転貸借(サブリース) 賃貸人は転借人に直接家賃請求できる?

事例
AはB所有の甲建物を賃借している。その後、Aは、Bの承諾を得て、Cに甲建物を転貸した。


 これは、賃借人Aが、賃貸人(オーナー)Bの承諾を得て、適法に甲建物をCに転貸(また貸し)した、というケースです。このケースで、甲建物の賃貸借契約を結んでいるのはAとBです。CはAと転貸借契約を結んでいます。そして、このような場合のCを「転借人」と呼びます。Aは「転貸人」になります。つまり、各自の立場を示すとこうなります。

 賃貸人    転貸人     転借人
  B      A       C
所有・貸す→借りる・貸す →借りる・使用
     ↑       ↑
   賃貸借契約   転貸借契約

 このようになります。少しややこしく感じるかもしれませんが、まずはここを押さえて下さい。
 甲建物の家賃は?
 転貸人Aは、転借人Cに対し、家賃を請求できます。つまり、転借人Cは転貸人Bに家賃を支払うことになります。そして、賃貸人Bは、転貸人Aに対し家賃を請求し、転貸人Aは賃貸人Bに家賃を支払います(ここは転貸前と変わりません)。
 さて、ではこの事例で、賃貸人Bは、転借人Cに対して、直接、家賃を請求できるでしょうか?
 結論。賃貸人Bは、転貸借Cに対して直接、家賃を請求できます

(転貸の効果)
民法613条
賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人に対して直接に義務を負う。この場合においては、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない。

 本来なら、賃貸人Bと転借人Cは契約関係ではないので、BC間に権利義務関係も発生しないのですが、上記の民法613条により「転借人は賃貸人に対して直接に義務を負う」として、賃貸人Bは転借人Cに対して、直接に家賃を請求できることになります。
 尚、賃貸人Bが転借人Cに直接に家賃を請求しても、賃貸人Bと転貸人Aの賃貸借契約には何の影響もありません。従いまして、従来どおり、賃貸人Bは転貸人Aに家賃を請求できます。

補足1・サブリース
 ちなみに、巷で「サブリース」と言われているのは、この転貸のことです。そしてサブリースでよくあるのが、事業者がマンションやアパートを一棟まるごと借りて、一室ずつ個人の客に賃貸する、というパターンです。つまりそれは、そのマンションやアパートのオーナーから事業者が一棟まるごと賃借して、個人の客に転貸しているということです。したがって、その場合に「賃貸借契約」を結んでいるのは、オーナーとサブリース事業者です。サブリース事業者と客が結ぶ契約「転貸借契約」になります。そして、客はサブリース事業者に家賃を払い、サブリース事業者はオーナーに家賃を払います。

補足2・オーナー向けのサブリース提案
 よく、マンションやアパートの経営者(オーナー)向けのサブリースの提案がありますよね。これは一体どういうことなのかといいますと、要するに、サブリース事業者がオーナー所有のマンションやアパートを賃借して、一定の家賃収入をオーナーに保証した上で(たとえ空室が生じても、サブリース事業者からオーナーへ、約束した一定の家賃が支払われるということ)客に転貸することにより、オーナーは空室による家賃収入減少のリスクを回避することができる、というわけです。これだけ聞くと、オーナーにとって良いことづくめのように思われますよね。しかし、実はこれにも落とし穴があります。その詳細についてここでは申しませんが、とりあえず頭に入れておいて頂きたいのは「オーナー向けのサブリース提案にもリスクがある」ということです。この問題につきましては、また機会を改めてお話できればと存じます。
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転貸借(サブリース) 賃貸人から転借人に直接家賃請求するときの注意点

事例
AはB所有の甲建物を賃借している。その後、Aは、Bの承諾を得て、Cに甲建物を転貸した。


 これは、賃借人Aが、Cに転貸(いわゆるサブリース)した、というケースです。このケースで、甲建物の賃貸借契約を結んでいるのはAB間で、CA間転貸借契約を結んでいます。そして、このような場合、Aは「転貸人」になり、Cは「転借人」となります。

 賃貸人    転貸人     転借人
  B      A       C
所有・貸す→借りる・貸す →借りる・使用
     ↑       ↑
   賃貸借契約   転貸借契約

 転借人Cは転貸人Aに家賃を払い、転貸人Aは賃貸人Bに家賃を払います。これが基本ですが、民法613条の規定により、転借人は賃貸人に直接の義務を負うので、賃貸人Bから転借人Cに対して、直接に家賃を請求することもできます(つまりサブリースの場合、サブリース会社をすっ飛ばしてオーナーから直接、入居中の人へ家賃を請求することもできるということ)。

(転貸の効果)
民法613条
賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人に対して直接に義務を負う。この場合においては、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない。

 ただ、ここで注意点があります。上記の民法613条の規定により、賃貸人が転借人に対して直接、家賃を請求する場合、請求できる家賃は、賃貸借契約で定められた賃料と転貸借契約で定められた賃料の、低い方の家賃です。どういうことかといいますと、例えば、冒頭の事例で、賃貸人Bと転貸人Aの賃貸借契約で定められたBA間の家賃が10万円で、転貸人Aと転借人Cの転貸借契約で定められた家賃が8万円だとしましょう。この場合に、賃貸人Bから転借人Cに直接、家賃を請求するとき請求できる金額は8万円まで、になります。なぜなら、転借人Cの負っている賃料債務は8万円だからです。転借人Cが負っている賃料債務を超えた金額を請求することはできません。また、賃貸人Bと転貸人Aの賃貸借契約で定められたBA間の家賃が8万円で、転貸人Aと転借人Cの転貸借契約で定められた家賃が10万円だとしましょう。この場合も、賃貸人Bから転借人Cに直接、家賃を請求するとき請求できる金額は8万円まで、になります。なぜなら、賃貸人Bが持っている賃料債権の金額が8万円だからです。賃料債権を超えた金額を請求することはできません。
 つまり、民法613条の規定により、賃貸人から転借人に直接に家賃を請求する場合でも、債務者(転借人)の賃料債務を超えた金額を請求することはできず、また、債権者(賃貸人)の賃料債権を超えた金額を請求することもできない、ということです。ですので、結果的に、賃貸借契約で定められた家賃と転貸借契約で定められた家賃の低い方しか請求できない、となるのです。

転借人は賃貸人と転貸人、ダブルに家賃支払い義務を負うのか

 もちろん、転借人はダブルの支払い義務を負うわけではありません。もし、すでに転貸人に家賃を支払っているのに、賃貸人から家賃を請求されたら「すでに支払い済みです」と主張すればいいのです。しかし、民法613条には気になる一文があります。それは「賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない」というところです。これはどういうことかといいますと、例えば、転貸借契約の家賃の支払い期日が月末だったとして、転借人は20日に家賃を支払っていたとします。その場合に、賃貸人から転借人に家賃の支払い請求があったときは、転借人は「すでに支払い済みです」と拒むことができない、ということです。ではこのようなときに、転借人はどうすればいいかといいますと、一旦、賃貸人に対して家賃を支払った上で、転貸人に対し、支払い済みの家賃の返還請求をすることになります。
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転貸借 建物の修繕の請求は誰に?

事例
AはB所有の甲建物を賃借している。その後、Aは、Bの承諾を得て、Cに甲建物を転貸した。


 この事例で、甲建物の賃貸借契約を結んでいるのはAとBです。CはAと転貸借契約を結んでいます。そして、このような場合のCを「転借人」と呼びます。Aは「転貸人」になります。

 賃貸人    転貸人     転借人
  B      A       C
所有・貸す→借りる・貸す →借りる・使用
     ↑       ↑
   賃貸借契約   転貸借契約

 家賃については、転貸人Aは賃貸人Bに支払い、転借人Cは転貸人Bに支払います。また民法613条の規定により、賃貸人Bから直接、転借人Cに家賃を請求することもできます(詳しくは前回の記事をご参照下さい)。
 さて、ではこの事例で、甲建物に水漏れが生じた場合に、転借人Cは、賃貸人Bに対して、甲建物の修繕を請求できるでしょうか?
 結論。転借人Cは賃貸人Bに対して、甲建物の修繕の請求はできません。なぜなら、賃貸人Bと転借人Cは、契約関係にないからです。転借人Cと契約関係にあるのは、転貸借契約を結んでいる転貸人Aです。賃貸人Bと契約関係にあるのは、あくまで、賃貸借契約を結んでいる転貸人Aです。
 じゃあ転借人Cは誰に修繕の請求をすればいいの?
 転借人Cが甲建物の修繕を請求する相手は、転貸人Aになります。転貸人Aは、転借人Cと転貸借契約を結んでいる以上、転借人Cに対して家賃を請求する権利を持つと同時に、甲建物を使用収益させる義務も負います。従いまして、転借人Cは、転貸人Aに対して、甲建物の修繕を請求する権利があるのです。

転借人に修繕を請求された転貸人

 では、転借人Cから甲建物の修繕を請求された転貸人Aは、自らその修繕を行わなければならないのでしょうか?
 この場合、転貸人Aは、賃貸人Bに修繕を請求することになります。実際は、転借人Cから修繕を要求する連絡を受けた転貸人Aが、甲建物の管理会社に修繕を要求する連絡をする、という流れになると思われます。ただ、賃貸人(オーナー)が、賃借人に、転貸の承諾を与える際に、このような場合はこのように、という内容を転貸借契約に反映させることで、このあたりの流れはケースバイケースになると考えられます。

 基本的に、賃貸借契約と転貸借契約は別個に存在している、と考えるので、賃貸人と転借人の間には、権利義務関係はありません。不法行為等でもない限り、契約関係にない者同士に、債権債務関係は生じませんよね。未婚の者同士が浮気をしても、不倫関係にはなりませんよね(?)。スミマセン。例えが意味不明ですね(笑)。話を戻します。ということなので、むしろ「転借人は賃貸人に対して直接に義務を負う」として、賃貸人から転借人に直接、家賃を請求できる、という民法613条の規定による請求の方が、特殊だと考えた方が分かりやすいのかな、と思います。
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サイト運営者

根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
根本総合行政書士です。
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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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