停止条件と解除条件 そして随意条件

 民法における条件には2種類あります。それは停止条件解除条件です。停止条件は、条件が成就されるとその効力が生じるもので、解除条件は、条件が成就されるとその効力が失われるものです。
 これだけだとよくわからないですよね。それではひとつひとつ、詳しくご説明して参ります。

停止条件
 条件が成就されるとその効力が生じるという停止条件とは、例えば、「内定が決まったらお祝い金をあげる」というようなものです。この場合「内定が決まること」が条件で、その条件が成就されると、つまり、内定が決まると「お祝い金をあげる」という効力が生じる、つまり、実際にお祝い金の贈与という行為が行われるということです。

解除条件
 条件が成就されるとその効力が失われる解除条件とは、例えば、「就職が決まったら仕送りをやめる」というようなものです。この場合「就職すること」が条件で、その条件が成就されると「仕送り」の効力が失われる、つまり、仕送りがされなくなるということです。

条件を付けることが禁止される行為

 次のような行為は条件を付けることを禁止されます。

・身分行為
・不法行為
・単独行為

 まず身分行為からですが、これは例えば、「一部上場企業に就職したら、結婚して ア・ゲ・ル♡」というようなものです。このような条件は無効になります。
 次に不法行為ですが、これはわかりますよね。「宅建試験に合格したら大麻をあげる」というようなものは、公序良俗違反で当然に無効です。また「金〇円をくれたら妨害行為をやめよう」というような、不法行為をやめること条件とすることもダメです。ただし、自動車保険の「交通事故(不法行為)を起こしたら保険金を払います」というものは有効です。
 そして3番目の単独行為ですが、相殺・解除・取消し・追認などといったものです。これらは一般論として、条件に親しまない行為とされているものです。ただし、相殺は条文上では明確に禁止されているものの「相手方を特に不利な立場にするもの」でなければ、条件を付すことができます。解除も「本書状到達から五日以内に金〇円の支払いがなければ、あらためて解除の意思表示を要せず契約は解除されたものとみなす」というようなアプローチの催告書などの形で条件を付すことは、現実の実務において当たり前に行われています。
 また「債務の免除」も単独行為なのですが、これにも条件を付すことは可能です。

随意条件

 冒頭に、条件には停止条件と解除条件の2種類あると申し上げましたが、その2種類の条件の中に、さらに随意条件と呼ばれるものがあります。随意条件とは、例えば、「気が向いたら車を買ってあげる」というようなものです。つまり、「気が向いたら」という部分が随意条件ということです。この「気が向いたら車を買ってあげる」というのは、随意条件の停止条件ということになるのですが、このような債務者の意思のみに係る停止条件民法134条の規定により無効です。債務者の意思のみに係る停止条件とは、「気が向いたら支払う(あげる)」というものです。そのような条件は無効になります。
 尚、下記の随意条件は有効です。

・債務者の意思のみに係る解除条件
例→気が向いたら仕送りするのをやめる
・債権者の意思のみに係る停止条件
例→気が向いたらその仕送りを受け取る
・債権者の意思のみに係る解除条件
例→気が向いたら仕送りしてもらうのをやめる

補足・条件成就の効果の発生時期
 停止条件が成就された場合、その成就の時から、その効力を生じます。
(例・内定が決まった時→お祝い金贈与の効力発生)
 解除条件が成就された場合は、その成就の時から、その効力が失われます。
(例・就職が決まった時→仕送り中止の効力発生)
 ただし、当事者が条件成就の効果を、条件成就以前に遡らせる意思表示をした場合には、条件成就の効果を成就以前に遡らせて生じさせることができます。
(例・就職が決まる→就職決定以前半年間分の仕送りも無しに(半年分の仕送り返還))
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既成条件 不能条件 条件成就の妨害など条件に関する補足

 条件が成就されると効力が生じる停止条件
例→内定が決まったらお祝い金をあげる
 条件が成就されると効力が失われる解除条件
例→就職したら仕送りするのをやめる
 ここまでは前回の記事でご説明したとおりです。
 さて、では条件を付した時、すでに条件が成就されていた場合はどうなるのでしょうか?

(既成条件)
民法131条
条件が法律行為の時に既に成就していた場合において、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無条件とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無効とする。

 これはどういうことかといいますと、「内定が決まったらお祝い金をあげる」という停止条件の場合、すでに内定をもらっていたら(すでに条件が成就されていたら)無条件でお祝い金をあげることになる、ということです。また「就職したら仕送りするのをやめる」という解除条件の場合に、すでに就職していたら、その解除条件は無効になるということです。
以上が既成条件です。

 さて、続いては不能条件です。不能条件とは、条件を付したはいいが、その条件の成就があり得ないような場合です。

(不能条件)
133条
1項 不能の停止条件を付した法律行為は、無効とする。
2項 不能の解除条件を付した法律行為は、無条件とする。

 1項の停止条件の方は簡単ですね。停止条件の場合、成就することがあり得ないような条件を付した場合は、その停止条件は無効になるということです。例えば、「分身の術を使えるようになったら100万円あげる」というような停止条件は無効ということです。
 2項の解除条件の方はというと、成就することがあり得ない解除条件の場合は、無条件になるということです。例えば、「ゾンビになったら仕送りをするのをやめる」というあり得ない解除条件の場合、無条件で仕送りが続いていくということです。
 以上が不能条件です。

条件の成就の妨害

 例えば、「Aが試合に勝ったら10万円あげる」という停止条件を付したBが、いざ試合が始まったらお金が惜しくなって、故意に試合を妨害して、Aを負けさせたような場合はどうなるのでしょうか?

(条件の成就の妨害)
民法130条
条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは、相手方は、その条件が成就したものとみなすことができる。

 これはつまり、先ほど挙げた例でご説明いたしますと、故意に試合を妨害されて負けてしまったAは、Bに対し10万円の請求ができるということです。なぜなら、故意に成就を妨害された条件(故意に妨害されて負けてしまった試合)は、成就されたものとみなすことができる(試合に勝ったとみなすことができる)からです。
 また、条文には書いていませんが、条件成就によって利益を受ける者が、故意に条件を成就させた場合は、条件は成就されなかったとみなすことができます(判例)。先ほどの例でいいますと、Aが故意に八百長を促して試合に勝った場合、Bは10万円をあげる必要はありません。なぜなら、故意に成就させた条件(八百長で勝った試合)は、不成就であるとみなすことができる(試合に負けたとみなすことができる)からです。
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不動産の中抜きは条件成就の妨害?

 条件の成就を故意に妨害するとその条件は成就されたものとみなすことができる、ということは前回の記事でも記しました。そして今回は、条件成就の妨害について、現実で起こりがちな不動産に絡んだ事例で、ご説明して参りたいと思います。

事例1
Aは自己所有の甲建物を売却したいと考え、不動産業者Bに仲介を依頼し、契約成立を条件として甲建物の売却代金の3%の報酬を支払うという旨の契約をした。不動産業者Bは買主Cを見つけ、あと一歩で契約という所までこじつけたが、ここに来てBに報酬を払いたくないと思ったAは、不動産業者Bをすっ飛ばして買主Cと直接に甲建物の売買契約を締結した。


 この事例1は「甲建物の売却」という条件成就されると「売却代金の3%の報酬」が発生するという停止条件が、Aの故意でその成就が妨害(Bをすっ飛ばしてCと直接契約)されたという、条件成就の妨害の一種です。そしてこれは、不動産業界で「中抜き」と言われる、不動産業者が非常に嫌がるケースです。
 さて、ではこの事例1の不動産業者Bは、Aに対し約定の報酬を請求することができるでしょうか?
 結論。不動産業者BはAに対し約定の報酬を請求できます(判例)。

事例2
Aは部屋を借りたいと考え、不動産業者Bを通して甲アパートを内見し申し込みを入れた。ところが、甲賃貸アパートは不動産業者Cが所有する物件で、それを知ったAはBに仲介手数料を払うのはもったいないと思い、申し込みをキャンセルして、Cと直接に甲アパートの賃貸借契約を締結した。

 この事例2も「Aの不動産賃借の仲介」という条件成就されると「仲介手数料」が発生するという停止条件が、Aの故意でその条件の成就が妨害>(Bをすっ飛ばしてCと直接契約)されたという条件成就妨害の一種です。そしてこれも、いわゆる「中抜き」と言われる、不動産業者が非常に嫌がるケースです。
 さて、この場合、不動産業者BはAに対し仲介手数料の請求ができるでしょうか?
 結論。不動産業者BはAに対し仲介手数料の請求ができます。
 このケースのような、不動産業界ではご法度とされる「中抜き」を知らないでやってしまって、後から、すっ飛ばしたはずの不動産業者から仲介手数料を請求されてビックリしてしまった、という方はいらっしゃると思います。しかし、このような請求は民法130条(条件の成就の妨害)に基づいた正当な請求になりますので、覚えておいて頂きたいと存じます。
 でも、別にAは不動産業者Bとは何か契約を結んだ訳じゃないのにどうして?
 実はそうでもないんです。Aは不動産業者Bとは媒介契約※を結んだことになってしまっているのです。しかも、たとえ媒介契約書といったものを交わしていなくても、不動産業者Bを通して申し込みを入れている時点で、媒介契約を結んだと考えられてしまいます。
※媒介契約とは、民法的に言えば準委任契約になる。つまり、Aは不動産業者Bと停止条件の付いた準委任契約を結んだことになるのだ。

 というわけで、以上になります。今回取り扱った、いわゆる不動産の中抜きのケースは、現実に起こりがちなケースだと思います。余計なトラブルを避けるためにも、今回の内容を是非頭に入れておいて頂ければと存じます。
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サイト運営者

根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
根本総合行政書士です。
宜しくお願いします。

保有資格:
行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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