抵当権の消滅請求

 抵当権の設定された不動産を取得した者(抵当不動産の第三取得者)から、抵当権の消滅を請求する手段があります。それが抵当権消滅請求です。
 ケースとしては、抵当権の設定された不動産を売買で取得した者、贈与を受けて取得した者、財産分与で取得した者などが、抵当権消滅請求をします。
 ここで一点、ご注意頂きたいのが、抵当不動産を相続により取得した者は、抵当権消滅請求はできません。なぜなら、相続人は、抵当権設定者の地位をそのまま受け継ぐからです(包括承継)。
 また、抵当不動産の地上権、賃借権の取得者からの抵当権消滅請求という仕組みはありません。この点もご注意下さい。

誰に対してどのように請求するのか

 抵当権消滅請求は、登記簿に載っている抵当権者全員に対して書面を送達して行います。
 ちなみに、その書面には「金〇〇円支払うから抵当権の消滅に応じろ」という旨の文章が書いてあります。

 そして、抵当権消滅請求の通知を受けた抵当権者は、通知の到達から2ヶ月以内に、次のどちらかの選択を迫られます。
1・金〇〇円に納得し、素直に抵当権消滅請求に応じる
2・金〇〇円では少なすぎるとして、抵当権権者自らが競売を申し立てる

 抵当権権者としては、しっかりと被担保債権の弁済を受けられることが第一です。ですので、抵当権消滅請求の書面に書かれた「金〇〇円」の金額で、被担保債権の弁済が満足を受けられるのであれば、抵当権者は納得して1の選択をします。
 しかし、金〇〇円は、抵当権消滅請求をしてきた第三取得者が値踏みした金額であることがほとんでしょう。そこで、抵当権者がその金〇〇円では少ないと思った場合は、2の方法で、競売代金から配当金を受けることもできるというわけです。

 さて、では抵当権消滅請求を受けた抵当権者が、何の回答もしないまま2ヶ月が経過した場合はどうなるでしょう?
 その場合は、抵当権者は、金〇〇円を承諾したとみなされます。また、抵当権者が2の手段を選択したが、その競売の申立てを取り下げた場合も、金〇〇円を承諾したとみなされます。同様に、競売の申立てが却下または取り消された場合も、金〇〇円を承諾したとみなされます。

抵当権者の承諾後

 登記簿に載っている抵当権者全員が、第三取得者の提示した金〇〇円を承諾し、第三取得者がその金額を払い渡すか、供託※すると、抵当権は消滅します。
※供託とは、わかりやすく言うと、法務局に一旦お金を預けること。弁済と同じ法的効果がある
 尚、抵当権者の1人でも抵当権を実行し競売を申し立てれば、競売手続へ移行します。

 以上が、抵当権消滅請求の手続の流れになります。

補足1
 相続人が抵当権消滅請求ができないことは、すでに申し上げました。他にも、主たる債務者、その保証人も抵当権消滅請求をすることはできません。

補足2
買主の代金支払拒絶権
 民法には「買い受けた不動産について、抵当権の登記があるときは、買主は、抵当権消滅請求の手続きが終わるまで、その代金の支払いを拒むことができる」との規定があります。通常、売買契約上、買主には代金支払義務が生じます。ですので、これは義務を拒絶するというレアな、数少ない例外規定です。
 他にも(これは抵当権消滅請求とは関係ありませんが)、売買の目的について権利を主張する者があるために買主がその買い受けた権利を失うおそれがある場合に、代金の全部または一部の支払いの拒絶をできる、との規定もあります。

抵当権の順位の変更

 同一の不動産に複数の抵当権が設定されたときは、その抵当権の順位は登記の先後で決まります。なぜなら、不動産登記の世界は早く登記したもの勝ちだからです。
そして、この抵当権の順位を、後から変更できる仕組みがあります。それが抵当権の順位変更です。
 抵当権の順位変更を行うと、抵当権の順位が変わります。例えば、1番抵当権者Aと2番抵当権者Bが抵当権の順位変更を行なって、1番抵当権者Bと2番抵当権者Aになるといった具合です。

抵当権の順位変更はどうやって行うのか

 当事者間の合意により行います。例えば、1番抵当権者Aと2番抵当権者Bが、AB間の合意により抵当権の順位変更を行います。
 ただし、利害関係者がいる場合は、その者の承諾も必要です。利害関係者というのは、その順位変更によって順位が下がってしまう転抵当権者等を意味します。例えば、1番抵当権者Aと2番抵当権者Bが、AB間の合意により抵当権の順位変更を行う場合の、1番抵当権者Aの転抵当権者Cです。この場合は、AB間の合意だけでなく、Cの承諾も得た上で、AとBは抵当権の順位変更を行うことになります。なぜなら、Aの1番抵当権の順位が下がり2番抵当権になると、1番抵当権として転抵当にしているCが、いざその転抵当権を実行したときに、弁済を受けられる額に影響するからです。それはCにとって重大なことですよね。

抵当権の順位変更は登記をしなければ効力を生じない

 抵当権の順位変更は、当事者間の合意により行いますが、それを登記して初めて、その効力が生じます。つまり、当事者間が合意しても、それを登記をしなければ意味がないということです。
 ご注意頂きたいのは、これは効力発生要件ということです。第三者対抗要件ではないのです。
 一般的には、不動産の登記というのは第三者対抗要件であり、当事者間においては、登記がなくとも所有権の移転は有効です。例えば、AB間で不動産の売買を行えば、登記をしなくても、AB間の意思のみで所有権は移転します。
 ところが、抵当権の順位変更は、当事者間の合意があってもその登記をしなければ、当事者間ですら効力が生じないのです。このようなものは、不動産登記において非常に珍しく、かなりレアなものと言っていいでしょう。
 少し小難しい言い方をすればこうなります。
「通常の場合、不動産登記は諾成契約で、登記をせずとも当事者間であれば効力は生じる。しかし、抵当権の順位変更は要式契約で、登記という形式を経なければ効力を生じない」

 抵当権の順位変更の登記は、第三者対抗要件ではなく効力発生要件であるということ、ご注意下さいませ。

サイト運営者

根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
根本総合行政書士です。
宜しくお願いします。

保有資格:
行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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