不当利得

 今回のテーマは不当利得です。不当利得とは、法律上の原因なく一方の損失により他方が利得をした場合に、その利益を返還させる制度です。
 んなこといきなり言われてもわけわからんわ!
 ですよね(笑)。というわけで、今からご説明して参ります。
 まずは、不当利得が成立するための4要件を以下に記します。

1・他人の財産または労務による受益(利益を受けること)の存在
2・他人に損害を与えた事実
3・受益と損失の因果関係(一方の損失により一方に受益があるという関係性)
4・法律上の原因がない(契約などの法律上の正当な手段を経ていない)

 それでは不当利得となる事例をご覧下さい。

事例1
AはB所有の甲建物を不法占拠している。


 これは不当利得となるケースです。まず不法占拠というのは、当然ですが、契約などの法律上の原因にあたりません。その不法占拠により、Bは自己所有の甲建物について損失を被っています。と同時に、不法占拠者Aは甲建物の使用という利益を得ていますよね。つまり、Aの利益とBの損失の間には因果関係が認められます。よって、不当利得成立の4要件全てを満たして不当利得が成立し、AはBに対して不当利得返還義務を負い、甲建物を不法占拠して得た利益をBに返還しなければなりません。同時に、BはAに不当利得返還請求ができます。
 不当利得の制度の意味、おわかりになりましたよね。続いて、このような場合も不当利得になります。

事例2
AとBは甲商品の売買契約を締結し、Aは甲商品の代金5万円をBへ支払った。しかしその後、手違いにより甲商品の売買契約は無効になった。


 この事例2では、AB間の甲商品の売買契約が無効になっています。つまり、AB間の甲商品の売買契約は始めから無かったことになります。すると、Aは契約などの法律上の原因なく5万円を損失し、Bは5万円の利益を得ている、ということになり、Aの損失とBの受益の因果関係も確かです。よって不当利得が成立です。Bには不当利得返還義務が生じ、Aに5万円を返さなければなりません。同時に、AはBに対して「5万円返せ!」と不当利得返還請求ができます。
 それでは、続いてはこちらの事例をご覧下さい。

事例3
AはB所有の甲商品を即時取得した。


 この事例3では、Aは即時取得により、代金などを支払うことなくB商品を手に入れています(即時取得に関してはこちらの記事へ)。つまり、Bの損失によりAは利益を得ています。これは一見すると不当利得が成立しそうですが、この事例3は不当利得となるケースではありません。なぜなら、即時取得が成立しているからです。即時取得は法律に定められた規定です。つまり、即時取得が成立しているということは、法律上の原因によりAは甲商品を取得したということなので、事例3は不当利得にはならないのです。ここはご注意下さい。

事例4
A電鉄が新たに地下鉄を敷設したことにより沿線の地主Bはウハウハの大儲けをした。


 この事例4では、何の法律上の原因なく地主Bは利益を得ています。しかし、これは不当利得にはなりません。なぜなら、A電鉄の損失がありません。...まあ、これは法律的に考えるまでもなく、普通に考えて不当利得になりませんよね。こんなことで不当利得が成立してしまったら地主はたまったもんじゃないです。したがって、この事例4は、ただただ地主Bが羨ましいというだけのハナシです(笑)。

 という訳で、今回は不当利得について解説いたしました。不当利得自体は決して難しいものではないと思いますが、注意して頂きたいのは、事例3や事例4のようなケースです。冷静に考えればわかるのに、試験等では焦って勘違いすることもありますので、くれぐれもお気を付け下さい。
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善意・悪意の受益者 現存利益とその範囲

 今回は、不当利得において「不当利得返還義務により返還する利益」についてご説明いたします。
 まずは不当利得に関する条文をご覧下さい。

(不当利得の返還義務)
民法703条
法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
民法704条
悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。

 上記の条文で、不当利得において返還する利益について、2つのケースが規定されています。まず703条では通常の受益者の場合、そして704条では悪意の受益者の場合を定めています。704条で悪意の受益者を定めているということは、703条は善意の受益者の場合と考えられます。
 それではひとつひとつ見ていきましょう。

通常の受益者(善意の受益者)の場合

 民法703条では、善意の受益者の返還すべき利益について「その利益の存する限度において」返還すべきと定めています。この「その利益の存する限度において」とは、現存利益と呼ばれるものになります。つまり、不当利得の善意の受益者は、現存利益を返還しなければなりません。現存利益とは「現に存在する利益」という意味です。といってこれだけだとよくわからないですよね。ですので、事例を交えてご説明いたします。

事例1
AとBは甲商品の売買契約を締結し、Aは甲商品の代金5万円をBへ支払った。しかし手違いがあり甲商品の売買契約は無効になった。


 これは前回も登場した事例です。甲商品の売買契約が無効により無かったことになるので、法律上の原因なくAは5万円を損失し、そのAの損失によってBは5万円の受益がある状態になり、不当利得が成立します。よって、Bは不当利得返還義務を負い、Aに支払いを受けた5万円を返還します。
 ここまでは前回ご説明したとおりです。そして、Bが善意の受益者なのか悪意の受益者なのかによって、返還すべき利益が変わってくる訳ですが、先程申し上げたとおり、善意の受益者の場合は現存利益を返還します。現存利益とは、現に存在する利益のことなので、Bが善意の受益者だとすると、Aから支払いを受けた5万円がまるまる残っていれば、まるまる残っている5万円をAに返還しなければなりません。これは簡単な話ですよね。では、Bがその5万円を使ってしまっていた等の場合どうなるでしょう?実は、それは「どう使ったか」によって変わってきます。

現存利益の範囲

 例えば、Bがその5万円を公共料金や水道光熱費等の経費に充てていたとしましょう。その場合Bは、経費に充てた分も含めて、しっかり5万円全部を返還しなければなりません。家賃や交通費、日常の食費や学費なども同様です。それに使った分も含めて5万円全部をきっちり返還する必要があります。ここまでは難しい話ではありませんよね。しかし、これが例えば、Bがその5万円を遊びで浪費してしまっていたらどうでしょう?この遊び等の浪費を、法律上は少し難しい言い方で「遊興費」と言いますが、なんと遊興費については返還義務はありません。つまり、Bが善意の受益者の場合、Aから支払いを受けた5万円を使って風俗に行っていたら、なんとその風俗に浪費した5万円の返還義務はないのです!これが法律の不思議なところなんです。納得できませんよね。一応、法律上の理屈としてはこうなります。

経費等必要なものなので、それに使った分はその者の利益として存在することになる。したがって、現存利益に含まれる。しかし、遊興費等の浪費必要なものではなく、それに使った分はその者の利益として存在しない。したがって、現存利益に含まない

 うーん、て感じですよね(笑)。しかし、これが法律上の理屈です。納得できない方、たくさんいらっしゃるかと思います。その気持ち、大いに理解できます。しかし!それでもここは「こうなっているんだ」と無理矢理に強引に覚えてしまって下さい。でないと民法の学習が進んでいきません。こんなところで考え込んでしまっては時間がもったいないです。勉強も人生も、たとえ納得できなくても進まなければならないときがあるのです。

現存利益の補足

 例えば、善意の受益者が、受け取ったお金を預金し、利息が発生していたらどうなるでしょう?その場合は、利息分もプラスして受け取った利益を返還しなければなりません。不当利得の受益の金額が1000万円だったとしたら、1000万円+利息分を返還するということです。では、善意の受益者が受け取ったお金が、株式投資などで1000万円から1200万円になっていたらどうでしょう?この場合は、返還すべきは1000万円になります。儲かった分の200万円返還義務の対象になりません。これはどういう理屈かというと、預金で発生した利息は自然に増加した利益なので、返還すべき利益に含まれ、株式投資などで増加した分は特殊な手腕で得た利益なので、返還すべき利益に含まれない、ということです。この理屈は理解できますよね。

悪意の受益者の場合

 悪意の受益者は、受けた利益に利息を付けて返還しなければなりません。例えば、このような場合です。

事例2
悪意の貸金業者Aは利息制限法を超える利息を付してBにお金を貸した。その後、Bは利息を含めなんとか全額を返済した。


 貸金業者Aは、利息制限法を超えて利息を付したものであること知りながら、Bからその全額の返済を受けています。つまりAは、不当だと知りながら利得を受けた悪意の受益者です。よって、悪意の受益者の貸金業者Aには不当利得返還義務が生じ、利息制限法を超えて返済を受けた分の金額利息を付けてBに返還しなければなりません。このようなケースで、BがAに対して「利息制限法を超えて返済した分を返せ!」と主張するのを、過払い金返還請求といいます。過払い金返還請求という言葉はよく聞く言葉ですよね。実は、この過払い金返還請求というのは不当利得返還請求の一種になります(過払い金返還請求についてはこれ以上は触れません。あくまで民法の解説の流れで申し上げた次第です。あしからずご了承下さい)

 という訳で、今回は以上になります。尚、民法704条では、返還しなければならない利益以外にも損害が生じていた場合は、悪意の受益者は、その分の賠償もしなければならないとしています。この点もご注意下さい。
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不法原因給付 愛人契約で動産を贈与?

事例1
A男とB子は愛人契約を結んだ。それにともなってB子は時価総額数百万ドルは下らないジュエリーをA男から贈与され受け取った。その後、二人の関係は冷め、A男はB子との愛人契約の無効を主張して清算しようと考えた。


 さて、今回はいきなり昼ドラのような事例から始まりましたが、この事例1で、A男はB子に対し愛人契約の無効を主張して、ジュエリーの返還請求ができるでしょうか?まずは、A男とB子の愛人契約について考えてみます。
 まず、A男とB子の愛人契約は無効になります。無効になるというより、そもそもハナっから愛人契約は無効です。なぜなら、愛人契約は公序良俗違反だからです。公序良俗というのは、倫理とか道徳とか常識というようなことです。つまり、公序良俗違反とは、倫理や道徳や常識に反する違反ということです。契約というのは、契約自由の原則により、基本は自由ですが、あまりにもいき過ぎた内容のものは公序良俗違反により無効になります。例えば、殺人契約や人身売買契約なんか成立しませんよね?それは法律的な論理でいえば、公序良俗違反により無効ということです。そして、愛人契約も公序良俗違反により無効になります。
 すると事例1で、A男がB子に愛人契約の無効を主張して、ジュエリーの返還請求はできそうな気もしますね。しかし、そうはイカンのです。

(不法原因給付)
民法708条
不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。

 A男からB子への愛人契約によるジュエリーの給付は、上記の条文の「不法な原因のために給付」にあたります。したがって、A男はB子にジュエリーの返還請求はできません。民法708条の理屈を簡単に説明すれば「自分から法を犯したヤツは法で保護されない」ということです。A男はB子と公序良俗違反の愛人契約を結んでいます(法律的に無効の契約なのでそもそも成立しませんが)。そもそも、自分から違反を犯しておいて返還請求という法律的な主張はできないのです。つまり、A男は自業自得ということです。

ジュエリーの所有権は?

 では、A男がB子に贈与したジュエリーの所有権はどうなるかというと、ジュエリーの所有権はB子のものになります。
 え?マジで?
 マジです。もちろん、法律的な理屈としてはAB間の贈与も無効ですので、本来ならジュエリーの所有権はA男に戻るはずです。しかしそうなると、A男の返還請求を認めないことと矛盾してしまいます。そしてもし、A男の返還請求を認めてしまうと、自分から法律に違反したヤツの法律的な主張を認めてしまうことになってしまいます。そうなってしまうと、世の中の秩序がオカシクなってしまいます。ならどういう理屈でBのジュエリーの所有権が認められるかというと、こうなります。
「A男が返還請求できない反射的効果として、B子へのジュエリーの所有権の移転は有効」
 このような論理で、ジュエリーはB子の物になるのです。
 従いまして!もし現在、事例1のようなケースで贈与された物を所持している女性の方は、その物は意地でも自分の手元に置いておいた方が良いかと思います(笑)。もちろん、愛人契約は推奨できませんが。。。
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根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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