原則と例外と要件

 以前、動機の錯語についての記事でも少し触れましたが、今回は原則例外、加えて要件というものについてご説明申し上げて参りたいと思います。

要件とは

 まずは要件についてから、簡単にご説明いたします。
 これは簡単です。 以前の記事錯誤についてのご説明をいたしましたが、要素の錯誤は無効を主張できます。要素の錯誤とは、りんごだと思ってみかんを買ってしまったような場合です。そのような場合、要素の錯誤による無効を主張して、その売買契約(みかんを買ってしまったこと)をなかった事にできます。しかし、この要素の錯誤を主張するには、表意者に重過失、つまり本人に重大なミスがないことが必要です。この表意者に重過失がないこと、分かりやすく言うと「本人に重大なミスがないこと」が要件になります。この要件を満たして初めて錯誤の無効の主張ができます。
 要件、お分かりになりましたかね。よく犯罪の構成要件なんて言葉を耳にする事があると思いますが、あれも要するに、これらの要件を満たしたときに犯罪が成立する、ということです。犯罪を構成する要件、つまり犯罪が成立するための要件、という事です。

原則と例外とは

 続いては原則と例外についてです。これも理解しやすい内容だと思います。
 話を再び錯語について戻しますと、錯誤の無効の主張は、要素の錯誤の無効の主張しかできません。動機の錯誤の無効の主張は認められません。これが原則です。ただ、ここで原則について注意して頂きたい事がございます。原則というのは絶対という意味ではありません。意味としては、日常会話で使う言葉で例えると「基本的には」みたいなニュアンスです。例えば「基本的に怒らない人」がいたとします。でもこの人は「絶対怒らない人」ではないですよね。つまりこの人は民法的にいうと「原則怒らない人」です(笑)。そしてこの基本的に怒らない人「原則怒らない人」も怒るときがあります。それが「例外」です。
 原則と例外、お分かりになりましたかね。

原則から考え例外を考える。変な近道は控えるべし!

 法律を考えるときは必ず、原則から考えて例外を考えます。原則があって例外があるのです。その逆はありません。これは単純な話ではありますが、大事なことです。これから資格試験等に向けて民法の学習をされる方は、この「原則から考えて例外を考える」を忘れないで下さい。この事を忘れて、原則も分かっていないのに例外を考えて勉強しようとすると、訳が分からなくなり、簡単な問題も解けなくなってしまいます。

 私は、民法の学習に関しては変な近道をしようとしない方がいいと考えます。原則を考えてから例外を考える、という順序をしっかり守って頂くことは、結果的に勉強成果にも影響します。何事も基礎が大事です。それは民法を考える上でも、正しいリーガルマインドを身につける上でも重要な事です。ですので、時には遠回りに感じて面倒臭くなるときもあると思いますが、そんな時こそ、基礎を大事に地に足をつけてじっくり取り組んで頂きたいと思います。そして基礎をある程度マスターしたら、そこからはウマイことやっていけばいいんです。これは何も民法の学習だけでなく、仕事や他の色々な事についても当てはまることではないでしょうか。
 繰り返しますが、基礎はとても大事です。ですので、面倒臭がらず焦らずに臨むことです。かの伝説のプロレスラー、天龍源一郎はこう言っていました。一番大事なのは辛抱だと。。。
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「時」と「とき」・「無効」と「取消し」

 前回、原則と例外と要件についてご説明いたしました。今回はそれの延長のようなお話になりますが、当サイトでもすでに登場した「時」と「とき」、そして「無効」と「取消し」について、それらの法律ならではの言葉の使い方・使い分けとその意味について、簡単に解説して参ります。

「時」と「とき」

 法学部出身の方などにとってはとても基本的な事になると思いますが、そうでない方にとっては馴染みのない、法律の世界ならではの言葉の使い分けというものがございます。そのひとつが「時」と「とき」です。
 実はこの「時」と「とき」は、法律の世界では使い分けされています。どのように使い分けているかといいますと、まず「時」ですが、これは「時点」という意味です。バッターが構えた「時」、ピッチャーがボールを投げた「時」というような感じです。それに対して「とき」「場合」あるいは「シチュエーション」というような意味です。ツーアウト満塁の「とき」、ツーストライクスリーボールの「とき」というような感じです。野球がわからない方もいらっしゃると思いますので、恋愛に例えてみましょう。手を繋いだ「時」、映画館デートに行った「とき」というような感じです(笑)。
 おわかりになりましたでしょうか。この「時」と「とき」の使い分けを知った上で法律の文章を読むと、法解釈が今までと少し違ってくるかもしれません。ちなみに、冒頭に申し上げたとおり、この「時」と「とき」は、すでに当サイトで何度も登場しましたが、実は使い分けております。今一度ここで、過去の記事を読み返して頂ければ、おわかりになって頂けるかと思います(笑)。

「無効」と「取消し」

 無効という言葉も、すでに当サイトで何度も登場しました。無効という言葉自体の問題も特にないと思います。では、無効と取消しの違いは、おわかりになりますでしょうか。法律の世界では、無効と取消しは、区別されて使われています。それではひとつひとつ、ご説明して参ります。

 まず無効ですが、民法上の無効とは「始めから成立すらしていない」という意味です。ですので、その契約は無効だといったら、そもそもその契約は、始めから何の形も成していない、という事です。繰り返しますが、無効のものは、そもそも成立すらしていませんので、始めから何の形も成していないんです。ですので、無効の契約というのは、始めから成り立っていない契約なのです。無効のものは、始めから終わりまでゼロです。まずここをおさえておいて下さい。

 一方、取消し「一度有効になったものをナシにする」という意味です。この「一度有効になった」というところがポイントです。無効の場合は、始めからそもそも成立すらしていないのですが、取消しの場合は、一度有効になったものが、何らかの理由により取り消されてゼロになるだけです。取り消されて初めてナシになるということは、取り消されない限りは有効に成立します。

無効についてさらに詳しく

 ここまでの説明だけでも、おわかりになるかもしれませんが、念のため、もう少し噛み砕いてご説明いたします。
 無効な契約は、最初から成り立っていません。成り立っているように見えるだけで、実態のない契約です(となると錯誤の無効の主張というのは少しおかしな話で、そもそも無効なモノなら主張しようがしまいが無効なはず。本来の無効の意味としては。この辺りの細かい話は様々な学説がありますが、それについてはこちらでは割愛します)。つまり、無効の契約というのは「契約というカゴの中に何も入っていない契約」という事になります。カラッぽの契約という事です。具体例を挙げると、強迫で結ばされた契約が、まさにこれです。強迫によって強引に結ばされた契約は無効な契約です。そんな契約はそもそも法的に成立しません。もし、そうした形で結んだ契約でモメているのなら、そもそもその契約は成立すらしていませんのでご注意下さい。 
 繰り返しますが、無効の契約は「契約というカゴの中に何も入っていない」というイメージで捉えておいて下さい。

取消しについてさらに詳しく

 取り消せる契約というのは、取り消されるまでは有効に成立しています。取り消さなければ、普通に契約として存続します。つまり、「契約というカゴの中に一応モノが入っている契約」になります。具体例を挙げると、詐欺による契約がこれになります。詐欺で結ばされた契約は、実は取り消すまでは有効な契約なんです。なぜ世の中から詐欺がなくならないのか、これでわかりますよね。実は民法上でそのようになっているのです。
 あと、細かい話ですが、取消しと書いた場合は名詞で、取り消しと書いた場合は動詞になります。念のため申し上げておきます。
 
 無効と取消しの違い、おわかりになりましたでしょうか。無効と取消しという言葉は、今後も沢山出てくると思いますので、今回の話を頭に入れておいて頂ければと存じます。
 他にも、法律ならではの言葉の使い分けは色々ございますが、今回はここで締めます。今後もこのような法律用語解説は、必要となり次第行っていきます。
 尚、「強迫」について詳しくはこちらの記事を、「詐欺」について詳しくはこちらの記事をご覧下さい。
 という訳で、今回も最後までお読み頂き有難うございます。また次回も宜しくお願い致します。
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強行法規と任意法規

 以前の記事で、無効と取消しについて解説いたしました。今回はそれに付け加える形で、強行法規任意法規というものについて、ご説明して参りたいと思います。
 さて、いきなり強行法規と任意法規と言われても、何が何だかって感じですよね。実際、一般的に馴染みもない言葉だと思います。しかし、法律について考えるとき、この強行法規と任意法規というものは非常に重要なのです。なぜ重要かと申しますと、実際にその法律が我々にどういう効果をもたらすか、という問題に直結するからです。
 え?それヤバくね?
 はい。ヤバいです。ですので今からご説明いたします。

強行法規とは

 強行法規とは、問答無用に適用される法規です。
 は?ですよね(笑)。はい。今からもっと噛み砕いてご説明いたします。
 以前、詐欺強迫についてご説明いたしました。その時に、「詐欺取り消されるまでは有効で、強迫無効、つまりそもそも成立すらしていない」というお話をいたしました。この強迫に関する無効の規定こそ、強行法規と呼ばれるものです。強迫による契約は無効、つまりそもそも成立すらしないですよね。そもそも成立すらしない、というのは問答無用で無効、という事ですよね。それが強行法規というものです。

任意法規とは

 先ほど、詐欺と強迫のお話をいたしました。そして、強迫による契約無効の規定は強行法規だ、と申し上げました。
 あれ?じゃあ詐欺の契約は?
 はい。実は、この詐欺の契約のように、取り消されるまで有効な契約は、任意法規に属するものになります(詐欺も、あまりに悪質なものであったりなど、場合によっては公序良俗違反で無効になることもありますのであしからず。公序良俗についてはまた改めてご説明いたします)。

契約自由の原則

 ここで一度、民法の基本原則に立ち返ります。民法には、契約自由の原則という基本原則があります。この契約自由の原則という言葉からわかるように、基本的に契約というものは自由に決められます。それを民法は基本原則としているのです。つまり、民法先生は、基本的には我々に対し「自由にやったらええがな」という立場を取ります。従いまして、我々は契約の内容を自由に決められ自由に契約を結べるのです。それにより円滑な取引が実現し、ひいては経済の発展にも繋がるのです。
 ただし!何でもかんでも自由に決められる訳ではありません。なぜなら、本当に何でもかんでも自由に決められてしまうと、不備が生じてしまうからです。例えば、赤ん坊がバブバブ言って契約が成立しちゃったらオカシイですよね?コワ~イおにいさんが出てきて「テメー、ハンコ押さなかったらどうなるかわかってるよな?」なんて契約アリですか?メルカリで臓器の売買できますか?全部ナシですよね。ですので、強行法規という形で契約の自由に一定の制約を与えています。

強行法規と任意法規では効力が違う

 まとめると、強行法規は問答無用で適用され、任意法規は自由に内容を決められ自由に決められた内容によって適用されるものです。
 強迫による規定は強行法規なので、強迫による契約は問答無用で無効になります。
 詐欺による規定は強行法規ではないので、詐欺による契約は取り消すまでは有効になります。取り消すまでは有効という事は、自由に契約の内容を決めて、問題がなければ互いの合意で成立します。それが任意法規です。詐欺などの問題があれば、後に取消しの話になるという事です。

 強行法規と任意法規、おわかりになりましたでしょうか。おそらく、まだ今ひとつわからないのではないかと思います。これから民法の話を進めていく中で、次第に掴めていくと思いますので、徐々にご理解お深め頂ければと存じます。
 そして、最後にひとつだけ申し上げておきたいことがごさいます。今現在、もし契約関係のトラブルを抱えている方は、その契約の内容が強行法規に触れる内容なのかどうか、そこは注意して下さい。もし強行法規に触れるものであれば、そもそも成立すらしていない可能性もあります。逆に強行法規に触れていないのであれば、任意法規という事で、取り消すまでは有効に成立するもので、取り消すにしても何かしらの要件を満たすなど、立証が必要だったりします。
 という訳で、今回も最後までお読み頂き有難うございます。
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サイト運営者

根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
根本総合行政書士です。
宜しくお願いします。

保有資格:
行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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