意思表示の超基本 意思表示の形成過程

 今回は意思表示です。ちなみに「意志」ではなく「意思」です。ご注意下さい。

意思表示とは何なのか

 以前の記事でも、諾成契約についてのご説明をいたしましたが、諾成契約は、例えば、売買契約の場合「買います」という申し込みに対し「売ります」という承諾をした時、契約が成立します。このときの「申し込み」「承諾」、つまり「買います」と「売ります」が、意思表示です。つまり、諾成契約を民法的に説明すると、「当事者同士の意思表示により成立する契約」ということになります。
 意思表示が何なのかは、お分かりになりましたよね。ではここから、意思表示の形成過程を見て参ります。

動機

効果意思

表示意思

表示行為

 なんだか、まるで心理学みたいですが(笑)、順番にご説明して参ります。
 まず動機ですが、これは売買であれば「買う理由」です。美味しそうだな〜とか、安いからとか、カワイイからとか、動機という言葉の通りです。
 次の効果意思は「よし、買おう」です。つまり「頭・心の中の決断」です。
 その次の表示意思は「買おうと言おう」です。つまり「決断を表に示す意思」です。
 最後の表示行為は「これ買います!」です。これは説明不要ですね。「購入の申し込みの表明」です。
 以上が、意思表示の形成過程になります。

なぜこんな話が民法に必要なのか?

 それこそ本当に、心理学の講義みたいですもんね。しかし、これが実はとても重要なのです。なぜなら、意思表示があって初めて契約というものが成立するからです。
 契約関係のトラブルは、いつの時代も絶えません。トラブルがあったときは、その契約内容と成立過程を検証しますよね。その「成立過程」こそ、まさに先述の「意思表示の形成過程」が含まれます。
 買いたいと思っていない物なんて買わないですよね?ではなぜ買ったのか?無理矢理買わされたのか?騙されたのか?あるいは勘違いか?買ってもいない物が突然送られてきて、いきなりお金を請求されても困りますよね?売る側からすれば、なんの理由もなしにいきなり返品されて「金返せ!」と言われても困りますよね?そうなると、「意思表示の形成過程」のどこかに不備があるのではないか?と、民法的な検証ができる訳です。
 尚、付け加えて申し上げておきますと、意思表示は「黙示のもの」でも、有効に扱われる場合があります。黙示の意思表示とは、実際言葉には出していないけれど「それって買うってことだよね・売るってことだよね」ということです。つまり、黙っていても意思表示が明らかだと認められればその契約は成立してしまう、という事です。ですので皆さん、断るときはハッキリと口に出して断りましょう。

 意思表示とその形成過程の意味、ご理解頂けましたでしょうか。
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錯誤の超基本

動機

効果意思

表示意思

表示行為

 上記が意思表示の形成過程です(これについて詳しくはこちらをご覧下さい)。
 さて、ではこの意思表示の形成過程に不備があった場合は、一体どうなるのでしょう?
 皆さんも普段の買い物の中で、間違えて、本来買おうしていた物とは違う物を買ってしまった事、ありますよね。 それは民法的に言うと「効果意思と表示行為に食い違いがある」ということになります。 効果意思というのは「よし、これ買おう」という心の中の決断で、表示行為というのは「これ買います」という購入の申し込みです。 つまり、本来買おうとしていた物とは違う物を買ってしまったというのは、心の中の決断行為一致していないのです。Aさんに告白しようと思って、Bさんに「付き合って下さい」と言うようなもんです(笑)。このような効果意思と表示行為の不一致、ざっくり言えば勘違いを錯誤と言います。

錯誤は2種類存在する

 錯誤には、要素の錯誤と動機の錯誤の2種類が存在します。

要素の錯誤とは

 これは「ギターを買おうと思ってベースを買ってしまった」というような場合です。つまり意思行為食い違いがある錯誤です。

動機の錯誤とは

 これは文字通り、意思表示の形成過程における動機の部分の話で、買おうと思った理由による錯誤です。といってもこれではよく分からないですよね。以下に具体例を挙げてご説明いたします。

(動機の錯誤の例)
 不動産を購入しようと考えている人がいました。そして、その人はある土地に目を付けました。というのは、どうやら「その土地の近くに新しく駅ができる」という噂を嗅ぎつけたからです。そして、その人はその噂を信じ土地を購入しました。将来の土地の価値の増大を期待できるからです。しかし、その後、その噂はガセだったようで駅はできませんでした。当然その土地の価値もたいして変わりません。この人の土地を購入した動機は、近くに駅ができるから土地の値段が上がる!というものです。でも実際には駅などはできず、土地の値段も上がりませんでした...。

 これが動機の錯誤です。つまり、買おうと思った理由が間違っていた場合です。要素の錯誤は、思った事と行為が食い違っているのに対し、動機の錯誤は、思った事と行為は噛み合っていても、思った事、その理由が間違っていた場合です。両者の違い、おわかりになりましたかね?
 その違いが一体なんになるんだ!
 はい。実はこの違いがとても重要なのです。というのは、後々に錯誤を理由に契約の無効を主張できるか否かという問題に直結するからです。買った側からすると、間違って買ってしまったのにもうどうにもできない、なんていう事態は困りますよね。一方、売った側からすれば、なんでもかんでも後になって無効を主張されても困ります。
 という訳で次回、錯誤による無効の可否について、解説して参りたいと思います。
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要素の錯誤による無効

錯誤による無効とは

 錯誤を理由に、契約の無効を主張することができます。例えば、ギターだと思ってベースを買ってしまった場合、その契約(ギターを買ったこと)の無効を主張できます。つまり、その契約を無かったことにできるのです。そして、買ったベースは店に返し、払ったお金は返してもらいます。

(錯誤)
民法95条
意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。

 上記の条文に「法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする」とあります。この「法律行為の要素に錯誤」というのが、以前の記事でもご説明申し上げた、要素の錯誤になります。つまり、条文から導き出される結論は「要素の錯誤であれば無効を主張できる」という事になります。

表意者の重大な過失とは

 ここで注意点がございます。民法95条の条文の「〜無効とする」の後にただし書きがあり「表意者に重大な過失があったときは〜無効を主張することができない」とあります。ちなみに、表意者というのは錯誤をした本人です。つまり、これはどういうことかと申しますと、要素の錯誤無効を主張できる。しかし、錯誤をした本人重大な過失(大きなミス)があった場合は無効を主張することができない、という意味です。例えば、ギターだと思ってベースを買ってしまった場合、楽器初心者だったなら無効を主張しやすくなるでしょう。なぜなら、初心者ならどっちがギターかベースか、すぐに区別のつかない人もいるはずです。つまり、本人(表意者)の重大な過失と認められづらくなるからです。ところが、これがギター歴40年のオヤジだったらどうですか。普通、それだけギターやってるオヤジなら、ギターとベースの区別ぐらいすぐにつくに決まっているでしょう。たとえ悪徳楽器店だったとしても騙されないでしょう。つまり、もしギター歴40年のオヤジがギターとベースを間違えて購入してしまった場合は、表意者(ギター歴40年のオヤジ)に重大な過失があると判断されやすくなり、錯誤の無効の主張が難しくなります。
 じゃあギター歴5年の兄ちゃんはどうなの?
 これも多分ダメですね(笑)。ただ、法律で明確に規定している訳ではないので、あくまで常識的な、客観的な判断になります。裁判になれば「社会通念上なんちゃらかんちゃら」とか言われるのでしょうか。ただもし、例えば、ギターと本当に見分けのつかないようなベースがあって、店員の説明が不十分であれば、その場合は重大な過失について、また違った判断になるかもしれません(まあ、そもそも試奏したのかとか、他にも考慮しなければならない要素は色々とありますが...)。
 そして、要素の錯誤の無効を主張するのは原則本人でなければなりません。

 とにかく、ここでまず、押さえておいて頂きたいことをまとめますと、
「要素の錯誤は無効を主張できる。そのとき、無効を主張するのはあくまで本人で、もし本人に大きなミスがあった場合は泣き寝入り」
ということです。
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サイト運営者

根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
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宜しくお願いします。

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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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