付け加えておきますが、被害者側のAにも過失があれば、それは過失相殺として考慮されます。この点もご注意下さい。
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根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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