担保物権 抵当権の超基本

事例
AはBから「店を始めるのでお金を貸してくれ。絶対にこの商売を成功させて返すから!」と頼まれた。そこで、AはBにその事業資金として200万円を貸した。それからしばらく、Bの店の経営は順調だったが、ある時からBの店の売り上げはどんどん下がっていき、次第に店の経営状況は悪化し、それと共にBの財産状況も悪化した。金に困ったBはサラ金に手を出し、サラ金業者Cから100万円を借金した。それでも足りないBはさらにクレジット会社Dからも100万円を借金した。そして結局、その後、Bは破産した。尚、Bに残っている財産は200万円の不動産だけである。


 さて、この事例で、破産してしまった債務者Bから、債権者A・C・Dの3者が回収できる金額は次のとおりです。

各債権者へのは配当割合→200万÷400万=50%
したがって
Aが返済を受ける額→200万×50%=100万円
Cが返済を受ける額→100万×50%=50万円
Dが返済を受ける額→200万×50%=50万円

 債権者平等原則により、各債権者は平等に扱われ、上記のような結果になります(これについて詳しくはこちらの記事へ)。

 さて、ここからは冒頭の事例について、Aの立場に立って、債権というものについて考えていきたいと思います。
 ところで、Aは結局、Bに貸した200万円のうち、返済を受けられたのは半額の100万円でした。これって、ハッキリ言って、Aとしては貸し損ですよね。しかし、これが債権者平等原則による結果です。それでは、Aは債権者として、何か取るべき手段はなかったのでしょうか?
 それが、あるのです。そしてその手段というのが、今回のテーマである担保物権です。

担保物権

 担保物権にはいくつかの種類がありますが、その中でもっとも現実に利用されていて、代表的な存在が抵当権です。
 ということで、まずは抵当権についての民法の条文を見てみましょう。

(抵当権の内容)
民法369条
抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。

 条文中に、抵当権についての非常に重要なポイントが二つあります。それは「占有を移転しないで」と「他の債権者に先立って」です。それではここから、まずはそもそも抵当権とは何なのか?というところから始めて、先述の二つのポイントから、抵当権のその性質・特徴についてご説明して参ります。

そもそも抵当権ってなに?

 日常でもよくある、一般的にもっとも馴染みのある抵当権のケースは、住宅ローンです。ですので、住宅ローンの例でご説明いたします。
 例えば、Aさんが住宅ローンを組んでマイホームを購入したとしましょう。このとき、Aさんに融資をした(お金を貸した)銀行が債権者Aさんは債務者です。そして債権者である銀行は、万が一、Aさんが住宅ローンを返済できなくなったときのために、そのマイホームを住宅ローンの担保として確保します。住宅ローンの担保として確保するとは、わかりやすく言えば「住宅ローンの保証にする」ということです。住宅ローンの保証にするとはつまり、「もし住宅ローンが返済できなくなったらこの不動産(マイホーム)を売っぱらってそのお金をローンの返済にあてます」ということです。そして、もし債務者のAさんが住宅ローンの返済ができなくなった場合、債権者の銀行は、担保にした不動産(マイホーム)を強制的に売っぱらって(競売)、その売却代金からお金を回収できます。これが抵当権です。そしてこの場合、債権者である銀行が抵当権者となり、債務者であるAさんは抵当権設定者となります。また、このとき担保にしたマイホームを、債務(住宅ローン)の担保に供した不動産、といいます。

抵当権の二つのポイント
「占有を移転しないで」と「他の債権者に先立って」の意味


 そもそも抵当権とは一体何なのかは、おわかり頂けたと思います。ここからは、先述の民法369条の条文中にある「占有を移転しないで」「他の債権者に先立って」という二つのポイントから、抵当権の性質・特徴をご説明して参ります。
 まず「占有を移転しないで」ですが、これは、債務の担保に供した不動産を抵当権者(債権者)が占有する必要がない、という意味です。先の住宅ローンの例ですと、Aさんが購入したマイホームはあくまでA自身で占有して、銀行はその不動産(マイホーム)を占有しなくていいということです。これは抵当権の大きな利点です。債権者はわざわざ担保にした不動産を占有する必要がないし、債務者は担保にした不動産を使用し続けることができるので、債権者と債務者双方にとって有難いのです。
 次に「他の債権者に先立って」ですが、こ・れ・が!債権者にとってはかなりアツイ抵当権の特徴になります。どういうことかと申しますと、抵当権をつけておけば、万が一、債務者が破産してしまっても、抵当権を設定した不動産については、優先的にお金を回収することができます。
 え?どういう意味?
 はい。ということで、ここで再び冒頭の事例に戻ります。

  A(200万返せ)
 ↙︎
B(残財産200万円)←サラ金業者C(100万返せ)
 ↖︎
  クレジット会社D(100万返せ)

 このような状況で、各債権者が回収できる金額は、債権者平等原則により次のようになります。

Aが返済を受ける額→200万×50%=100万円
Cが返済を受ける額→100万×50%=50万円
Dが返済を受ける額→200万×50%=50万円

 そしてここさらが肝です。もしAが200万円の貸金について、Bの不動産に抵当権を付けていたとしましょう。すると、なんと結果は次のようになります。

Aが返済を受ける額→200万円
Cが返済を受ける額→0円
Dが返済を受ける額→0円

 これが「他の債権者に先立って」の意味です!これは債権者としてデカイですよね。つまり、抵当権は、債権者平等原則をすっ飛ばせる強力な効果があるのです。

なんで抵当権はそんなに強いの?

 ここまで、そもそも抵当権とは何なのか、そしてその性質と特徴をご説明して参りました。
 ところで、抵当権はなぜそんなに強いのでしょうか?
 ということで、次回、その点についてご説明するとともに、抵当権というものについて、さらにもう一歩踏み込んで考えていきたいと思います。

破産の超基本 債権者平等原則

 今回は、破産について考えて参りたいと思います。

事例1
AはBに200万円を貸し付けた。その後、返済期限が過ぎてもBが一向にその借金を返済しないので、Aは訴訟を提起し、勝訴した。そしてAは強制執行の手続きを取った。


 これは、Bに200万円を貸し付けた債権者であるAが、Aから200万円を借金した債務者であるBが返済期限を過ぎても金を返さないので、裁判を起こして勝訴して強制執行まで至った、という話です(強制執行・差押えについてはこちらの記事、強制執行の前段階までについてはこちらの記事へ)。
 さて、ここでひとつ、こんな問題があります。強制執行で、借金を回収できれば何も問題はありません。しかし、そもそも債務者Bに、差し押える財産がなかった場合は一体どうなるのでしょうか?
 強制執行とは、債務者の財産を差し押えて、その財産を売却して(強制競売)、その売却代金から債権を回収する事です。しかし、これは債務者に財産があることが前提ですよね。つまり、債権者Aが強制執行でお金を回収するには、債務者Bの財産の存在が前提になるということです。債務者Bの財産の中で、債権者Aが差し押さえることができる財産を、Bの責任財産とか一般財産とか言ったりします。そして、借金を踏み倒したBからお金を回収するために、Aができる方法といえば、Bの責任財産・一般財産を差し押えて売却する強制執行以外にはありません。したがって、Bの責任財産・一般財産がすっからかんなら、Aはお手上げなのです。そして、債権者Aがそのお手上げ状態になってしまう典型的なケースが、債務者破産です。

債務者破産の典型的なケース

事例2
AはBから「店を始めるのでお金を貸してくれ。絶対にこの商売を成功させて返すから!」と頼まれた。そこで、AはBにその事業資金として200万円を貸した。それからしばらく、Bの店の経営は順調だったが、ある時からBの店の売り上げはどんどん下がっていき、次第に店の経営状況は悪化し、それと共にBの財産状況も悪化した。金に困ったBはサラ金に手を出し、サラ金業者Cから100万円を借金した。それでも足りないBはさらにクレジット会社Dからも100万円を借金した。そして結局、その後、Bは破産した。尚、Bに残っている財産は200万円の不動産だけである。


 この事例2では、Bに対して「金返せ」という債権者はA・C・Dの3者います。そして各債権者の貸金の金額は、A200万円、サラ金業者C100万円、クレジット会社D100万円です。しかし、Aは破産してしまい、残された一般財産は200万円の不動産だけです。

  A(200万返せ)
 ↙︎
B(残財産200万円)←サラ金業者C(100万返せ)
 ↖︎
  クレジット会社D(100万返せ)

 さて、この時点で、残された財産が200万円の不動産のみのBは、背負った借金→200万+100万+100万=400万円全額の返済は不可能なのがわかります。では、Bに残された200万円の財産の行方は、一体どうなるのでしょうか? Aが回収するのか?それともB?C?
 結論。債務者Bに残された一般財産200万円は、債権者A・C・Dの3者平等に配当されます。
 1番最初にお金を貸したのはAなのに?
 そうです。誰が1番最初にお金を貸したか、つまり、誰が1番最初に債権を有したかは関係ありません。そして返済期限の前後も関係ありません。あくまで債権者は平等に扱われます。これを債権者平等原則といいます。
 従いまして、債務者Bの財産200万円に対して、借金の総額は400万円ですので、債権者A・C・Dの3者は、200÷400=50%の配当をそれぞれ受けることになります。すると、各債権者が返済を受ける額は次のようになります。

Aが返済を受ける額→200万×50%=100万円
Cが返済を受ける額→100万×50%=50万円
Dが返済を受ける額→200万×50%=50万円

 このような形で、Bの破産手続は終了になります。したがって、債権者A・C・Dは、3者とも平等な割合で借金を回収して、3者とも平等な割合で損をするということです。
 ということなので、 債権者平等原則とは、債権者みんなで平等に泣き合う原則、と言ってもいいかもしれません。

破産の裏で泣く債権者

 実は、現実の債務者破産のケースでは、債権者は、1割の配当がもらえればマシ、ぐらいなものです。
 え?そんなもんなの?
 はい。そんなものです。ですので、事例2のA・C・Dは、債務者破産のケースの債権者としては、ありえないぐらいマシです。よく借金問題とか破産事件だとかの話を聞くと、とかく債務者の方ばかりに目が向きがちだと思いますが、しかしその実、その裏には、スズメの涙ほどの配当で泣いている債権者達がいるということです。ですので、クレジットカード会社などが、なぜ、わざわざ申込者を審査するのか、その理由がよくわかるかと思います。

差押え・強制執行の超基本

 今回は、期限が過ぎても債務の履行をしない債務者に対し、債権者が訴訟を起こしてからの債権の世界、その超基本について、ご説明して参ります。

事例
AはBに300万円を貸し付けた。その後、返済期限が過ぎてもBが一向にその借金を返済しないので、Aは訴訟を提起した。


 これは、債務者のBが返済期限を過ぎてもその借金を返さないので、債権者のAが裁判を起こした、という話です。
 さて、この金の貸し借り(金銭消費貸借契約)のケースで、Aが裁判で立証しなければならないことがあります。それは次の二点です。
1・返還の約束
2・金銭の授受
 つまりAは、Bの「返済期限までに300万円を返済する義務」と、Bに対して「実際にお金を貸したこと」を、証明しなければ裁判に勝てません。また、他にも弁済期の到来(返済期限の到来)も主張すべきとされています。
 これらの証明は、借用書があれば、その強力な証拠になります(だから貸金・借金の借用書は大事ナノダ!)。
 そして、債権者Aの立証・主張が認められれば
「BはAに対し金300万円を支払え」
というような判決文を裁判所が書き、無事、Aの勝訴となります。

強制執行

 ところで、そもそもなぜ、債権者Aは裁判を起こす必要があるのでしょうか。裁判は、時間も手間もお金もかかります。そして裁判に勝って、裁判所に「BはAに対し金300万円を支払え」というような判決文を書いてもらって、それでどうなるのでしょうか?Bがその判決文を見て自主的に300万円を返してくれる?だったら、Bが往生際の悪いヤツで、それでも300万円を返そうとしなかったら?
 そうなんです。たとえ判決が出ても、必ずしも、Bが300万円を返すとは限りません。もしBが金を返さないままなら、判決文はただの紙切れとなってしまいます。となると、Aはただの紙切れのために時間と手間とお金を使った!ということになってしまいます。
そこで!「BはAに対し金300万円を支払え」という判決文を手に入れたAは、強制執行の手続きを取ることになります。強制執行とは、簡単に言えば、国家権力を使って強制的に目的を果たすことです。それが判決文を手に入れることにより可能になります。RPGゲーム的に言えば、裁判というイベントをクリアすると「判決文」というアイテムが手に入り、判決文があれば「強制執行」という魔法が使えるようになります。つまり、債権者Aは、判決文をもらって強制執行の手続きをして、国家権力を使って、強制的にBから債権を回収(借金を回収)することができます。

差押え

 強制執行には、不動産執行、動産執行、債権執行があります。そしていずれの強制執行も、債務者の財産を差し押えて行います。差押えとは、債務者の目的財産の処分行為を禁止することです。
 従いまして、債権者Aは、まず債務者Bの財産を差し押えて勝手に財産を処分できないようにした上で、差し押えた財産を売却して(これを強制競売という)、その売却代金から借金を回収することを、国家権力を使って強制的に行うことができます。強制的とは「Bの意思に関係なく」ということです。つまり、いくらBが泣こうがわめこうが、国家権力を使って無理矢理Bの財産を差し押えて売却して借金を回収するというわけです。
 Bがかわいそう!
 確かにそうかもしれません。しかしこれは、そもそも借金を返さないBが自ら引き起こした結果です。さらに言えば、Bがかわいそうなら、300万円を返してもらえないAはどうなの?となりますよね。
 というわけで、皆さん。借りたお金はしっかり返しましょう(笑)。ただし、悪徳金融業者にはお気をつけ下さいね(これについてはまた別の機会に改めてお話いたします)。

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根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
根本総合行政書士です。
宜しくお願いします。

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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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