代理の基本 代理の3要素

 今回は代理についてです。ちなみに、制限行為能力者の話などで出てくる法定代理人は、代理の一種です。
 代理の制度は、法的三面関係を生み出すといわれ、相手方を含めて登場人物が最低3人は登場します。ゆえに、慣れないうちはややこしく感じるかと思いますが、私なりに、じっくりとわかりやすく解説して参りたいと存じます。
 まずは、代理に関する民法の条文を見てみましょう。

(代理行為の要件及び効果)
民法99条
1項 代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。
2項 前項の規定は、第三者が代理人に対してした意思表示について準用する。

 上記の条文で、大事なポイントが3つあります。そのポイントをひとつひとつ見ていきます。

1・代理人がその権限内において
 権限というのは、権利の限界ということですよね。つまり、「代理人がその権限」ということは、法律的に、代理人には代理人としての権利、すなわち代理権が存在するということを意味します。そして、「その権限内」ということは、代理権の範囲内という意味です。これは例えば、ギタリストのAさんがBさんに「YAMAHAのギターを買ってきて」と頼んだとすると、BさんはAさんの代理人になり、Bさんの持つ代理権の範囲は「YAMAHAのギターの購入」になります。ですので、YAMAHAのピアノを購入することはできません。なぜなら、Bさんの持つ代理権の範囲外だからです。また、Aさんが「YAMAHAのギターを買ってきて」と依頼し、Bさんが「OK牧場!」とそれを承諾すると、その時点で委任契約が成立します。
2・本人のためにすることを示して
 これは例えば、Aさんから「YAMAHAのギターを買ってきて」と依頼されたBさんが、楽器屋さんに行って「Aの代理人のBです。Aのために購入します」と示すということです。これを顕名といいます。顕名の仕方は、最も確実なのは委任状を見せることですが、委任状を示さずとも「Aの代理人B」ということが相手にわかれば、顕名があったといえます。
3・意思表示
 2項で書かれていることは、例えば、Aさんから「YAMAHAのギターを買ってきて」と依頼されたBさんが、楽器屋さんから「YAMAHAのギターを売りました」という意思表示を受け取った場合のことです。つまり、代理人と相手方の間で売買契約などの法律行為が行われたということです。

 以上ご説明申し上げた3つのポイント
1・代理権
2・顕名
3・代理人と相手方の法律行為

 これらが代理の3要素、すなわち法律要件になります。法律要件ということは、これらの3要素「代理権・顕名・代理人と相手方の法律行為」が存在して初めて代理が成立するということです。まずはここを押さえておいて下さい。
 そして最後に、もうひとつ重要なポイントがあります。それは条文中の「本人に対して直接にその効力を生ずる」という部分です。これは、先述の3つの法律要件を満たして代理が成立すると、その法律効果は本人に及ぶということです。ということは、Aさんから「YAMAHAのギターを買ってきて」と依頼されたBさんが、楽器屋さんでYAMAHAのギターを購入すると、その法律効果はAさんに及びます。つまり、YAMAHAのギターの購入代金の債務はAに生じるので、楽器屋さんが請求書を書く場合、そのあて先はAになります。そして、購入したYAMAHAのギターの所有権もAさんのものになります。
 このように、本人と代理人の代理関係、代理人と相手方の法律行為、法律行為の効果帰属、という三面関係が、最初に申し上げた「法的三面関係」を生み出すという代理制度の大きな特徴になります。

 という訳で、今回は以上になります。今回ご説明申し上げた内容が、代理という制度の「キホンのキ」になります。ちょっと退屈な内容かと思いますが、まずはここをしっかり押さえておいて下さい。
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代理人が顕名しなかったとき

 代理を構成する要素は次の3つです。
1・顕名
2・代理権
3・代理人と相手方の法律行為

 これをわかりやすく、事例で見てみましょう。

事例1
お金持ちのAは、軽井沢に別荘を買いたいと考えていたが、多忙のため手がつかないので別荘の購入をBに依頼した。そして、BはAの代理人としてC所有の甲建物を購入した。


 この事例1で、代理を構成している3要素は
1・「私はAの代理人Bです」という顕名(通常は委任状を見せる)
2・本人Aを代理して権利を行使する代理人Bの代理権
3.BC間の売買契約
ということになります。
 では、これら代理を構成する3要素のどれかが欠けてしまったときは、どうなるのでしょうか?

顕名がない代理行為

 例えば、事例1で、代理人BがCに対し「私はAの代理人Bです」という顕名をしなかったらどうなるでしょう?普通に考えて、代理人が顕名をしないとなると、相手方は単純に、代理人自身を法律行為の相手方だと思いますよね。そこで民法では、このような場合について、次のように規定しています。

(本人のためにすることを示さない意思表示)
民法100条
代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみなす。

 これは条文を読めばすぐわかりますよね。つまり、顕名をしなかった代理人の法律行為は、代理人が自分自身のためにしたものになってしまうということです。従いまして、事例1で、代理人Bが顕名をしなかった場合、Bは自分自身のために甲建物を購入したとして、BC間の売買契約が成立します。ですので、B自身に代金支払い債務が生じ、Cが甲建物の売買代金を請求する相手はBになります。Bが「そんなつもりはなかった」と言って支払いを拒むと、債務不履行による損害賠償の請求の対象になります。代理人が顕名をしないと大変なことになってしまうということです。
 では、顕名を忘れた代理人Bには、何か救いの道はないのでしょうか?実は、民法100条には続きがあります。

民法100条続き
ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、前条第一項の規定を準用する。

 これはどういうことかといいますと、たとえ代理人Bが顕名をしたかったとしても、相手方のCが「BがAの代理人であることを知っていた悪意)」または「BがAの代理人であることを知ることができた有過失)」ときは、顕名があった場合と同じように扱う、つまり、通常の代理行為として扱うということです。したがって、そのようなケースでは、甲土地の売買代金の請求先はAになります。

 さて、顕名がなかったときにどうなるのかはわかりました。それでは、代理人に代理権がなかった場合はどうなるのでしょう?実は、ここからが代理についての本格的な学習になります。今回はまだ、代理制度のイントロに過ぎません。次回からいよいよ、代理制度のサビ、代理権がなかった場合についての解説に入って参ります。
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無権代理 表見代理の成立要件

事例2
Bは代理権がないのにもかかわらず、お金持ちのAの代理人と称して、軽井沢にあるC所有の別荘の売買契約を締結した。


 この事例2で、Bは代理権がないのに代理行為をしています。これを無権代理といい、Bのような者を無権代理人といいます。
 さて、ではお金持ちのAさんは、無権代理人Bの勝手な行動によって、C所有の別荘を買わなければならないのでしょうか?
 結論。AはC所有の別荘を買わなければならなくなる訳ではありません。なぜなら、Bには代理権がないからです。当たり前の話ですよね。
 え?じゃあ誰が別荘を買うの?B?
 Bが買うことにもなりません。なぜなら、Bは顕名をしているからです。顕名をしていなければ、民法100条のただし書きの規定により、B自身が買わなければなりません。しかし、Bはたとえ偽りであれ「Aの代理人B」ということは示しています。ですので、B自身が買主にはならないのです。
 ん?じゃあどうなるん?
 このままだと、一番困ってしまうのは、代理行為の相手方のCですよね。Bの勝手な行動による被害者とも言えます。そこで!民法では、このような無権代理人の相手方を救う制度を設けています。それが表見代理です。

表見代理とは

 表見代理とは、ある一定の要件を満たしたときに、無権代理行為が通常の代理行為のように成立する制度です。つまり、事例2のCは、ある一定の要件を満たせば、本人Aに対して別荘の売買代金を請求できるのです。
 では「ある一定の要件と」とは何でしょうか。表見代理が成立する要件は2つあります。
1・相手方の善意無過失
2・本人の帰責事由

 それでは、ひとつひとつ見ていきましょう。

1・相手方の善意無過失
 これは、事例2にあてはめますと、Cの善意無過失です。どういうことかといいますと、BがAの代理人だとCが信じたことに過失がない、ということです。例えば、BがAの印鑑証明書まで持ち出してCに見せていたら、何も事情を知らないCは、普通にBがAの代理人だと信じてしまっても仕方がないですよね。したがって、そのような場合のCは善意無過失となります。
 一方、実はBがAの代理人ではないことをCが知っていたり、自らの注意不足が原因で、Aの代理人BということをCが信じてしまっていたような場合、それは善意無過失にはなりません。

2・本人の帰責事由
 これも、事例1にあてはめてご説明します。まず事例1において、本人とはAのことですよね。つまり、Aの帰責事由です。例えば、BがAの印鑑証明書まで持ち出していて、しかもそれが、AがBを信頼して渡していたものだったとしたらどうでしょう。そのような場合、Cにはこんな言い分が成り立ちます。
「一番悪いのは無権代理行為をしたBだ。しかし、そもそもAがBなんかに印鑑証明書を渡していなければ、こんな事も起こらなかったんじゃないか!?」
 これは、法律的に正当な主張になります。「Bに印鑑証明書を渡してしまったAも悪かった」ということです。すなわち、Aに帰責事由アリということです。これが表見代理を成立させる要件の2つめ、本人の帰責事由です。

 以上、2つの要件「相手方の善意無過失」「本人の帰責事由」を満たすと、表見代理が成立します。従いまして、事例2のCは、BがAの代理人であるということについて善意無過失で、かつ本人Aに何らかの帰責事由があった場合は、表見代理が成立し、本人Aに対して別荘の売買代金の請求ができるということです。同時に、本人Aには別荘の売買代金の支払い債務が生じ、無権代理人Bの責任を本人Aが取らなければならなくなります。

 という訳で、今回は以上になります。今回ご説明した内容が、ややこしくなりがちな、表見代理の基本になります。
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サイト運営者

根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
根本総合行政書士です。
宜しくお願いします。

保有資格:
行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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