瑕疵担保責任の超基本 修理の請求は×で修理代金の請求は〇?

 今回は瑕疵担保責任についてご説明いたします。読み方は「かしたんぽせきにん」です。瑕疵とは、キズとか欠陥という意味なのですが、瑕疵という字が一般的に馴染みがないのでとっつきづらく感じるかと思います。しかし、契約というものにおいて非常に重要な規定ですので、是非頭に入れておいて頂きたいと存じます。
 それではまずはこちらの事例をご覧下さい。

事例
AはBから中古の自動車を購入した。しかし、購入後すぐに自動車のエンジンが故障した。整備工場で調べるとエンジンにはAB間の売買以前からの欠陥があり、その欠陥が原因となってエンジンが故障したことが判明した。さらにAはこの自動車を事業用に購入していて、この故障が原因で事業上の損害も発生した


 この事例で、Aは何ができるのか?という問題に入る前に、この事例にはいくつかのポイントがありますので、まずはそこを確認しておきます。
ポイント1
 Aが購入した自動車は中古の自動車。これは特定物(新車は不特定物。特定物・不特定物に関してはこちらの記事へ)。つまり、全く同じ物が他に存在しない。
ポイント2
 エンジンにはAB間の売買以前から欠陥がある。つまり、AB間の売買契約前の欠陥ということ(欠陥発生が契約前か後かで法律構成が全く変わってくる)。
ポイント3
 欠陥は相当がっちり調べてみないとわからないような欠陥なので、売主Bには過失がないと思われる。

 上記3つのポイントをまずは押さえて下さい。その上で、こちらの条文をご覧ください。

(特定物の現状による引渡し)
民法483条
債権の目的が特定物の引渡しであるときは、弁済をする者は、その引渡しをすべき時の現状でその物を引き渡さなければならない。
 
 先ほどの3つのポイントを踏まえた上で、上記の条文からわかることは、事例は売主Bの債務不履行の問題ではないということです。どういうことかと申しますと、中古の自動車は特定物なので、民法483条の規定により、引渡し時の現状で引き渡せばいいのです。つまり、引渡し時に欠陥があるなら、それをそのまま引き渡せば債務を履行したことになるのです。よって売主Bは、引渡し時にすでに欠陥のある中古自動車(特定物)をそのままAに引き渡しても債務の履行を果たしたことになり、Bの債務不履行の問題にはなりません。
 じゃあ一体何の問題になるの?
 はい。ここまで引っ張りましたが、これが今回のテーマ「瑕疵担保責任」の問題になるのです。という事で、ここからいよいよ本題に入って参ります。

AはBに自動車の修理を請求できる?
 Bには過失がありません。Bは特定物(中古の自動車)の引渡しを債務の本旨(民法の規定通り)に従い債務を履行しました。よって、Bには自動車を修理する責任・義務はありません。従いまして、AはBに自動車の修理の請求はできません。

じゃあAはBに自動車の修理代金を請求できる?
 請求できます。なぜなら、瑕疵担保責任とは無過失責任だからです。つまり、過失のないBも負わなければならない責任です。修理代金は瑕疵による損害と考えられ、AはBに修理代金(損害)を請求できるのです。前述の内容とこんがらがってしまいそうですが、考え方はこうです。
「売主は契約前から存在する特定物の瑕疵そのものを修理する必要はない。なぜなら特定物引渡しの時の現状で引き渡せばいいから。しかし、瑕疵による損害無過失責任として負わなければならない。したがって、買主は特定物の修理の請求はできないが、瑕疵による損害、つまり修理代金は請求できる
 このようなロジックになりますので、この理論構成を頭に入れておいて下さい。

じゃあ上記のAの権利の行使期間は?
 欠陥の事実を知ってから1年以内です。

 さて、ここまでで、Aは欠陥の事実を知ってから1年以内であれば自動車の修理代金の請求ならできることがわかりました。では、事業上の損害についても請求できるのでしょうか?そして、場合によっては解除もできるのか?次回、その問題についてご説明して参ります。
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瑕疵担保責任 信頼利益と履行利益

事例
AはBから中古の自動車を購入した。しかし、購入後すぐに自動車のエンジンが故障した。整備工場で調べるとエンジンにはAB間の売買以前からの欠陥があり、その欠陥が原因となってエンジンが故障したことが判明した。さらにAはこの自動車を事業用に購入していて、この故障が原因で事業上の損害も発生した


 AはBの瑕疵担保責任により、自動車の修理代金の請求ができます(詳しくは前回の記事へ)。では、自動車の故障によって生じた事業上の損害の賠償請求はできるでしょうか?
 結論。Aは事業上の損害の賠償請求はできません。その理屈を今からご説明いたします。

 Bには過失がありません。しかし、瑕疵担保責任は無過失責任です。瑕疵担保責任は、過失がなくても負わなければなりません。これは法律で定められた責任、法定責任です。ですので、たとえ過失のないBでも問答無用で負わされる責任です。したがって、AはBの瑕疵担保責任により損害、つまり自動車の修理代金の請求ができるのです。ここまでが前回ご説明申し上げた内容ですが、ではなぜ、AはBに事業上の損害の賠償請求はできないのでしょうか?

信頼利益と履行利益

 一般に、損害賠償の範囲の考え方については、次のようなことが言われています。
・信頼利益
 有効でない契約が有効に成立したと誤信したため生じた損害、これを信頼利益という。(例)契約のために目的地に行くためにかかった交通費
・履行利益
 契約が完全に履行された場合に債権者が受ける利益、これを履行利益という。(例)商品の転売の利益

 この説明だけでは、今ひとつピンと来ないかもしれません。事例に当てはめると、中古の自動車の修理代金信頼利益事業上の損害履行利益になります。信頼利益と履行利益については、これから民法の解説を進めていく中で様々な事例とともに登場しますので、その中で掴んでいって頂ければと存じます。
 話を戻しますと、瑕疵担保責任における損害賠償の範囲信頼利益に限ります。この考えを法定責任説といいます。別の見解の学説もありますが、法定責任説は裁判所の見解とも一致しますので、この考え方を頭に入れておいて頂ければと思います。
 まあでも普通に考えて、無過失責任である瑕疵担保責任において、損害賠償の範囲を履行利益まで認めてしまうと、それこそ売主は、中古品の売買なんて怖くてできなくなっちゃいますよね。かといって、過失さえなければ売主は何の責任も負わないとなると、今度は買主が不利になる。そこで、バランスを取って「瑕疵担保責任における損害賠償の範囲は信頼利益に限る」という結論は、妥当かなと思います。

Aは契約の解除はできる?

 買主Aは善意で、かつ隠れた瑕疵(整備工場でやっとみつかった中古自動車の欠陥)のために契約の目的を達することができないとき、契約の解除ができます。この解除権の行使期間は、修理代金の請求と同様、買主Aが欠陥の事実を知った時から1年以内です。

補足
 今回の事例とは直接関係ありませんが、債務不履行による損害賠償の請求の範囲は履行利益まで含みます。債務不履行の場合は、そもそも債務者に過失がありますから、無過失責任である瑕疵担保責任よりも、その責任は当然重くなります。
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危険負担の超基本

事例
売主Aと買主BはA所有の甲建物の売買契約を締結した。しかし、その引渡し前に甲建物は地震によって倒壊した。


 この事例で、AはBから売買代金をもらえるでしょうか?いやいやそれはムリっしょ?という声が聞こえてきそうですが、この問題が、民法上の危険負担というものの話になります。
 尚、不動産は全て特定物です。全く同じ物は世の中に他に存在しません。ここはまず前提として押さえておいて下さい。
 それでは、危険負担について、いくつかのケースに分けて見ていきましょう。

1 AB間の売買契約の前日に甲建物が倒壊していた場合
 この場合は、どんな理由であろうともその契約は無効です。なぜなら、甲建物が売買契約前にすでに倒壊しているということは、すでに売買不能の物を契約したということになります。売買不能の物の売買契約は不可能なので、そのような契約は法律上、当然に無効になります。無効ということは契約そのものが成立しませんので、売買代金もクソもないということです。よって、AはBから売買代金はもらえません。

2 AB間の売買契約当初から甲建物に欠陥があった場合
 これは、売主Aの瑕疵担保責任の話になります。瑕疵担保責任は無過失責任です。売主Aは過失がなくとも負わなければならない責任です。この場合、契約は一旦有効に成立しているので、Aは売買代金はもらえます。しかし、買主Bは売主Aに対し瑕疵担保責任による損害の賠償の請求(信頼利益※に限る)、場合によっては契約の解除も可能になります(瑕疵担保責任について詳しくはこちらの記事をご参照下さい)。

3 売主Aに過失があって甲建物が全壊(滅失)あるいは損傷(一部が壊れる)した場合
 この場合は、売主Aの債務不履行の問題です。ですので、この場合も契約は一旦有効に成立しているので、Aは売買代金をもらえますが、買主Bは売主Aに対し債務不履行による損害賠償の請求(履行利益※も含む)、場合によっては契約の解除が可能になります。
※信頼利益と履行利益についてはこちらの記事をご参照下さい。
 尚、2と3で契約が解除された場合、結局、Aは受け取った売買代金をBに返還しなければなりません(原状回復義務)。

 さて、ここまで3つのケースを見てきました。しかし、これらは危険負担の話ではありません。それでは、危険負担の話になる場合とはどんなときでしょうか?
 危険負担の話となるのは、次のようなケースです。

契約成立後、売主に過失なく建物が滅失または損傷した
 事例に当てはめるとこうです。
AB間の売買契約成立後、売主Aに過失がなく甲建物が全壊または一部が壊れた

 このようなケースが危険負担の話となります。そう、つまり冒頭の事例がまさににこのケースなのです。
 回りくどくね?
 はい。スイマセン(笑)。しかし、わざわざ遠回りして別のケースをご説明してきたのには、理由がございます。私の経験上、危険負担については、かなりじっくりやらないと頭が混乱してしまうと考えます。ですので、回りくどいかもしれませんが、危険負担の話に入る前の前提として、確認しておくべきことを記した次第なのです。
 という訳で次回、本格的にご説明して参ります。引っ張るような形になってしまいましたが、まずは危険負担を理解するための前提として、今回の内容を頭に入れておいて下さい。
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根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
根本総合行政書士です。
宜しくお願いします。

保有資格:
行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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