注文者の責任

事例1
Aは工務店のBと一軒家の新築請負の契約を締結した。そして、Bはその一軒家の新築工事中の事故で通行人のCに損害を与えた。


 今回のテーマは注文者の責任です。
 上記の事例の注文者Aは、工務店Bが通行人Cに与えた損害の責任を負うのでしょうか?
 結論。注文者Aは、工務店Bが通行人Cに与えた損害の責任を負いません。第三者Cに与えた損害の責任を負うのは工務店Bになります。
 ただし!注文者Aが責任を負うような場合もあります。

(注文者の責任)
民法716条
注文者は、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負わない。ただし、注文又は指図についてその注文者に過失があったときは、この限りでない。

 上記が、注文者の責任に関する民法の条文になります。ただし書き以降の後半部分に、注文者が責任を負う場合についての規定があります。では、どんな場合に注文者が責任を負うのでしょうか?事例で考えていきます。

事例2
Aは工務店のBと一軒家の新築請負の契約を締結した。そして、Bはその一軒家の新築工事中の事故で通行人のCに損害を与えた。尚、Bの工事はAの指図によるものだった。


 このような場合は、注文者のAも責任を負ってしまいます。なぜなら、事故が起きた工事は注文者Aの指図によるものだからです。つまり、指図をした注文者Aに過失があり、それが事故の原因と考えられるからです。

事例3
Aは工務店のBと一軒家の新築請負の契約を締結した。そして、Bはその一軒家の新築工事中の事故で通行人のCに損害を与えた。尚、事故はAの注文した材料が原因となって起きたものだった。


 このような場合も、注文者Aは責任を負ってしまいます。事故の原因となった材料を注文したのがAだからです。つまり、注文者Aの過失により事故が起こったと考えられるからです。

 以上が、注文者の責任についてになります。基本的には、注文者は責任を負いません。しかし、場合によっては注文者が責任を負う場合があります。イメージとしては「注文者が依頼した工事について、注文者自身がやたらにしゃしゃり出ると、注文者が工事の責任を負うことになる」といった感じです(笑)。ですので、皆さんも工事を依頼する際はお気をつけ下さい(笑)。素人のクセに、中途半端な知識でやたらと余計にしゃしゃり出る人っていますよね。そういう人は、その分痛い目を見ることがあるってことです。
(スマホでご覧の場合、次の記事へ進むには画面下左の前の記事をタップして下さい)

土地の工作物の占有者・所有者の責任

事例1
Aは工務店のBと家屋の請負契約を締結し家を建てた。その後、Aは自己所有のその家をCに賃貸した。そしてある日、その家の外壁が崩れ通行人のDが怪我を負った。尚、外壁が崩れた原因は工務店Bの工事の仕方によるものだった。


 登場人物が多くてややこしく感じるかもしれませんが、この事例こそ、今回のテーマである「土地の工作物の占有者・所有者の責任」の典型的なケースになります。
 さて、この事例1で、Dが被った損害の責任を負うのは誰でしょう?
 結論。その第一次的責任はCが負います。
 マジで?
 マジです。なぜなら、Cは原因となった外壁の家の占有者だからです。根拠となる条文はこちらです。

(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)
民法717条
土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。

「工作物」というのは、事例1だと、Cが賃借している家(の外壁)になります。よって、Dの損害の原因となった工作物の占有者のCは、第一次的に責任を負うことになるのです。ただし!占有者Cは責任を免れる方法があります。それが、上記の条文のただし書き以降に記されている「占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない」になります。
 占有者は、土地の工作物(建物など)により他人に与えた損害の賠償責任を負います。しかし、占有者がその損害の発生を防止するために必要な注意をしていれば、占有者は責任を負いません。事例1に当てはめると、占有者Cは、外壁が崩れるのを何らかの方法で防ごうしていれば、Dの損害を賠償する責任を免れます。逆に、外壁にヒビが入っているのにほったらかしていたような場合は、占有者Cは責任を免れることができません。

占有者が責任を免れたら誰が責任を負うのか

 占有者Cが責任を免れたとき、次に責任を負うのは(第二次的責任))家の所有者のAです。この所有者の責任は、なんと無過失責任です。よって、占有者Cが責任を免れたときは、問題の外壁の家の所有者であるAは過失があろうがなかろうが、もはや責任を免れることができません。
 あれ?でも、そもそも外壁が崩れたのは工務店Bが悪いんじゃね?
 そうなんです。ですが、事故の原因となった土地の工作物の所有者Aは、無過失責任を負いますので、Dへの損害賠償からは逃れることはできません。しかし、これだとAがBのミスを肩代わりしたような形ですよね?よって、AはDへ損害を賠償した後、工務店Bに対し求償することができます(求償権についてはこちらの記事もご参照ください)。つまり、所有者Aは工務店Bに対し「Dが被った損害は無過失責任により所有者のオレが賠償した。だがそもそもの事故の原因はBの工事のミスによるものだ。だから肩代わりした損害をオレに賠償しやがれ!」と主張できるということです。

 尚、占有者Cが損害を防止するために必要な注意を怠っていた場合に、CがDへ損害賠償をしたときは、占有者Cは工務店Bへ求償権を行使できます。また、占有者Cが損害の防止に必要な注意をしていた場合に、工務店Bにも過失がなかったときは、所有者Aは無過失責任によりDへの損害賠償を免れられないのはもとより、工務店Bへ求償することもできません。占有者Cにせよ所有者Aにせよ、工務店Bへの求償ができる場合とは、あくまで工務店Bの過失が損害の原因だったときです。念のため申し上げておきます。

求償という仕組みは被害者を救済しやすくしている

 土地の工作物の占有者・所有者の責任においては、まず占有者が第一次的に責任を負い、第二次的責任で所有者が無過失責任を負います。そして、損害の原因がさらに別の者にある場合は、その者に対し、損害を賠償した者は求償することができます。
 ところで、この仕組み、ややこしいですよね。そもそも、事例1でも、Dがいきなり工務店Bに損害賠償を請求すればいいんじゃね!?と思われる方もいらっしゃるかと思います。実際、それも可能です。しかし、それをするためには、Dが工務店Bの過失を立証しなければならなくなります(通常の不法行為責任の追及)。これは専門家でもないかぎり、実際にはかなり難しいことだというのは、現実的に考えればわかると思います。仮に立証できたとしても、それだけで相当な手間とお金もかかってしまうでしょう。それは被害者にとってはあまりに酷です。というようなことから「土地の工作物の占有者・所有者の責任」は、今回ご説明申し上げたような仕組みになっているということです。従いまして、この「土地の工作物の占有者・所有者の責任」の仕組みは、使用者責任と同様に「被害者が救済されやすくなっている」という事を意識すれば、理解がしやすくなるのではないかと思います。
(スマホでご覧の場合、次の記事へ進むには画面下左の前の記事をタップして下さい)

サイト運営者

根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
根本総合行政書士です。
宜しくお願いします。

保有資格:
行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

スポンサーリンク

QRコード

QR

お問い合わせ

名前:
メール:
件名:
本文:

スポンサーリンク