債権・債務・債務不履行とは?

 以前にも申しましたが、この世の中は契約社会です。コンビニで物を買うのは売買契約だし、部屋を借りて住むのは賃貸借契約です。そして契約が成立すると、権利義務が生じます。

事例
AはBの持っているギターが欲しくなり、Bに「そのギターを3万円で売ってくれないか?」と言った。するとBは承諾し、次の土曜日にAはお金を支払いBはギターを引き渡すことになった。


 この事例で、AとBは売買契約を結んでいます。売買契約は「買います」「売ります」で成立する諾成契約なので、Aの申し込み(ギター売ってくれ)にBが承諾した時、契約が成立しています。すると、AとBは、互いに権利義務が生じます。
Aの権利義務
 AはBに対し代金支払い義務が生じます。同時に、Bへギターの引渡しを請求する権利も生じます。
Bの権利義務
 BはAに対しギターの引渡し義務が生じます。同時に、代金を請求する権利も生じます。

 このように、互いに法的な権利義務が生じます。そして、AがBにギターの引渡しを請求する権利、BがAに代金を請求する権利、これを債権といいます。一方、AがBに代金を支払う義務、BがAにギターを引き渡さなければならない義務、これを債務といいます。つまり、AとBは売買契約が成立したことによって、債権債務関係になるのです。ちなみに、債務を負った者を債務者、債権を有した者を債権者と呼びます。したがって、売買代金に関してはAが債務者でBが債権者、ギターに関してはAが債権者でBが債務者となります。また、このように、互いに債務を負う契約を双務契約といいます(契約の片側だけが債務を負う契約は片務契約になります)。
 以前、物権は物に対する権利、債権は人に対する権利、とご説明いたしました。今回の事例に即して言うと、AはBという人に対して、BはAという人に対して、債権という権利を持っている、ということになります。

約束は守らなければならない

 AとBは互いにギターの売買契約によって生じる義務(約束)を果たさなければなりません。わかりやすく言うと、AとBは売買契約という約束を守らなければなりません。そしてこの「約束を守る」「義務を果たす」ことを、債務を履行するといいます。つまり、今回の事例で、AとBは互いに相手に対する債務を履行する義務を負っていて、AはBに対し代金を支払えば債務の履行を果たし、BはAに対しギターの引渡しをすれば債務の履行を果たした、ということになります。

債務を履行しなかったら?

 例えば、Aが無資力(金が「ない状態)になり、Bに代金を支払えなくなったらどうなるでしょう。すると、AはBに対する債務を履行できなくなります。このように、債務を履行できなくなることを債務不履行といいます。では、もしAが債務不履行になってしまった場合、Bは何ができるでしょう?

(債務不履行による損害賠償)
民法415条
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。

 Aがもし代金を支払えなくなったら(債務を履行できなくなったら)、Aは債務不履行となり、BはAに対して、Aの債務不履行による損害賠償の請求ができます。つまり、Aが債務不履行に陥ると、BのAに対する「金払え」という代金の支払い請求権は、損害賠償請求権に変化します。
 もしこのような事態に陥れば、AとBの関係は最悪になりますよね(笑)。ですので皆さん、契約という約束はしっかり守りましょう。
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損害賠償の請求・過失責任の原則

 契約の相手方が債務の履行の義務を果たさず債務不履行に陥ったとき、損害賠償の請求ができます。しかし!たとえ契約の相手方が債務不履行に陥ったからといって、必ず損害賠償請求ができるという訳ではありません。
 
(債務不履行による損害賠償)
民法415条
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。

「債務者に帰すべき事由」とは、債務の履行ができないこと、つまり、契約の約束を果たせないことの理由が債務者自身にあるということです。
 上記の条文を見ると、「債務者に帰すべき事由」という言葉は後段の文章にだけ係っているように読めますが、判例(裁判の判決)では、前半の部分にも「債務者の帰すべき事由」が当然必要だとしています。従いまして、債務不履行による損害賠償の請求は、債務者の帰すべき事由、つまり、債務者に過失(落ち度)があるときにできる、ということになります。
 以上の事を踏まえて、こちらの事例をご覧下さい。

事例
AはBの持っているギターが欲しくなり、Bに「そのギターを3万円で売ってくれないか?」と言った。するとBは承諾し、次の土曜日にAはお金を支払いBはギターを弦を張り直して引き渡すことになった。しかし約束の前日の金曜日、Bは空き巣被害に遭いギターを盗まれてしまった。尚、Bの戸締りに不備はなかった。


 この事例の場合、AはBに、Bの債務不履行による損害賠償請求ができるでしょうか?結論は、AはBに損害賠償請求できません。なぜなら、Bが債務不履行に陥ったことについて、Bの過失(落ち度)がないからです。Bは空き巣被害にあっただけの、ただの被害者です。従いまして、Bの無過失によりAの損害賠償請求権は成立しません。これが過失責任の原則です。
 債務不履行による損害賠償請求権が成立する流れをまとめると、このようになります。

契約の成立→契約義務の発生→債務者の過失→債務者の契約義務不履行(債務不履行)→損害の発生→損害賠償請求権の発生

債務不履行の3つの態様

一般的に、債務不履行には3つの態様があるとされています。

・履行遅滞
履行できるはずなのに約束の期日に後れること
事例で例えると、Bのミスで土曜日にギターを用意できなくなってしまった場合
・履行不能
契約成立後に契約義務の履行が不可能になること
事例で例えると、Bのミスでギターを折ってしまった場合
・不完全履行
契約義務(債務の履行)は果たしたが、目的物に欠陥があった
事例で例えると、Bが引き渡したギターは弦が張っていなかった

 これら3つの債務不履行は今後も出てきますので、覚えておいて頂ければと存じます。

補足

 今回の事例で、Bに空き巣被害がなければ、約束通り、AとBは次の土曜日に互いに債務を履行をしなければなりません。しかし、約束の土曜日になって、Aがお金を払おうとしないのに「ギターをよこせ」と言ってきたら、Bはどうすればいいでしょう?この場合、Bは「お前が金出すまではギターは渡さん!」と言えます。これを同時履行の抗弁権といいます。これは、互いに債務を負う双務契約において、非常に重要な権利ですので、是非覚えておいて下さい。
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債権の世界 債権債務の超基本

債権・債務とは

 債権とは、特定の者が特定の者に対して一定の行為を請求することを内容とする権利です。
 例えば、Bにギターを売ったAは、Bに対して「おまえに売ったギターの金払え!」と請求する権利を持っています。これが債権です。

A→B
 ↑
 債権

 この場合、AはBに対して「金払え」という債権を持っている債権者になります。
 一方、Aからギターを買ったBは、Aに対してギターの購入代金を支払う義務があります。この「Aに対してギターの購入代金を支払う義務」が債務です。

B→A
 ↑
 債務

 この場合、BはAに対して債務を負っている債務者ということです。
 まとめると、ギターの売主Aは、Bに対して「金払え」という債権を持っている債権者ギターの買主Bは、Aに対して「代金支払い義務」という債務を負っている債務者、となります。

売買契約は視点を変えると債権・債務が入れ替わる

 先ほど、ギターの売主Aは債権者、ギターの買主Bは債務者、とご説明いたしました。これは「お金」という視点に立ったものです。これが実は「売買物」、つまり「ギター」という視点に立った場合は、ABの債権債務関係は入れ替わります。
「お金を払って物を買う」「物を売ってお金をもらう」という行為は、売買契約になります(売買契約の超基本はこちらの記事へ)。そして、売買契約は、売主と買主の両者が互いに債権を持ち、互いに債務を負います。どういうことかといいますと、売買契約は「お金」の視点で見れば、売主が債権者となり、買主が債務者となります。これは今までご説明したとおりです。ところが、これが「売買した物」の視点から見ると、売主が債務者となり、買主が債権者となります。なぜなら、売主は買主に対して「売った物を買主に引き渡す義務」という債務を負います。そして、買主は売主に対して「買った物をよこせ」という債権を持ちます。皆さんもお金を払って物を買ったのに、売主が物を引き渡さなかったら「物よこせ!」となりますよね?(金返せ!というのもありますが、それについてはここでは割愛します)。
 従いまして、ギターの売主Aとギターの買主Bの債権債務関係は、次のようになります。

「お金」の視点で見た場合
債権者 債務者
売主A→買主B
   ↑
   債権

ギター(売買物)の視点で見た場合
債務者 債権者
売主A←買主B
   ↑
   債権

 以上のように、売買契約においては「お金」の視点で見るのか「物」の視点で見るのかにより、債権の矢印の方向が変わります。
 また、この売買契約のように、互いに債権を持ち互いに債務を負う契約を、双務契約といいます。

お金の貸し借りは〇〇契約?

 物の貸し借りは、消費貸借契約になります。そして、お金の貸し借りは金銭消費貸借契約と呼ばれます(消費貸借契約の超基本はこちらの記事へ)。
 お金の貸し借り、つまり金銭消費貸借契約は、売買契約のように「物」はなく「お金そのもの」、もっと言えば「金〇〇円という価値そのもの」が、契約の目的物になっています。ですので、売買契約とは違い、お金の視点から見た債権債務関係しかありません。従いまして、お金の貸し借りの場合は、貸し手は借り手に対して「金返せ!」という債権を持つ債権者、借り手は貸し手に対して「借りた金を返す義務」という債務を負う債権者、という図式のみになります。

貸し手 借り手
債権者→債務者
   ↑
   債権

 また、この金銭消費貸借契約のように、一方の者だけが債務を負う契約を、片務契約といいます。

補足
 ちなみに、債権の場合は、AはBに対して債権を「持つ」、あるいは、債権を「有している」という言い方をします。一方で債務の場合は、BはAに対して債務を持つ、というような言い方はしません。債務の場合は、BはAに対して債務を「負う・負っている」という言い方をします。

 というわけで、今回は債権・債務の超基本を、売買契約と金銭消費貸借契約、という2つの契約とともにご説明して参りました。今回ご説明した内容は「債権」という分野について考えるときの基本中の基本になります。債権の分野は非常に難しいです。ですので、まずはこの基本中の基本を、しっかりとおさえておいて頂ければと存じます。
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根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
根本総合行政書士です。
宜しくお願いします。

保有資格:
行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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