動産の所有権(物権)の基本

「不動産の所有権」という物権については、すでに当サイトでご説明申し上げました。今回は、動産の物権というものについて、ご説明申し上げたいと思います。
 ところで、民法は一番大きい枠で、下記のように分野が分かれています。

第一編 総則
第二編 物権
第三編 債権
第四編 親族
第五編 相続

 第一編の総則で全体のルールを定め、第二編~第五編で各分野の細かいルールを定めている、というようなイメージです。ちなみに、第四編と第五編は身分法と呼ばれるもので、家族法とも言われます。
 ところで、私は当サイトで、上記の民法の編の順番通りには解説していません。私が当サイトの民法の解説で序盤に持ち出した話は契約で、契約は第三編の債権に属します。前回、ご説明申し上げた登記は、第二編の物権に属します。なぜそのようにしているかと申しますと、民法の編どおりの順番で進めていくと、わかりづらくなる上に退屈な内容になるからです(笑)。ですので、私は試行錯誤しながら、できるだけわかりやすく取っつきやすいように、工夫して進めている所存です。
 それでは話を戻しまして、動産の物権について、ご説明して参ります。

物に対する排他的支配権、それが物権

 排他的支配権という言葉は、当サイトでもすでに登場しました。物について「これはワタシのモノだ!」と、堂々と法律の保護の下に所有し使用できる権利です。それが物権です。
 物権とは、物に対する権利です。一方、人に対する権利は債権です。債権についてはまた改めて取り上げますので(債権についてはこちらへ)、話を物権に戻します。物権には、一物一権主義という原則があります。一物一権主義とは、ひとつの物にはひとりの所有権しか成立しない、ということです。ですので、排他的支配権なのです。(共有という例外もありますがそれについてはまた改めてご説明いたします→共有についてはこちらへ

動産の物権

 不動産の所有権という物権は、登記をする事によって法律で保護されます。つまり、不動産の所有権という物権は、登記をすることで対抗要件を備えたことになります。では、動産の場合はどうなのでしょうか。
 例えば、Aさんがコンビニでボールペン(動産)を買ったとします。これは売買契約ですよね。では、ボールペン(動産)の所有権の権利関係は、一体どのようになるでしょう。
 コンビニ→Aさん
 このように、売買契約によって、ボールペンという動産の所有権がコンビニからAさんへと移転します。

動産の場合、不動産登記のような第三者に対する対抗要件は?

 動産の所有権自体は、当時者同士の意思表示のみでも移転します。つまり「売りました」「買いました」だけでもコンビニからAさんにボールペンの所有権は移転します(諾成契約)。しかし、それだけでは第三者に対抗できません。Aさんは法律の保護の下、堂々と「ワタシのボールペンだ!」と主張できません。
 動産の場合の第三者に対する対抗要件は、引渡しです。つまり、先ほどの例だと、Aさんが売買代金を支払ってボールペンの引渡しを受けたら(ボールペンを受け取ったら)そこで初めて第三者に対する対抗要件を備えたことになります。そして「このボールペンはAのモノだ!」と、堂々と主張できるのです。そうなれば、字を書こうが分解しようがガッチャンに食べさせようが、Aさんの自由です。なぜなら、対抗要件を備えた物権という排他的支配権を取得したからです。

補足
 動産は、引渡しにより対抗要件を備えたことになります。これが基本です。しかし、例外的な動産もあります。例えば、自動車や船舶(船)。自動車や船舶(船)には登録制度があり、不動産と似たような扱いになっています。
豆知識
 通常の乗車券、商品券、劇場入場券などは、無記名債権(記名のない債権)と呼ばれます。これらは本来、債権なのですが、民法はこれらの無記名債権を動産とみなします。つまり、通常の乗車券、商品券、劇場入場券は動産として扱い、動産のルールが適用されます。自分で取り上げておいてなんですが、これは覚える必要ございません(笑)。
 ちなみに民法上、動産とは不動産以外の物、と定義されています。
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その物の所有権は誰?占有の超基本

 動産の所有権(物権)は引渡しによって移転し、対抗要件を備えます。その根拠となる条文はこちらになります。

(動産に関する物権の譲渡の対抗要件)
民法178条
動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。

 動産の所有権(物権)自体は当事者の意思表示で移転しますが、引渡しがなければ、第三者に対する対抗要件を備えたことにはなりません。引渡しを経て法律上保護された、いわば完成された所有権になります。そして、この所有権を本権といいます。さらに、この本権以外にも物に対する権利が存在します。それは占有権です。
 まずはこちらの事例をご覧下さい。

事例
Aはギターを二本持っている。一本のギブソンのギターはメインとして使い、もう一本のYAMAHAのギターはサブとして使っている。ある日、Bから「明日ライブがあるのにギターが壊れてしまった。俺はこの一本しかギターを持っていない。頼む。Aのギターを一本貸してくれないか?」と頼まれ、Aは「それだったら仕方ないな」と思い二つ返事で、サブで使っているYAMAHAのギターをBに貸した。ところが、Bはライブを終えても一向にそのギターをAに返さない。なんとBは、Cにそのギターを売っぱらって引き渡してしまった。実は、Bはあるキャバ嬢にぞっこんで、その売買代金を全てキャバクラ代にあてたのだった。


 この事例でまず最初にわかるのが、Bがクズ野郎ということです(笑)。ですがそのことはさておいて...この事例で問題なのは、YAMAHAのギターの所有権がAにあるのかCにあるのか、です。
 さて、ここで民法にはこのような条文があります。

(即時取得)
民法192条
取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。

 上記の条文中に、占有という言葉が出てきましたが、そもそも占有とは一体何なのでしょうか?

占有とは
 自己のためにする意思で物を所持することです。自己のためにする意思とは、「自分の物だと思って」ということです。所持とは、物を事実上支配する状態のことです。

 以上のことを踏まえて、再び事例について考えていきます。
 CはBからYAMAHAのギターをお金を払って買って手に入れている訳ですから、普通に考えて、間違いなく自分の物だと思ってYAMAHAのギターを所持しているはずです。ということは、法律上、CはYAMAHAのギターを占有していることになります。これが占有権です。つまりこの時点で、Cは少なくとも、YAMAHAのギターの占有権を取得していることになります(いまひとつ占有権がよくわからないという方は、ざっくり占有権は本権(所有権)未満の権利と覚えて下さい)。
 
結局YAMAHAのギターの所有権は?

 ここまでの説明で、CはYAMAHAのギターの占有権を取得しているという事が分かりました。しかし、占有権を取得しているということは、逆に言うと、本権(所有権)は取得していないということになります。CはYAMAHAのギターの所有権を取得できないのでしょうか?
 結論。Cは三つの要件を満たすと、占有権が本権に昇格し、YAMAHAのギターの所有権を取得します。
 ということで次回、その要件とこの事例についての問題を、さらに詳しく解説して参ります。なんだか引っぱってしまいましてスイマセン(笑) 。
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サイト運営者

根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
根本総合行政書士です。
宜しくお願いします。

保有資格:
行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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