制限行為能力 成年被後見人

 今回は、制限行為能力者、成年被後見人について解説して参ります。
 民法では、以下の種類の制限行為能力者を定めています。

・未成年者
・成年被後見人
・被保佐人
・被補助人

 上記に当てはまる人は制限行為能力者となります。制限行為能力者にあたる人は、なんと、問答無用で契約を破棄できる取消権を、自動的に付与されます。つまり、法律で特別に保護されているということです。
 なぜそのようにする必要があるのか?
 それは、制限行為能力者は判断能力(意思能力)に問題アリ、と考えられるからです(これはあくまで法律上そのようになっているだけですので余計な思考は働かせないで下さいね)。ですので、制限行為能力者は特別に厚く保護する必要があるのです。したがって、法律において、制限行為能力という制度が定められているのです。
 さて、最初に4種類の制限行為能力者を挙げましたが、未成年者については説明不要ですよね。20未満の人間は法律上、未成年者となります。これは問題ないですよね。では、残り3種類の「成年被後見人・被保佐人・被補助人」とは、一体何なのでしょうか?これら3種類の制限行為能力者は、家庭裁判所の審判を受けることによってなることができるものです。
 という訳で、今回は4種類の制限行為能力者のひとつ、成年被後見人についてご説明して参ります。

成年被後見人

 民法では「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」を、成年被後見人と定めています。これは、いわゆる重度の精神障害の状態にある人のことです。判断能力(法律的には意思能力)としては、かなり厳しいと考えられます。よって、家庭裁判所で成年被後見人の審判を受けた者には、同じく家庭裁判所により選任された成年後見人が、保護者のような形でつきます。
 成年後見人は、法律によって、成年被後見人の代理権が与えられています。そして、この法律によって代理権が与えられる者のことを法定代理人といいます(わかりやすい例だと、未成年者の親権者(通常は親)は法定代理人です)。成年後見人は成年被後見人の代理人として、様々な法律行為が可能です。同時に、判断能力(意思能力)に相当な問題アリの成年被後見人の法律行為には、様々な制限があります。

成年後見人

 さて、それでは成年被後見人の保護者である成年後見人の権利について、詳しく見て参ります。

成年後見人(家庭裁判所に選任された成年被後見人の保護者)が持つ権利
・代理権
・取消権
・追認権

代理権
 成年後見人は、成年被後見人の代理人として(契約を締結したりなどの)法律行為ができる権利(代理権※)が付与されています。
※代理についてはこちらをご覧下さい。
 例えば、成年被後見人の代わりに成年後見人が携帯電話の契約をしてあげる、などです。

取消権
 成年被後見人は判断能力(意思能力)に相当な問題アリです。ですので、万が一、そのような状態の成年被後見人が結んでしまった契約などがあった場合、保護者である成年後見人には、その契約を取り消す権利(取消権)が付与されています。例えば、成年被後見人が、ろくに判断もできないような状態なのに携帯電話の契約を結んでしまったような場合、後から成年後見人がその契約を取り消すことができる、ということです。

追認権
 追認権という言葉は、中々聞き慣れないと思います。追認とは、後から認める、ということです。字のまんまですね(笑)。例えば、成年被後見人が、ろくに判断もできない状態で携帯電話の契約を結んでしまったとき、成年後見人がそれを後から認めることによってその契約は初めて有効なものになります。このような行為を追認といい、成年後見人には成年被後見人の行為を追認できる追認権という権利が付与されています。

成年被後見人自身の権利能力

 すでにお気づきになった方も多いと思いますが、成年被後見人の契約などの法律行為は、成年後見人が追認することによって初めて有効なものになります。ということは、成年被後見人が単独で結んだ契約は、原則、有効なものにはなりません。ただ例外的に、日用品の購入などの生活に関する行為は、成年被後見人が単独で行っても有効になります。つまり、成年被後見人が単独でできる法律行為というのは、日用品の購入程度のものに限るということです。それ以外の法律行為は、後からいくらでも取り消せます。

 以上のような形で、成年被後見人は法律で保護されています。ただ、最初の方にも申し上げましたが、成年被後見人になるには家庭裁判所の審判を受けないといけません。重度の精神障害に陥ったら自動的に成年被後見人となる訳ではありません。本人等が家庭裁判所に請求して「後見開始の審判」を受けて初めて成年被後見人となり、法律(制限行為能力の制度)の保護を受けられるようになります。ですので、現実には、重度の精神障害に陥りながらも成年被後見人ではない人もいます。そのような人は、今回ご説明したような制限行為能力の制度の保護を受けることができません。この点はご注意下さい。

 という訳で今回は以上になります。次回以降、被保佐人、被補助人についてもご説明して参ります。
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制限行為能力 被保佐人

 被保佐人とは「精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者」と民法で定められています。成年被後見人より症状は軽いが、精神障害を抱え判断能力(意思能力)に問題アリとされる制限行為能力者です。ここでまず最初に注意しておいて頂きたいのは、成年被後見人は事理を弁識する能力を欠く常況で、判断能力(意思能力)はほぼ無いような状態なのに対し、被保佐人は事理を弁識する能力が著しく不十分なだけで、判断能力(意思能力)はあるのです。ただ、それが著しく不十分なだけなんです。ですので、被保佐人は、以下の民法13条に規定されている重要な財産行為以外は、単独で法律行為を行うことができます。

(保佐人の同意を要する行為等)
民法13条
被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
一  元本を領収し、又は利用すること。
二  借財又は保証をすること。
三  不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
四  訴訟行為をすること。
五  贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法 (平成十五年法律第百三十八号)第二条第一項 に規定する仲裁合意をいう。)をすること。
六  相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
七  贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
八  新築、改築、増築又は大修繕をすること。
九  第六百二条に定める期間を超える賃貸借をすること。

 被保佐人は、上記の民法13条に定められた法律行為については、保佐人の同意が必要になります。なぜなら、重要な財産行為だからです。重要な財産行為というのは、間違ってしまったらリスクの大きい法律行為ということです。民法13条に列挙された重要な財産行為については、間違えてしまうとリスクが大きいので、被保佐人にはまだある程度の判断能力(意思能力)が残っているとはいえ、保佐人の同意を必要とするという慎重な規定が定められています。

保佐人
 保佐人とは、被保佐人の保護者です。被保佐人も成年被後見人と同様、家庭裁判所の審判を受けることによってなることができます。そして、成年被後見人に成年後見人がつくのと同様、被保佐人にも家庭裁判所によって選任された保佐人がつきます。
 尚、被保佐人は、事理を弁識する能力が著しく不十分な状態になると自動的になる訳ではありません。本人等が家庭裁判所に請求して「保佐開始の審判」を受けて初めて被保佐人になることができます。その上で、保佐人が選任されます。この点は、成年被後見人・成年後見人の場合と同様にご注意下さい。そして、保佐人が持つ権利は以下になります。

保佐人(被保佐人の保護者)が持つ権利
・同意権
・取消権
・追認権

 成年後見人との違いとしては、保佐人には代理権が無く、同意権があります。同意権というのは、事前のOKサインです。例えば、被保佐人が、民法13条に当てはまる不動産の売買契約を結ぼうとするとき、保佐人がその内容をチェックして「これならOK」と同意したら、被保佐人は、その不動産の売買契約を正式に結べるということです。追認権事後に認めるのに対し、同意権事前に認める権利です。
 尚、保佐人の同意を得なければならない行為(民法13条に規定された行為)について、被保佐人の利益を害するおそれがないのもかかわらず保佐人が同意をしないときは、被保佐人の請求により、家庭裁判所保佐人の同意に代わる許可を与えることができます。例えば、被保佐人が民法13条に規定されたものに当てはまる法律行為を行おうとしたとき、その法律行為をしても、被保佐人にとって何も悪いことがないのはわかっているのにもかかわらず保佐人が同意をしないとなると、被保佐人は困ってしまいますよね。そういうとき、被保佐人は、家庭裁判所に請求して問題ナシと判断されれば、保佐人の同意と同じ効力を持つ家庭裁判所の許可を受けることができ、それにより、民法13条に当てはまる法律行為を行うことができます。
 このように、成年後見人と保佐人の持つ権利には違いがあります。この違いはしっかり覚えておいて下さい。
 尚、取消権と追認権に関してはこちらの記事をご参照下さい。

被保佐人自身の権利
 被保佐人は、民法13条に規定された重要な財産行為以外のものであれば、単独で法律行為を行うことができます。先述のとおりです。

 という訳で、今回は以上になります。次回、被補助人についてご説明して参ります。
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制限行為能力 被補助人

 被補助人とは「精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者」と民法で定められています。被保佐人の定義から「著しく」の文字が抜けています。つまり、被保佐人より症状が軽い精神上の障害を抱えた状態にあるのが被補助人です。被補助人も、成年被後見人や被保佐人と同様、本人等の請求により家庭裁判所の審判を受けることで初めてなるものです。

 被補助人には、成年被後見人や被保佐人と決定的に違うところがあります。成年被後見人・被保佐人は、例えば、本人以外の者が家庭裁判所に請求して「後見開始の審判」「保佐開始の審判」を受けると、対象となった人間(本人)は成年被後見人・被保佐人となります。しかし、被補助人の場合は、本人以外が家庭裁判所に請求するときは、本人の同意が必要です。例えば、あるおじいちゃんの家族が「おじいちゃん、補助開始の審判を申し立てた方がいいんじゃない?」と言って家庭裁判所に請求しても、おじいちゃん本人が「そんなことするな!ワシは十分マトモじゃ!」と言えば、家庭裁判所の審判そのものが出ません。なぜ、被補助人だけそのようになっているかといいますと、被補助人は、ほとんどマトモだからです。ほとんどマトモな状態の人が、本人以外の請求で制限行為能力者の仲間入りにされてしまうと、その人の尊厳を傷つけかねません。よって、被補助人については本人の意思というものを尊重して、本人以外の者が家庭裁判所に請求するときには、本人の同意を必要としているのです。

 被補助人は、家庭裁判所の「補助開始の審判」を受けることでなることができます。そして、補助開始の審判の場合は、次のいずれかの審判とともにしなければなりません。

・民法13条1項各号※のうち、どれを補助人の同意を要する事項とするかの審判
・特定の法律行為には補助人に代理権を付与する旨の審判

※民法13条の規定についてはこちらの記事をご参照下さい。

 補助開始の審判のときだけは、上記二つの審判のいずれかと一緒にしなければなりません。この点は、後見開始の審判・保佐開始の審判と違うところです。
 そして被補助人には、家庭裁判所で選任された補助人が保護者としてつきます。しかし、被補助人は基本マトモです。ですので、被補助人の場合は、民法13条で規定された被保佐人が保佐人の同意を要する法律行為(重要な財産行為)の中から、どれを補助人の同意を要するものとするかを決めることができます。それが先述の「民法13条1項各号のうち、どれを補助人の同意を要する事項とするかの審判」です。このとき、民法13条に規定された法律行為の全てについて補助人の同意を要しない、とすることもできます。つまり、被補助人の場合は、単独で全ての法律行為を可能とすることもできるのです。被補助人の場合は「ほとんど制限のない制限行為能力者」になることもあるということです。

 という訳で、今回は以上になります。
 被補助人には、まだかなりの判断能力(意思能力)が残っています。ですので、成年被後見人・被保佐人とは少し違った感じになっております。この点を意識すると、被補助人について、理解しやすくなると思います。
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根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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