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債権の超基本~債務不履行・損害賠償請求権から差押え・強制執行、抵当権・保証債務から相殺・債権譲渡まで

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動産の物権・占有権
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不動産賃貸借、賃借権と相続
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債権
債権の超基本~債務不履行・損害賠償請求権から差押え・強制執行、抵当権・保証債務から相殺・債権譲渡まで
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民法その他
条件~停止条件・解除条件など
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民法改正について

資格試験

行政書士試験
宅建試験
賃貸不動産経営管理士試験

後順位賃借権者と抵当権者の同意

 賃借権は登記をすることができますが、抵当権よりも後に登記された場合、抵当権者に対抗することができません。しかし、すべての抵当権者が同意し、その同意の登記をすれば、その賃借権を抵当権に対抗できるものにすることができます。すべての抵当権者とは、その不動産について抵当権を設定しているすべての抵当権者です。3番抵当権まで設定していれば、1番抵当権者から3番抵当権者までの抵当権者全員ということです。つまり、抵当権よりも後に登記された賃借権でも、抵当権者全員の同意の登記があれば、抵当権に対抗できる賃借権にすることができるということです。
 なぜそんなことができるの?
 これは、抵当権が設定されている賃貸物件の入居を躊躇させないためです。例えば、すでに抵当権が設定されている高額な賃料のビルに法人が入居するようなケースを考えてみて下さい。入居する側の法人としては、高額賃料を取られた上で、いつ立ち退きになるかわからないような状況では、本部機能の移転等がしづらくなりますよね。しかし、賃借権に抵当権への対抗力を持たせることができれば、その懸念を払拭することができます。

 以下に、抵当権に遅れた賃借権に対抗力を持たせるための要件をまとめます。

1・賃借権が登記されていること
2・その不動産についてのすべての抵当権者の同意があること
3・同意の登記をすること

 以上になります。
 1の「賃借権が登記されていること」ですが、建物の引渡しだけでは足りません。登記が必須です。賃借人の賃貸人に対する対抗要件は建物の引渡しがあればOKですが、それとは違います。ご注意下さい。
 2の「その不動産についてのすべての抵当権者の同意があること」ですが、過半数が同意しても、1人でも反対する者がいればダメです。抵当権者全員の同意が必須です。
 3の「同意の登記をすること」ですが、抵当権者全員の同意があっても、それだけではまだ足りません。「全員の同意がありますよ」ということを登記して初めて対抗力を持つことになります。なぜ登記までしなければいけないかといいますと、その旨の登記をしないと、競売時の買受人がそのような事情を知る術がないからです。

 このように、3つの要件を満たすことにより、抵当権に遅れる賃借権に対抗力を持たせることが可能です。
 ただ、これは中々に高いハードルだと言えます。というのも、内容的には抵当権者が不利になる内容ですから。それを抵当権者全員が同意して登記まで認めてくれないといけないわけですから。また、もし抵当権者が同意することにより不利益を受ける者がいる場合は、その者の承諾も必要になります。つまり、抵当権者が5人いて、その5人が同意することにより不利益を受ける者が10人いたとすると、合計15人がこの件について納得しなければならない事になります。
 このように考えていくと、ハードルが高いという意味がよくわかって頂けるのではないしょうか。

参考
(抵当権者の同意の登記がある場合の賃貸借の対抗力)
民法387条
1項 登記をした賃貸借は、その登記前に登記をした抵当権を有するすべての者が同意をし、かつ、その同意の登記があるときは、その同意をした抵当権者に対抗することができる。
2項 抵当権者が前項の同意をするには、その抵当権を目的とする権利を有する者その他抵当権者の同意によって不利益を受けるべき者の承諾を得なければならない。

抵当権に遅れる賃貸借

 抵当権が設定されても、その不動産の使用収益は抵当権設定者の自由です。したがって、抵当不動産を賃貸することも可能です。
 では、抵当権が実行されて、賃貸されている不動産が競売にかけられ売却されてしまった場合、その不動産を賃借している者はどうなるのでしょうか?
 ということで、今回は抵当権と賃貸借の問題について、解説して参ります。

事例
BはA銀行から融資を受けて新築アパートを建てた。新築アパートには融資を受けるためにつけた抵当権が設定されている。その後、Bは入居者募集をかけ、アパートは満室になった。それからしばらくして、Bが債務不履行に陥り、A銀行は抵当権を実行した。


 さて、この事例で、A銀行が抵当権を実行したことにより、アパートは競売にかけられます。すると、アパートの賃借人(入居者)は一体どうなるのでしょうか?
 まず、アパートに抵当権が設定されたのは、入居者募集をかける前です。ということは、元々、A銀行は賃借人という負担のないアパートとして担保評価をして抵当権を設定したわけです。ですので、「賃借人という負担のないアパート」として担保評価されたアパートが競売にかけられ、アパートがBから買受人の手に渡ると、アパートの賃借人(入居者)一同は、即刻アパートを買受人に引き渡さなければならなくなります。そして、競売によってBから買受人にアパートの所有権が移ることは、いわゆるオーナーチェンジとは違います。つまり、買受人には入居中の賃借人にアパートを使用収益させる義務はないのです。したがって、賃借人一同は荷物をまとめて即刻出ていなければならないハメになるということです。
 でも、これってどうでしょう。いくら抵当権が設定された後に入居したからといって、入居者達には知るところのない大家Bの都合により競売にかけられ、アパートが買受人の手に渡った途端に賃借人一同即立ち退きというのは、ちょっと理不尽な気もしませんか?そもそも、入居者募集自体が抵当権設定後に行われているわけですし...。
 そこで!民法では、このようなケースでの賃借人を保護するため、買受人の買受けの時から6ヶ月を経過するまでは、賃借人は建物を引き渡す必要はないと定めています。つまり、アパートが買受人の手に渡っても、その買受けの時から6ヶ月が経過するまでは、賃借人一同はアパートから出ていかなくても大丈夫ということです。最終的には賃借人一同がアパートから出ていかなければならないことには変わりありません。しかし、民法により、賃借人のために6ヶ月の猶予期間が設けられているのです。
 6ヶ月ということは半年です。半年あれば、なんとか引越しの目処も立ちますよね。
 本来の民法の理屈なら、抵当権に遅れる賃借権は保護されません。原則として、不動産物権の世界は早い者勝ちだからです。しかし、今回の事例のような抵当権に遅れる賃借権には、最低限の保護が規定されているのです。

買受人は賃貸人としての義務を引き継ぐことはない

 先ほど、競売によってアパートの所有権がBから買受人に移るのは、いわゆるオーナーチェンジとは違うと申しました。オーナーチェンジとは違うとはどういうことかといいますと、オーナーチェンジの場合は、前主と賃借人の間の賃貸借契約は、旧オーナーから新オーナーへと引き継がれます。しかし、事例の場合、競売により買受人がアパートを買受けた時点で、Bと賃借人の間の賃貸借契約は終了になります。ですので、6ヶ月の猶予期間が与えられているとはいえ、最終的に賃借人は立ち退かなければならないのです。
 また、敷金の返還義務買受人に引き継がれません。

 ところで、アパートの賃借人は、買受人が買い受けた時から6ヶ月を経過するまでは、猶予期間として立ち退かなくても大丈夫なことは先ほどご説明いたしました。ではその間、アパートの家賃はどうなるのでしょうか?
 買受人は、その6ヶ月の間、アパートの賃借人から賃料相当額の対価をもらう権利があります。つまり、賃借人は、6ヶ月を経過するまで一銭も払わずにアパートに居続けられるというわけではないということです。6ヶ月を経過するまで、アパートに居続けるためには、賃料相当額を払わなくてはならないということです。さらに、アパートの賃借人がその支払いをしない場合、買受人は1ヶ月分以上の支払いを相当の期間を定めて催告し、期間内にその履行がなければ、賃借人に対してすぐに立退きを請求することができます。
 尚、買受人がもらうことができる賃料相当額とは、賃料ではありません。なぜなら、買受人がアパートを買い受けた時点で賃貸借契約自体は終了しているからです。買受人と賃借人は契約関係にはありません。この点はご注意下さい。
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一括競売

 更地に抵当権を設定した後に、土地所有者が建物を建築した場合、抵当権が実行されても法定地上権は成立しません。抵当権設定時には土地上に建物がないので、法定地上権成立の要件を満たさないからです。(これについて詳しくはこちらをご覧下さい)
 そして抵当権者は、更地として評価した土地に抵当権を設定しているので、その担保価値への期待を裏切ったことになる土地所有者に対して建物の収去請求ができ、更地の状態に戻す事ができます。
 また、民法は、抵当権者に建物の収去請求以外に、もう1つの手段を与えました。それが今回のテーマである一括競売です。

(抵当地の上の建物の競売)
民法389条
抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは、抵当権者は、土地とともにその建物を競売することができる。ただし、その優先権は、土地の代価についてのみ行使することができる。


 なんと抵当権者は、抵当権設定後の更地に建物が築造されてしまった場合は、抵当権を実行するときに、土地とまとめてその建物も一緒に競売にかけてしまうことができます。これが一括競売です。
 これは中々パワフルな規定と言えます。いくら抵当権を設定した更地に建物が建てられてしまったとはいえ、抵当権を設定していない建物までまとめて競売にかけてしまえるわけですから。
 
なぜ民法はこんなパワフルな規定を置いたのか?

 これには2つの理由が考えられます。
 ひとつは土地の競売価格下落の防止です。
 法定地上権が成立しなければ底地にはなりません。しかし、土地だけを競売した場合、結局、建物の収去問題が生じることは目に見えています。そして、実際に建物の収去請求をするとなると「裁判をした上で強制執行」となってしまうかもしれません。つまり、そのような「面倒事を抱えた土地」ということで、底地までの価格下落はないにせよ、事実上、ある程度の競売価格の下落は避けらなくなってしまいます。そこで、その救済処置として民法389条により、土地と建物の一括競売を認めたということです。
 そしてもうひとつの理由は、社会経済的な損失の防止です。
 建物の収去問題が生じるということは、せっかく建てられた建物を取り壊さなくてはならなくなり、そのような問題が全国各地で起こってしまうと、それは社会経済的な損失となり、我が国の経済の発展を阻害することにもなってしまいかねません。そこで民法389条により一括競売を認めた、ということです。

 尚、一括競売しても、抵当権者が優先弁済を受けられるのは土地の競売代金だけです。なぜなら、抵当権を設定しているのはあくまで土地だけだからです。では建物の競売代金はどこにいくのかといえば、建物の所有者の手に渡ります。(それを他の債権者が差し押さえればその者の手に渡るが)

ちなみに、抵当権者が実際に一括競売という手段を講じるかどうかは、抵当権者の自由です。一括競売という手段は、抵当権者の権利であって義務ではありません。ですので、一括競売できる状況になった場合でも、土地だけを競売にかけることは可能です。

補足
 民法389条では「抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは」とありますが、そこに「誰が」という主語は記載されていません。これはつまり「誰が抵当地に建物を築造したとしても一括競売は可能」という含みを残しているということです。
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根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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