債務不履行・損害賠償の超基本

 債権とは、特定の者が特定の者に対して一定の行為を請求することを内容とする権利です。
 AがBにお金を貸した場合、AはBに対して「金返せ」という債権を持ちます。一方で、BはAに対して「借りた金を返す義務」という債務を負います(債権債務の超基本はこちらの記事へ)。そしてこの場合、Aが債権者、Bが債務者となります。
 ところで、債務者が、その債務を履行※しなかった場合は一体どうなるのか?という問題があります。ここからはその問題について、わかりやすく「お金」の視点から、ご説明して参りたいと思います。
※借金という債務を負っている場合に、その借金を返済することを「債務の履行」という。わかりやすく言うと、債務の履行とは「約束を果たすこと」である。売買契約なら「買主が売主に代金を支払うこと・売主が買主に売った物を引き渡すこと」が債務の履行となる。

事例
「代金は月内に支払う」という約束をして、AはBにギターを売り渡した。しかし、月末が過ぎてもBは一向に代金を支払わない。


 これは売買契約の事例です。まずは各当事者の立場と関係性を確認しましょう。
 Aはギターの売主で、Bはギターの買主です。そして売主Aは、買主Bに対して「代金を支払え」という債権を持っています。一方、買主Bは、売主Aに対して「月内に代金を支払う」という債務を負っています。したがってこの場合、売主Aは債権者、買主Bは債務者となります。

債権者 債務者
売主A→買主B
   ↑
   債権

 そして、ここからが本題です。
 買主Bは「月内に代金を支払う」という約束をしたのにもかかわらず、月末が過ぎても一向にその代金を支払いません。つまり、Bは期限が過ぎても債務を履行しない、ということです。これを債務不履行といいます。そして、債務不履行の状態になることを「債務不履行に陥る」といいます。つまり、Bは債務不履行に陥っているのです。
 さて、Bが債務不履行に陥っているのはわかりましたが、早くBから代金をもらいたいAは、一体どうすればいいのでしょうか?民法には、次の規定があります。

(債務不履行による損害賠償)
民法415条
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。

「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき」とは、簡単に言えば「債務者が約束どおりに約束を果たさないとき」ということです。そして、そのような場合、債権者は債務者に対して「生じた損害の賠償を請求できる」ことを民法415条は規定しています。
 従いまして、事例のAは、債務不履行に陥ったBに対して、生じた損害の賠償を請求することができます。
 尚、この場合、「生じた損害」は売買代金です。しかし、それ以外の損害も認められれば、そのときは、売買代金分とそれ以外の損害分とを合わせて、AはBに対して賠償を請求することができます。
 
 以上、まとめるとこうなります。

債権者 債務者
売主A→買主B
   ↑
   債権

↓Bが債務不履行に陥ると↓

債権者 債務者
売主A→買主B
   ↑
損害賠償請求権

 つまり、債務者が債務不履行に陥ると、債権者の債務者に対する債権の矢印が、損害賠償請求権の矢印へと変貌します。恐怖の変貌です(笑)。それはまるで、アシュラマンが怒りの面に変わるかの如く、緋村剣心が人斬り抜刀斎に変わるかの如く、といった感じでしょうか。
 契約は約束です。債務の履行は約束を守ることです。みなさん、約束はしっかりと守りましょう。
 尚、債務不履行についてはこちらの記事も、損害賠償についてこちらの記事もご参照ください。
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物権と比較して考える 債権の超基本

 債権とは、特定の者が特定の者に対して一定の行為を請求することを内容とする権利です。
 さて、それではこの「特定の者」とは、一体どのようなことを意味するのでしょうか?

 そもそも、なぜ「特定の者」なのでしょうか?実はこの意味について考えていくと、債権というものの、その性質・特徴が分かります。従いまして、ここからその「特定の者」について考えながら、債権という権利の性質・特徴をご説明して参ります。

債権は人に対する権利

 ところで「所有権」は債権なのでしょうか?
 違います。所有権は物権です。物権とは、物に対する権利です。つまり、所有権は「この物は私の所有物だ!」という物権になります(物権について詳しくはこちらの記事をご覧下さい)。
 一方、債権は「特定の者が特定の者に対して」一定の行為を請求することを内容とする権利です。「特定の者に対して」ということはつまり、債権は人に対する権利なのです。

物権と比較すると債権がよくわかる

 物に対する権利である物権は、1つの物に対して1人の物権が原則です(例外→共有)。これを一物一権主義といいます。例えば、あなたのギターはあなたの物、すなわち「あなたの所有物」です。全世界の他の誰の物でもありません。あなたはあなたの所有物について、他人を排して支配する権利を持ちます(排他的支配権)。もしあなたのギターを他の誰かが勝手に使っていたのなら、あなたは法律上堂々と「そのギターは私の物だ!返せ!」と主張できます。なぜなら、あなたのギターはあなたの所有物で、あなたにはそのギターの所有権(物権)があり、それは法律上当然に認められた権利だからです。あなたの所有物はあなただけの所有物なのです。あなたはあなたの所有権を不特定多数の者に主張できます。これが物権です。

 一方、人に対する権利である債権は、1人の者に対して1人の債権、という原則はありません。つまり、1人に対して複数の債権が存在することもある、ということです。ということは、1人に対して複数の債務が存在することもあります。これは現実を考えれば簡単にわかります。例えば、八百屋のオヤジが複数の問屋から野菜を仕入れれば、八百屋のオヤジは複数の債務を負うことになります。また、問屋が複数の八百屋に野菜を販売すれば、問屋は複数の債権を持ちます。
 そして、債権は「特定の者が特定の者に対して」有する権利です。AがBに対して持つ債権は、AがBに対する債権でしかありません。つまり、問屋Aが、八百屋Bにみかん10ケース、八百屋Cにみかん20ケースを販売した場合、問屋Aは二つの債権を同時に持ちますが、八百屋Bに対してみかん20ケース分の代金を請求することはできません。なぜなら、それは八百屋Cに対する債権だからです。当たり前の話ですよね。
 また、債権は「特定の者が特定の者に対して」有する権利なので、問屋Aの八百屋Bに対する債権は、他の者とは何の関係もなく、八百屋Cに対する債権とも何の関係もありません。問屋Aの八百屋Bに対する債権の問題は、AB間だけの問題です。問屋Aの八百屋Bに対する債権は、八百屋Bに対してしか主張できません。

 というわけで、「特定の者が特定の者に対して」ということの意味、そして債権の性質と特徴、おわかりになって頂けましたでしょうか。ごく当たり前に思える部分もあったかと思いますが、まずは債権についての超基本として、しっかりとおさえておいて頂ければと存じます。
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債権の世界 債権債務の超基本

債権・債務とは

 債権とは、特定の者が特定の者に対して一定の行為を請求することを内容とする権利です。
 例えば、Bにギターを売ったAは、Bに対して「おまえに売ったギターの金払え!」と請求する権利を持っています。これが債権です。

A→B
 ↑
 債権

 この場合、AはBに対して「金払え」という債権を持っている債権者になります。
 一方、Aからギターを買ったBは、Aに対してギターの購入代金を支払う義務があります。この「Aに対してギターの購入代金を支払う義務」が債務です。

B→A
 ↑
 債務

 この場合、BはAに対して債務を負っている債務者ということです。
 まとめると、ギターの売主Aは、Bに対して「金払え」という債権を持っている債権者ギターの買主Bは、Aに対して「代金支払い義務」という債務を負っている債務者、となります。

売買契約は視点を変えると債権・債務が入れ替わる

 先ほど、ギターの売主Aは債権者、ギターの買主Bは債務者、とご説明いたしました。これは「お金」という視点に立ったものです。これが実は「売買物」、つまり「ギター」という視点に立った場合は、ABの債権債務関係は入れ替わります。
「お金を払って物を買う」「物を売ってお金をもらう」という行為は、売買契約になります(売買契約の超基本はこちらの記事へ)。そして、売買契約は、売主と買主の両者が互いに債権を持ち、互いに債務を負います。どういうことかといいますと、売買契約は「お金」の視点で見れば、売主が債権者となり、買主が債務者となります。これは今までご説明したとおりです。ところが、これが「売買した物」の視点から見ると、売主が債務者となり、買主が債権者となります。なぜなら、売主は買主に対して「売った物を買主に引き渡す義務」という債務を負います。そして、買主は売主に対して「買った物をよこせ」という債権を持ちます。皆さんもお金を払って物を買ったのに、売主が物を引き渡さなかったら「物よこせ!」となりますよね?(金返せ!というのもありますが、それについてはここでは割愛します)。
 従いまして、ギターの売主Aとギターの買主Bの債権債務関係は、次のようになります。

「お金」の視点で見た場合
債権者 債務者
売主A→買主B
   ↑
   債権

ギター(売買物)の視点で見た場合
債務者 債権者
売主A←買主B
   ↑
   債権

 以上のように、売買契約においては「お金」の視点で見るのか「物」の視点で見るのかにより、債権の矢印の方向が変わります。
 また、この売買契約のように、互いに債権を持ち互いに債務を負う契約を、双務契約といいます。

お金の貸し借りは〇〇契約?

 物の貸し借りは、消費貸借契約になります。そして、お金の貸し借りは金銭消費貸借契約と呼ばれます(消費貸借契約の超基本はこちらの記事へ)。
 お金の貸し借り、つまり金銭消費貸借契約は、売買契約のように「物」はなく「お金そのもの」、もっと言えば「金〇〇円という価値そのもの」が、契約の目的物になっています。ですので、売買契約とは違い、お金の視点から見た債権債務関係しかありません。従いまして、お金の貸し借りの場合は、貸し手は借り手に対して「金返せ!」という債権を持つ債権者、借り手は貸し手に対して「借りた金を返す義務」という債務を負う債権者、という図式のみになります。

貸し手 借り手
債権者→債務者
   ↑
   債権

 また、この金銭消費貸借契約のように、一方の者だけが債務を負う契約を、片務契約といいます。

補足
 ちなみに、債権の場合は、AはBに対して債権を「持つ」、あるいは、債権を「有している」という言い方をします。一方で債務の場合は、BはAに対して債務を持つ、というような言い方はしません。債務の場合は、BはAに対して債務を「負う・負っている」という言い方をします。

 というわけで、今回は債権・債務の超基本を、売買契約と金銭消費貸借契約、という2つの契約とともにご説明して参りました。今回ご説明した内容は「債権」という分野について考えるときの基本中の基本になります。債権の分野は非常に難しいです。ですので、まずはこの基本中の基本を、しっかりとおさえておいて頂ければと存じます。
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永小作権と地上権の補足

 用益権のひとつに永小作権があります。
 今回は永小作権について、地上権と比較しながら、簡単にご説明して参ります。
 まず、永小作権についての民法の条文はこちらです。

(永小作権の内容)
民法270条
永小作人は、小作料を支払って他人の土地において耕作又は牧畜をする権利を有する。

 永小作権とは、小作料を支払って、他人の土地で耕作・牧畜をする権利です。
 小作料は、永小作権の要素です。小作料が要素ということは、タダの永小作権を設定することはできないということです。この点は、地代をタダに設定できる地上権とは異なります(地上権の場合、地代は要素ではない)。
 また、永小作権は物権です。したがって、永小作人(永小作権を有する者)が、その権利を自由に譲渡・賃貸することができます。この点は地上権と一緒です。ただし、永小作権の場合、永小作権の設定契約の際、その権利の譲渡・賃貸を禁止する特約をし、その旨の登記をすることができます。これは地上権ではできないことです。

永小作権の存続期間

 永小作権には、存続期間の定めがあります。
・永小作権の存続期間
 20年以上50年以下
→設定行為で50年を超える期間を定めても、その期間は50年になります。つまり、もし永小作権の存続期間60年という設定契約をしても、その期間は問答無用で50年となります。

地上権の存続期間
 地上権の場合、存続期間について、制約はありません。つまり「存続期間永久!」という地上権を設定・登記することも可能です。しかも地上権は地代をタダにすることができるので「存続期間永久!地代は無料!」という、まるで何かのキャンペーン広告のような地上権を設定することも可能です。
 尚、地上権の存続期間を定めなかった場合に、別段の慣習がなければ、地上権者は、その地上権をいつでも放棄することができます(民法268条1項)。
 また、地上権の存続期間を定めなかった場合に、地上権者がその地上権を放棄しないとき、当事者の請求により、裁判所は、20年以上50年以下の範囲内で、その存続期間を定めることができます(民法268条2項)。

補足・区分地上権

 地上権とは、他人の土地において工作物(主に建物)または竹木を所有するために、その土地を使用する権利のことです。
 ところで「土地を使用」とは、「土地の上を使用」と考えるのが通常ですが、「土地の下」つまり地下空間はどうなるのでしょうか?
 地下または空間は、工作物を所有するため、上下の範囲を定めて地上権の目的とすることができます。その場合、地上権の設定に際に、地上権行使の範囲、つまりその土地の使用に制限を加えることができます。これが、区分地上権です。
 普通地上権は、地下と空間に効力があります。つまり、通常の地上権でも、地下を使用する権限はあるのです。そして、区分地上権という形で、そこに制限を加えるというわけです。
 また、他に土地を使用収益をする者等がいても、その者等全員の承諾があれば、区分地上権を設定することができます。
 尚、区分地上権は「工作物(主に建物)を所有するため」であって、竹木所有を目的とした区分地上権は存在しません。したがって、竹木所有を目的とした区分地上権の設定はできません。

 ところで、区分地上権と似たような名称で、区分所有権があります。しかし、その内容はまったく異なります。区分所有権は、分譲マンション等での専有部分の所有権のことです。この点、似たような名称ということで混乱しないようにお気をつけ下さい。(区分所有権についてはこちらの記事をご覧下さい)
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囲繞地通行権と通行地役権は併存する?分筆して袋地ができたら?

囲繞地通行権と通常の地役権の設定契約

 囲繞地の所有者は、法律の定めにより囲繞地通行権を取得しますが、隣地の所有者と通常の通行地役権の設定契約をすることもできるのでしょうか?
囲繞地
 例えば、上図のA地は囲繞地ですが、この場合に、A地の所有者がC地に通行地役権を設定できるのか?という話です。
 結論。囲繞地の所有者は、隣地の所有者と通常の地役権の設定契約をすることもできます。従いまして、A地の所有者はC地に通常の通行地役権を設定することができます。
 そして、囲繞地の所有者が通常の地役権の設定契約をすると、その後は、地役権の設定契約が適用され、囲繞地通行権は消滅します。つまり、A地の所有者がC地に通行地役権を設定すると、A地のための囲繞地通行権は消滅するのです。
 なんで囲繞地通行権が消滅してしまうの?
 囲繞地通行権は「囲繞地という名の袋地」の所有者のために、言ってみればやむを得ず規定したような権利です。したがって、通常の地役権の設定契約があれば、わざわざそのような囲繞地通行権を適用する必要はなくなるので、その場合は当然に消滅するのです。

囲繞地通行権の負担を誰が負うのか

 囲繞地を取り囲んでいる四方八方の土地のうち、どの土地が囲繞地通行権により通行利用される義務を負うのでしょうか?
 これについては、完全にケースバイケースです。なぜなら、そんなことは現地を見てみなければわからないからです。そんなことまで法律で一律に規定しまうと、むしろ不備が生じてしまいます。したがって、事案ごとに、個別的具体的に、合理的な結論を出していくことになります。

分筆によって袋地が生じた場合

事例
A地とC地は元々ひとつの甲土地であったが、分筆※したことによりA地が袋地になった。

分筆とは、ひとつの土地を複数の土地に分けること

 これは、ひとつの土地を分筆したことによって、その土地のひとつが袋地になってしまった、というケースです。
(分筆前)
囲繞地(分筆)
(分筆後)
囲繞地


 さて、この事例で、A地を取り囲む土地は、A地のために囲繞地通行権の負担を負わなければならなくなるのでしょうか?
 結論。A地を取り囲む土地は、A地のために囲繞地通行権の負担義務を負うことにはなりません。なぜなら、分筆しなければ袋地(A地)は存在しなかったからです。
 分筆によって袋地が生じた場合、それは分筆した者自身の責任になります。したがって、分筆によって生じた袋地を取り囲む土地は、囲繞地通行権の負担義務は生じません。ただし、分筆された土地同士であれば、囲繞地通行権の主張をすることができます。
 したがって、事例の場合、A地の囲繞地通行権を、C地に主張することはできます。しかし、その場合は、償金の支払い義務は生じません。ですので、A地の所有者はB地の所有者に対して償金を支払う義務はなく、C地の所有者はA地の所有者に対して償金請求権を持ちません。また、この場合に、AC間で地役権の設定契約をすれば、そのときは当然にその設定契約が適用され、囲繞地通行権は消滅します。
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囲繞地通行権の基本

 通行地役権と似て非なるものに、囲繞地通行権というものがあります(地役権についてはこちらの記事へ)。
「囲繞地」という言葉自体が見慣れない聞き慣れないものだと思いますが、読み方は「いにょうち」です。囲繞地とは、他の土地に周りを完全に囲まれている土地のことです。
囲繞地
 上図のAのような土地が囲繞地です。
 Aのような土地に住んでいる者は、公道に出るためには周りの土地のどれかを通らざるを得ません。そこで、そのような者のために、法律の定めにより通行する権利を規定しました。それが囲繞地通行権です。

(公道に至るための他の土地の通行権)
民法210条
他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。

 この囲繞地通行権は、法律の定めにより生じるものです。そして「法律の定めにより生じる」というところが、通行地役権との大きな違いになります。通行地役権は、あくまで当事者同士の契約により設定され、その上で適用されます。しかし、囲繞地通行権は、法律の定めにより問答無用に適用されます。
 なんで囲繞地通行権だけそうなってるの?
 それは、もし囲繞地を取り囲んでいる土地の所有者が通行を認めなかった場合に、囲繞地は完全に使えない土地になってしまうからです。そうなってしまうと、囲繞地の所有者が困ってしまうのはもちろん、それは社会的な経済的損失にもなります。それは国家としても望ましくありません。したがって、囲繞地に関しては「土地から出らんないとなるとどうにもならん。せめて公道に出られるように、そこは周りのみんなで協力してやろうや」ということを国家のルールとして定めた、ということです。
 尚、囲繞地通行権は登記できません。というより、登記する必要がありません。囲繞地通行権は、法律の定めにより当然に発生する権利です。従いまして、囲繞地の所有者は、その登記なく堂々と囲繞地通行権の主張ができます。

囲繞地通行権は無償ではない

 さて、ここまでの説明だと、囲繞地の所有者への保護ばかりが手厚くなっているように思えますよね。しかし、そんなことはありません。

民法212条
210条の規定による通行権を有する者は、その通行する他の土地の損害に対して償金を支払わなければならない。

「210条の規定による通行権を有する者」とは、囲繞地通行権を有する囲繞地の所有者です。つまり、囲繞地の所有者は、通行のために利用する土地の所有者に対して、償金を支払わなければなりません。囲繞地の所有者が通行のために利用する土地の所有者に償金を支払わなければならないということは、通行のために利用される土地の所有者、つまり囲繞地通行権の負担義務を負う者は、囲繞地の所有者に対して償金請求権を持つことになります。囲繞地通行権の行使はタダではないのです。
 したがって、囲繞地の所有者自身も「償金」という形で負担を負うことになる、ということです、
 尚、囲繞地通行権を有する者が支払う償金ですが、民法212条ただし書きの規定により、その支払いを1年ごとにすることもできます。つまり、1年に1回、1年分まとめて支払うことができる、ということです。ただし、通路を開設するために生じた損害があった場合、その損害についての支払いについては「1年に1回・1年分まとめて」という形での支払いはできません。
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地役権の時効中断

 地役権は、時効取得することができます(これについて詳しくはこちらの記事へ)。
 そして、地役権を時効取得できるということは、当然「地役権の時効の中断」もあります。

事例1
AとBは甲土地を共有している。隣地に住むCは、AとBに地役権を時効取得されそうになったので、Bに対して時効中断の手続きをとった。


 この事例が、地役権の時効中断のケースです。
 さて、この事例で、CはBに対して地役権の時効中断の手続きをとりましたが、このとき、Aの地役権の取得時効は中断するのでしょうか?
 まずは、民法の条文を見てみましょう。

民法284条2項
共有者に対する時効の中断は、地役権を行使する各共有者に対してしなければ、その効力を生じない。

 民法では上記のように規定しています。この条文で言っていることは「共有者に対する地役権の時効の中断は、各共有者、つまり共有者全員に対してしなければ効力を生じない」ということです。
 従いまして、事例のCは、時効中断の手続きをBに対してしかしていないので、その効力は生じません。すなわち、Bの地役権の取得時効は中断しません。Bの地役権の取得時効を中断させたいのであれば、Cは、AB両者に対して時効中断の手続きをとらなければならないのです。
 このような結論は「地役権の不可分性」そして「地役権が人ではなく土地に付着する性質」から来るものです(地役権の性質についてはこちらの記事へ)。その理屈はこうです。
「地役権は不可分な(分割できない)ものなので、各共有者の持分ごとに時効が中断したりしなかったりすることはない。そして地役権は土地に付着する土地自体に発生する権利なので、仮に持分ごとに時効が中断したとして、共有者の1人の持分だけ時効中断しても、他の共有者の持分の時効が進行すれば、その効力が土地全体に及ぶので、共有者の1人でも地役権を時効取得してしまえば、結局は土地全体の地役権を時効取得することになる。したがって、共有者の1人に対してだけ時効中断の手続きをしても意味がないのである」
 このようになります。

事例2
AとBは甲土地を共有し、隣地に通行地役権を設定している。しかし、その通行地役権が消滅時効にかかりそうになっているので、Bはその消滅時効を中断させた。


 さて、この事例2で、甲土地の共有者の1人であるBは、隣地の通行地役権の消滅時効を中断させましたが、その効果はAにも及ぶでしょうか?
 結論。その消滅時効の効果はAにも及びます。これも理屈は事例1のケースと一緒で「地役権は持分ごとに分割できない」という、地役権の不可分性から来るものです。したがって、共有者の1人が地役権の消滅時効を中断させれば、その効果は当然に他の共有者にも及びます。

補足・地役権の消滅時効の起算点

 民法では、地役権の消滅時効の起算点について、以下のように定めています。
・継続的でなく行使される地役権の場合
(地役権の)最後の行使の時
→通行地役権であれば(継続的に通行していたわけではない承役地を)最後に通行した時、ということ。
・継続的に行使される地役権
 その行使を妨げる事実が生じた時から
→これはどういうことかといいますと、継続的に隣地を通行のために利用(通行地役権)していたが、災害などで、その通路の幅4メートルのうち、1メートルが閉塞してしまったような場合、その閉塞した部分だけ時効により地役権が消滅した、というようなケースで(こういうケースもありえる!)、その部分が「閉塞した時」が消滅時効の起算点、ということです。
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地役権の時効取得

 地役権は、自分の土地(要役地)の便益のために他人の土地(承役地)を利用する権利です。このときの自分が地役権者、他人が地役権設定者となります(地役権について詳しくはこちらの記事へ)。そして、地役権は時効取得をすることができます(時効制度について詳しくはこちらの記事へ)。

(地役権の時効取得)
民法283条
地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。

 上記の条文のように、地役権は「継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り」時効取得することができます。

「継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り」とは

 わかりやすく通行地役権で考えます。
 まず言葉のとおり解釈すると、「地役権が継続的に行使され」とは「時効取得する者が継続的にその土地を通行のために利用している」ということです。ただ判例では、それに加えて「時効取得する者自ら通路を開設したこと」が必要だとしています。つまり、(通行)地役権を時効取得するためには、自分でその通路を作っていないといけないのです。ということは、隣地の所有者のご好意で通行を認めてもらっていたような場合は、時効取得できないのです。そのような場合まで、法律的にがっちり「地役権の時効取得!」と認めるのはあんまり良くないんじゃね?というのが裁判所の判断です。確かにそうですよね。そのような場合に地役権の時効取得ができてしまったら、それによってお隣さんとの関係にひびが入りかねませんから。

 さて、ここからは事例とともに、地役権の時効取得について、さらに詳しく見ていきます。

事例
AとBは甲土地を共有している。Aは隣地の乙土地に通路を開設し、通行地役権を時効取得した。尚、Aは甲土地上の自宅に住んでいるが、Bは甲土地には居住していない。


 さて、この事例で、甲土地の共有者のBも、通行地役権を時効取得できるでしょうか?
 結論。Bも通行地役権を時効取得できます。
 Bは甲土地に居住していないのに?
 地役権は、人ではなく、土地に付着します。ですので、Aが時効取得した通行地役権は、Aではなく甲土地に付着します。言い方を変えると、Aが時効取得した通行地役権は、甲土地に発生します。甲土地自体に権利が発生したのだから、甲土地の共有者の1人であるBにもその効果は当然に及びます。Bが甲土地に居住しているかしていないか関係ありません。したがって、Aが時効取得した通行地役権を、Bも当然に時効取得するということです。

地役権の不可分性

 地役権は土地自体に発生するものであり、他の共有者が時効取得した地役権は、他の共有者も当然に時効取得します。これを、地役権の不可分性といいます。不可分とは、分割することができないという意味です。
 また、地役権の不可分性は、共有者の時効取得以外のケースにも表れます。それは共有者の1人がその持分を放棄するケースです。どういうことかといいますと、AとBが甲土地を共有していて、甲土地が地役権の要役地だった場合に、Bがその持分を放棄しても、甲土地全体の地役権には何の影響もありません。なぜなら、地役権には不可分性があるからです。つまり、地役権は持分ごとに分割できないので、共有者の1人がその持分を放棄しても、放棄された持分の分だけ地役権が消滅することはないのです。共有者が1人でも持分を持ち続けている限り、土地全体の地役権は生き残ります。したがって、Bがその持分を放棄しても、Aが甲土地の持分を持っていれば、甲土地全体の地役権は残存するのです。
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地役権の登記

 地役権とは、自分の土地の便益のために他人の土地(隣地)を利用する権利です。例えば、自分の土地から公道に出るために他人の土地(隣地)を通る必要があるとき、他人の土地に通行地役権を設定します(地役権についてはこちらの記事もご参照下さい)。このときの、自分の土地を要役地、他人の土地を承役地といい、自分が地役権者、他人が地役権設定者となります。

自分→地役権者    他人→地役権設定者
自分の土地→要役地  他人の土地(隣地)→承役地

 そして地役権は、その登記をすることにより対抗力を持ちます。
 地役権を対抗するときって?
 例えばこのような場合です。

事例
Aは、自己所有の甲土地上にある自宅から公道に出るために、隣地のB所有の乙土地を通る必要があり、B所有の乙土地に通行地役権を設定し、その旨の登記をした。その後、BはCに乙土地を譲渡しその旨の登記をした。


 このようなケースで、Aが乙土地(承役地)の譲受人Cに対して地役権を主張するような場合です。このとき、Aは登記をしているからこそ、乙土地を堂々と通行することができます。たとえCから文句を言われても、Aは「地役権の登記がある!」と法的に正当な主張ができます。地役権の登記があるということは、Bから地役権の登記をされた乙土地を譲渡されたCは、地役権設定者という地位譲り受けることになるのです。したがって、Cは乙土地を、Aの通行のために利用される義務があるのです。逆に、地役権の登記がない場合、Aはこのような主張ができません。これが、地役権は登記をすることにより対抗力を持つ、ということの意味です。

登記のない地役権も対抗できる場合がある

 判例では、次の2つの要件を満たした場合においては、地役権者(事例でのA)は地役権の登記がなくとも、承役地の譲受人(事例でのC)にその地役権を対抗できるとしています。
1・譲渡のときに、承役地が要役地の所有者により継続的に通路として使用されていたことが客観的に明らかであること
→例えば、事例のA(地役権者)が、乙土地を通路として使用していることが客観的に見て明らかであること、という意味。
2・譲受人がそのことを認識していたがまたは認識することができたこと
→例えば、事例のCが、乙土地が甲土地の通行のために使用されていたことを認識していたか、少し調べれば認識できたであろう、という意味(善意・無過失とほぼ同義)。
 上記2点は、要するに「承役地の譲受人は、その土地に、客観的に見て明らかにわかるような地役権が付いていることぐらい自分で確認しとけ!」ということです。
 従いまして、もし事例のAが地役権の登記をしていなかったとしても、上記2点の要件を満たした場合、Aはその地役権をCに対抗できます。Cは乙土地に地役権が付いていることぐらいちゃんと確認しとけ!ということです。

補足・地役権の放棄

 地役権設定者(通行などで利用される側)は、地役権の設定契約により、地役権行使のための工作物の設置やその修繕義務を負うことがあります(その旨の登記が必要)。つまり、通行地役権の場合、地役権設定者は、自分の土地を通行のために利用されるだけでなく、そのための設備を設置する義務を負うこともあるのです。これは地役権設定者にとっては中々酷なことですよね。そこで、民法287条では、承役地の所有者(利用される側の土地の所有者)が、いつでも、地役権に必要な土地の部分を放棄して地役権者(通行などで利用する側)に移転し、この義務を免れることができるとしています。これを地役権の放棄といいます。
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地役権とその性質

 土地を利用するための物権といえば所有権ですが、それ以外にも、民法では土地を利用するための物権を規定しています。それは地上権、永小作権、地役権、入会権です。そしてこれらの権利を用益権といいます(宅建などの資格試験で出題される用益権は地上権と地役権になります)。
 今回は、これら用益権の中の地役権について、ご説明して参ります。

地役権とは

 地役権とは、自分の土地を利用するために他人の土地を利用する権利です。このとき、自分の土地のことを要役地、他人の土地のことを承役地といいます。読み方は「ようえきち」「しょうえきち」です。
 この地役権は物権であり、登記をすることで、第三者への対抗力を持ちます。
 う~んなんか今ひとつよくわからん
 この説明だけだと分かりづらいですよね。もう少し具体的にご説明いたしましょう。
 例えば、Aが自宅から公道に出るために、Bの土地を通る必要があるときに、AB間の契約で、Bの土地に通行地役権を設定します。つまり、AがBの土地を通行のために利用する権利が地役権です。そして、このときのAの土地要役地Bの土地承役地となります。また、要役地の者(Bの土地を利用するA)を地役権者、承役地の者(Aの通行のために土地を利用されるB)を地役権設定者といいます。
 尚、地役権は通行地役権だけではありません。例えば、Aが眺めの良い別荘を建てていて、すぐ隣のB所有の土地に建築物が建ってしまうと、その別荘の眺望が損なわれて困ってしまうような場合、AはBの土地(承役地)に「高さ〇〇メートル以上の建物を建ててはいけない」という地役権を設定します。これを眺望地役権といいます。このような地役権も存在します。

地役権の性質

 地役権は、所有権などの他の物権とは違う性質があります。というのは、地役権は、人に付着した権利というより、土地に付着した権利という性質が強いのです。
 土地に付着した権利という性質とは、例えば、A所有の甲土地とB所有の乙土地が隣地で、Aが甲土地にある自宅から公道に出るまでに乙土地を通行する必要があるとき、通行地役権を設定することができますが、これは「Aのため」ではなく、あくまで「甲土地の便益のため」です。ですので、Aが生物学者に憧れていて、昆虫採集をライフワークにしているからといっても、そのための地役権を乙土地に設定することはできません。なぜならそれは「Aのため」であって「甲土地の便益のため」ではないからです。
 また、地役権は、それのみを譲渡することはできません。なぜなら、地役権は土地に付着しているからです。したがって、Aが甲土地の地役権のみをCに譲渡することはできません。なぜなら、甲土地の地役権は、所有者であるAではなく、甲土地に付着しているからです。これも、地役権が土地に付着した権利という性質の所以です。

地役権の付従性

 地役権には付従性があります。付従性とは「付いて従っていく」という性質のことです。例えば、A所有の甲土地の所有権がCに移転すると、それにくっ付いて地役権もCに移転します。すると、Cは甲土地の所有者となるのと同時に(甲土地という要役地のための)地役権者にもなります。
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根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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